酔灯夜話 #49
司馬遼太郎の項羽と劉邦を読んだ。古代中国で初めて全土を統一した秦が始皇帝の死後混乱し、その中で有力な楚の項羽と漢の劉邦の覇権争いである。この両者の性格の違いをコントラストに描き、すべてにおいて勇猛かつ戦いに優れた力を発揮した項羽と臆病で戦下手な劉邦を配置し、結果後者が最終勝者となる。ではなぜ劉邦が最終勝者となったのか?キーワードは人望の差と、読めなくはないが、ではなぜ劉邦に人望があったのか?小説をよく読むと決して項羽が人的魅力に欠けた人物ではなく、むしろ歯向かう敵には苛烈であるが、見方や恭順の意を示した相手には寛大な人物ではないかと思う。ではこの両者の差は何か?私は兵站の考えの有無であると思った。項羽は戦上手であるがゆえに短期で敵を常に殲滅してきた故に兵站への気配りが乏しい、一方の劉邦は敗走することが多く兵站に気を配らねばならなかった。この時期の兵士は常に飢えており、戦いに就くなら飯を食わしてくれる大将になびく、その意味で項羽軍よりも劉邦軍の方が飯が食える。ということになり、常に劉邦は兵が集まり、この差が劉邦を勝者に押し上げたのではないかと思う。