DAC2010「うちの部長は冒険者!?」(モダンd20)プレイレポート
DAC2010にごく普通のD&Dの卓を立てたときのプレイレポート。
少しだけ他の卓と異なるのは、PCが現代社会の”サラリーマン”で、日経と携帯電話を片手に異世界を股にかけて戦うってところくらいかな。
デミプレーンからEldritch iPhoneを使って回復アプリをダウンロードして使うあたりはモダンっぽかった。
コンベンション閉会式での卓報告で「無事、パーティは落札して受注することができました!」とコメントして拍手をもらう機会は、後にも先にもこのセッションだけだろうと思う。
レギュレーション
[参加希望日]両日
[セッションタイトル] 「うちの部長は冒険者!?」(前後編)
[使用システム]その他(モダンd20)
[PL人数]3人~6人
[レベル帯]5~6
[ワールド]その他(現代日本)
[レギュレーション]モダンd20
[セッション経験]PL/DM経験アリ
[経験者向け]
[シナリオの概要]
ここは(株)相鈴技研の国際営業部。新興国での市場開拓のため、連日深夜までのミーティングが続いていた。次のコンペまで日もなく、プレゼンの準備に余念が無かったのだ。
栄養ドリンク片手に残業しているオフィスで、栗山部長の叫び声が響き渡った。
「この世界にまで手を伸ばしてきたか、ヘクストアよ」
「わが社の社運をかけたプロジェクト、つぶさせるわけにはいかん!」
いつもは冷静に的確な指示を飛ばす栗山部長。
普段の姿からは想像もできない様子に社員は驚きを隠せない。
「やつらが出てきた以上、見過ごすわけにはいかない」
「ハイローニアスの子らよ!気高き白き騎士たちよ!私に続け!」
“世界”を駆け巡る相鈴技研の戦いが始まった・・・
前編(1日目)では現代世界にD&Dエッセンスを、後編(2日目)ではD&D世界に現代のエッセンスを加えた冒険になります。
立ち上がれ、"サラリーマン”たちよ!
栗山部長に続き、正義をなして市場を守りぬけ!
舞台設定・背景:事前開示情報
【相鈴技研(そうりんぎけん)】
もともとは二輪車向けのエンジンメーカー。エネルギー効率の良いモーターの研究開発を担当する部署が自社内でも花形とされる。最近ではスマートグリッド技術によるインフラ整備の一括受注を推進している。自社の技術をコアにしつつ、発電・送電・蓄電の技術を効率よく制御するシステムの導入を請け負っている。海外での受注実績も豊富で、オールジャパンの体制で臨む政府の方針もあり、プロジェクトの入札時には政府高官も同席の上で先頭に立って交渉する機会も多い。
プロジェクト進行時には営業部門を中心として社内から人材を集め、研究開発部門や提携先企業・官庁との調整を行う。リーダーに思い切った権限を委譲するのが相鈴技研の特徴であり、若手が抜擢されるケースも多い。
【栗山部長(くりやまぶちょう)】
バイク好きがきっかけで入社してきたエンジニア出身。エンジン開発に長年携わってきたが、社内でスマートグリッドのテーマが出るや否や、真っ先に取締役全員に掛け合い、営業に異動を願い出てプロジェクトを立ち上げたという逸話を持つ。地球の環境保護の活動に熱心で、いち早くクリーンエネルギーの実現や高効率なエネルギー活用システムの実現に尽力してきた。
プロジェクト進行にかける熱意は並々ならぬものがある。仕事には厳しいが、決して人の陰口をたたいたり愚痴を言ったりしないため人望が厚い。部下との飲み会の付き合いは良いが、上司との会食や取引先との接待は苦手にしているらしい。45歳で独身。プライベートの話はうまくかわす話術があり、あまり知られていない。
【パプアニューギニアの首都ポートモレスビー周辺の都市再開発計画】
スマートグリッドによるエネルギー効率の最適化を実現し、温暖化を防ぐ新型都市としての街づくりを先導する企業を世界中から公募し、3年以上の準備期間を費やし、今年の6月にコンペが開催された。
本命は実績ある相鈴技研が所属する企業グループと予想されていたが、8月に決定するはずの受注企業の発表は先延ばしにされ、10月に入り「エネルギー使用効率化の技術的な部分の担当企業で再度コンペを開催する」という異例の決定がなされた。ロビー活動も長期に及び、技術的な決め手も6月のプレゼンで出し尽くしている。にも関わらず、ここにきて再プレゼンとはどういうことか・・・?
【スケジュール・ゲームの流れ】
10/01(金)シナリオスタート
10/22(金)12:00 資料提出@ポートモレスビー
10/27(水)12:00 プレゼン@ポートモレスビー
10/29(金)発注先決定
10/27のプレゼンで相手企業に勝利することがシナリオの目的です。プレゼンには<交渉>判定を用います。スタート段階のままプレゼンに挑んでも、相手先企業に状況ボーナスがついているため、勝利することはありません。期日までに情報を収集し、問題を解決し、正義をなすことで相手の状況ボーナスを削り、自社にボーナスを得て、プレゼンで相手に勝利して下さい。
【日本⇔パプアニューギニア】
成田発ポートモレスビー着
(土)21:00発 (日)4:30着
(水)21:00発 (木)4:30着
ポートモレスビー発成田着
(土)14:15発 (土)20:00着
(水)14:15発 (水)20:00着
航空券については会社が手配します。前日の12:00までに総務課への申請が必要です。会社が予約枠を確保しているので、申請さえすれば席を取れます。別PCに譲ることはできますが、換金は不可です。飛行機の出発時刻の1時間前には成田に到着して下さい。なお、パプアニューギニアの入札関連の会場は空港からタクシーで30分です。日本とポートモレスビーの間で時差はないものとします。
【情報収集に関するルール】
1回の情報収集に1d4+1時間かかり、さらに1時間掛ける毎に達成値に+2のボーナスを得ます。ただしダイスロールの前に掛ける時間を決めなくてはなりません。インターネットによる調査を行う場合、意思セーヴ難易度10を行い、失敗すると寄り道して1d3時間を無駄にします。
【移動に要する時間】
乗り換え案内などで検索して所要時間を洗い出してください。見慣れている人はセッション会場に時刻表を持参しても構いません。
なお、PCたちのオフィスは新宿駅から徒歩10分の位置にあります。
【情報のやり取り】
携帯電話・ノートパソコンが人数分会社から支給されています。業務で必要な連絡先は携帯のアドレス帳に入っています。PCの個人行動があったとしても、伏せない限りは情報は共有化できます。
また、他社担当者と1日に1時間テレビ会議システムを使うことができますが、先方の会議に出席するメンバーは選ぶことができません。(もちろん、希望を伝えることはできます)
シナリオ
【シナリオプロット】
プロット自体は非常にシンプルです。
「異世界から邪悪なエネルギーを得ようとしている敵の企みを阻止する」
全てのフレーバーを取り除いたプロットはまさにこれだけ。D&Dで解決する問題ですね。
モダンとか現代世界でやる場合には、情報収集のツールが多すぎるため、PLが思い込んで自分でミスリードされてしまう危険性があります。そのため、メインプロット自体はシンプルにしておきました。
相鈴技研の”サラリーマン”としては、競合先企業のフィジックス社とのコンペを勝ち抜き、ポートモレスビーのスマートグリッドシティプロジェクトを受注することが目的になります。
ヘクストアとその信者(Son of Tyranny)はフィジックス社(PCたちの競合企業)を支配下に置き、エンジン・オブ・インファーナルファイアーを使った発電施設の導入を企んでいました。地獄の炎を発電に使ったら、まさに驚異的な効率でエネルギーを得ることができるわけです。しかし、そんなもんを国中に作ったら、一国を破壊しうる爆弾を山と抱えることになります。モダンの人々は異世界のものを認知することができないので、どんなに解析しても「変換効率が極めてよい火力発電所」以外の結論を導けません。原子力ではない、新しいエネルギー源という触れ込みなわけです。
エンジン・オブ・インファーナルファイアーのエネルギーの出元はシティ・オブ・ブラスから引き込んでいる火力なんですが:DM記
6月に行われたコンペの後、自社の不利を悟ったフィジックス社は、この異常に効率の良い発電システムを売り込もうとする桜山を切り札として研究所所長に抜擢し、受注に向けた責任者にします。この桜山こそがヘクストアのアスペクトだったわけです。桜山はドリームガストというクリーチャーを部下に持っていました。こやつは人を魅了し、記憶を奪うという情報収集シナリオでは大活躍のクリーチャーなわけで、これを各所(自社内、他社、パプアニューギニア政府など)に送り込み、再コンペに持ち込むことになりました。
【流れ】
ドリームガストは相鈴技研のポートモレスビー支社の松井さんのところにも送り込まれています。初日に「何かがポートモレスビーで何か起こっている」というシグナルをPCたちへ出しました。
PCたちがそのシグナルをスルーするか、メールやビデオ会議で情報収集をしようとしていたら、松井支社長はそのままドリームガストの餌食となり、ポートモレスビー支社のネットワークから相鈴技研のネット環境がズタズタにされ、PCたちの電話やメールのやり取りも全て盗聴されて敵に筒抜けのままゲームが進行していくという楽しい状況になるはずでした:DM記
ここでPC6人が分かれて情報収集を行うという解決策に至りました。コンベンションの場でのパーティ分割は進行上のリスクはありましたが、PCたちがポートモレスビーにリアルで乗り込んでドリームガストを退治できたことで、ポートモレスビーにおけるリスクがかなり排除できていました。
日本ではフィジックス社の基礎研究所(愛知県刈谷)とプラント研究所(香川県丸亀)でヘクストアの支配が進んでいました。ネットで検索するだけでは基礎研究所までしかたどり着けないようにしていましたが、刈谷まで足を運んで現地で資料を漁ることで極秘のプラント研究所の住所を洗い出すことができました。こちらも、情報収集担当と荒事担当の連携がスムーズでサクサクと進めてました。
あとはポートモレスビー組の帰国を待ち、全員が揃ったところで香川県丸亀の研究所に突貫。途中、どのタイミングでうどんを食べるかで揉めたのはご愛嬌。この丸亀の研究所自体が別のプレーンと重なるように出来ているデミプレーンで、シティ・オブ・ブラスへのポータルも設置されていました。ここでレッドドラゴンとイフリートを倒し、ポータルをアプリケーション・オブ・ディスインテグレートで消滅させることでミッションコンプリート。中ボスを倒したことで相鈴技研としてはコンペ勝利にかなり近づきました。
ここから先は、PLさんが考えた独自シナリオが展開するという予想外の方向へ!
なんと相鈴技研の環境を配慮した街づくりを世に訴えるためのウォーキングイベントを開催し、各メディアを通じで世論を味方につけ、そして相鈴技研が全社を挙げてこのプロジェクトに取り組めるように協力を取り付けるという提案があったのです。
当然、DMとしてはそんなイベントは想定していたわけもなく、アドリブに載ることに即決です。
ここでは全社の協力を仰ぐイベントで、パプアニューギニアの人類学者の名言を出した上で、部長会議の席での<交渉>ロールで「20」を出し、全部門の団結を取り付けるという英雄的行為を達成!
実際のウォーキングイベントでは「何時間歩けば非致傷ダメージがいくら溜まる」と緻密な計算で歩行距離を算出し、最後のゴールのときに綺麗に倒れこむという演出を考えたPLさんたちの段取りにも頭が下がる:DM記
成田空港から飛行機に乗り込むと、その便に居合わせた桜山がアスペクトの姿となり、機内でPCたちに襲い掛かります。コンペで勝つ材料はPCたちに揃っているので、ヘクストア戦を生き残って入札会場にたどり着けばシナリオ勝利なわけです。ヘクストア無双の前にタフヒーローは-9まで行って倒れそうになりますが、ギリギリのところで勝利しました。
シナリオ終了後、倒れたタフヒーローに対して、
「ヘクストア戰で死んでおけば、コンペの<交渉>ロールに+1くらいの状況ボーナス貰えたのに!」
「俺が死んでもたった+1なんですか!?」
というやり取りがあったのも面白かった:DM記
あとは最後の締めのコンペでの<交渉>ロール。全員が援護をし、状況ボーナスを取り付け、アクションポイントを使った上で出目が「19」
もはや何の反論の余地も無いレベルでフィジックス社を叩きのめし、見事受注に至ったのでした。
このセッションのイメージソング
最後の会議で引用する人類学者のセリフがこのMVの最後に来る。
「”献身的な人々による小さなグループが世界を変えられる”このことを決して疑ってはいけません。事実それは、世界を変えてきた唯一のものなんです」マーガレット・ミード
小ネタ
エルドリッチiPhone
サプリメント「Urban Arcana」に収録されているEldritch Cell Phoneから。気象条件や距離に関わらず異なるプレーンに対して通話が可能な携帯電話。
丸亀研究所に作られたデミプレーンにいたとき、エルドリッチiPhoneを使ってマテリアルプレーンからアプリケーション・オブ・キュアライトウーンズ(巻物扱い)をダウンロードすることでHPを回復することができた。
栗山部長
元ネタはクリサンドラル(パラディン・イン・ヘルに登場したエピックパラディン)
相鈴技研
会長の相鈴はソーリル(ラビリンス・オブ・マッドネスに登場したパラディン)もちろん、企業イメージのネタは本田技研です。