見出し画像

焼肉屋さんで妹にカミングアウトしたら、どうでもいいって言われた話。

もう長いこと隠してはいないから改まって言うことでもないけれど、
私は所謂バイセクシャルで、男の人にも女の人にも恋をする。

小学生の時に「LGBT」という人たちの存在をテレビで初めて知った時から、
自分も女の子と付き合うことは想像できるなとなんとなくは思っていた。

でも普通に生きていたら、出会う人のほとんどは異性同士で付き合うわけだから、
私は女の人に抱く気持ちはなんとなく無視して、ずっと男の人を好きになっては失恋をして生きていた。

だから高校生になるまでは、
自分は男の人だけと恋をするものなんだと思っていた。

私は昔は巷ではメンヘラと呼ばれている類の女の子だったし、
自分は「心にちょっとだけ傷を負った女の子が、その傷を癒してくれる男性の恋人に依存する」なんていう典型的で素敵な恋をしてずっと生きていくんだと思っていた。

でも、高校生のある日、突然女の子に告白された。

色々考えた末、その子とは付き合わなかったけど、
その子と恋人同士がするようなことを一緒にしている自分は想像できたし、違和感はなかった。

その時、自分はきっとあの「バイセクシャル」という類の人間なんだと思った。

自分にとってはごく自然な気付きだったし、何かが腑に落ちたぐらいのことだったから、その時は特に悩みはしなかった。

でもその後、男の人とあまりよくない恋を重ねたせいか、
女の人にばかり恋をする時期があって、本当は自分はバイじゃなくてレズなんじゃないかとか、
でもこんなに男の人のことも好きになったこともあるのに、とか色々と迷子になって悩んでいた時期があった。

そんな時期のある日、母親と喧嘩をした。
喧嘩の内容はもう覚えていないけど、
きっといつもの「こんなに何もできないとお嫁にいけないよ」みたいな喧嘩だったんじゃないかと思う。

そして口論をしていたら、何かの拍子で「私は今は男の人は好きになれないんだ」というようなことを私が言ってしまった。

何の前触れもなく発されてしまったその言葉は、なんだか異臭のようにリビングに残っただけで、
私にも母にもきちんと向き合われることはなく、数日後にはなかったことのようになっていたし、
自分からすすんで家族と何かを話すわけでもない私は、その後も特にカミングアウトなんてせずに毎日を過ごしていた。

でも、最近、ひょんなことから妹と焼肉ランチを食べながら私がいかに恋が苦手なのかの話をしていたら、
妹に「ママに、ちえちゃんってバイセクシャルなの、って聞かれたことあるよ」と言われた。

お肉を焼いていた私の手が、一瞬固まった。

でも隠す理由ももうなくて、あまりにも自然な会話の流れだったから、
別に、したくなかったわけでも、したかったわけでもなかったけど、
私はなんとなく妹にカミングアウトをした。

「うん、私はバイセクシャルだよ」

私の妹へのカミングアウトは、そのひとことだけだった。

それを聞いた妹は「へぇ、まぁ、ちえちゃんがどんな恋をしててもどうでもいいけどね」と言ってきた。
まぁ、そういう姉妹だからね。

その「どうでもいいけどね」を聞いて、なんだかほっとした。
人生ではじめて「安堵感」というものを感じた。

妹は、私が男の人と付き合っていようが、女の人と付き合っていようが、本当にどうでもいいんだと思った。
私が彼女の大好きなEXILEのメンバーとでも付き合わないかぎり、本当に私が誰とどんな恋をしていてもどうでもいいんだと思った。

きっとそれが彼女の優しさだし、
きっとそれが私の求めていることだった。

自分が好きな人の話をするだけで「カミングアウト」という仰々しい行事のようになってしまうのは嫌だけど、わざわざ隠すのも違和感があって、
でも自分がバイセクシャルであることを他の人に知られることはまだちょっとだけこわくて、私はまだ上手に自分の恋の話をすることができない。

そんな私は、
なんとなくカミングアウトして、
なんとなく知ってもらって、
なんとなく受け入れてもらうことを求めていた。

あの「どうでもいいけどね」という言葉がほしかった。

そして、社会もそうなればいいのにと思った。

私はQueer Eyeはリリースされた日に全部見ちゃうし、
鮮やかな虹色の旗を掲げて行進をすることも好きだし、
早く世界中で同性婚とかできるようになったらいいのにと思って署名もするし、
時々自分がマイノリティーのひとりなんだという話もするし、
初めて惚れ込んだ広告がLGBTQ+についての広告だったという話もするけれど、

そんなことがひとつも必要なくて、
LGBTQ+であることが「どうでもいい」世界も見てみたいとは思う。

当事者でも、当事者じゃなくても、色々な意見や向き合い方があるけど、
口下手で暗くて、いちいち自分の恋の事情を説明するのが苦手な私は、
私が誰と恋をしても「どうでもいい」世界を見てみたいと思う。

だって本当は、どうでもいいはずなんだから。

ぜんぶ、愛だもん。

#loveislove


そして最後に、このnoteは、ほとんど自分のために書いているもので、他の人に思考以外の何かを促すために書いたわけではないけれど、もし昔の私みたいに悩んで誰にも話せなくて苦しんでいる人がいたら、話を聞くことはできるから、いつでも連絡をくださいとだけ書いておきます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?