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純豆腐は純粋な豆腐ではなくて、オレオの自己肯定感がギャルで、比叡山の公式キャラと眠る。

また一年が終わろうとしているけど、今年学んだことと言えば純豆腐は純粋な豆腐ではないということと、賀茂川と鴨川は同じ川であるということぐらいだし、
初夏からお世話になっている職場でもちゃんと貢献できたことと言えば「お大事に」というSlackのスタンプを作ったぐらいかもな、などと思う。

もちろん、職場では本当に色々なお仕事に触れさせていただいているし、頭の中は自分の声をミュートしたいぐらいには騒がしいから、何も変わってないわけではないんだろうけど、
今年はなんだかいつもに増してメンヘラな一年を過ごしていて、そこまで世界も良くできていなくて、人間として前進しているのかが甚だ疑問なまま年末を迎えてしまった。

そもそも私は今年の4月1日、周りの皆が晴れの日として新年度を迎える中、一人で渋谷の心療内科に行って「涙が止まらないんです」とかぽろぽろ泣いてて、
ADHDの症状らしいことなんて大して話してなかったけど、検査費を取るためか検査を勧められて「ADHDは天才の証です〜!」とか表紙に書いてある不思議な漫画を渡されて、その一行を見た瞬間になんだか世の中の全ての浅はかさが嫌になって検査結果さえもらいに行かなかった、そんな最悪な感じの新年度のスタートを切っていた。

とは言っても、今回はなぜか思い立って心療内科に行っただけで、涙が止まらなくなることなんて小学生の頃からよくあって、正直いつも通りの鬱だなとしか思ってなかったし、仕事が手につかなくなることは無いからそこまで困ることもないかなと思って時間に解決させることにしていた。でも昨年末から春にかけて心の傷が重なったせいか、一年経っても自然治癒が追いつかなくて、いつも以上にメンヘラなまま年末になって、こんな時間にこんな暗い文章を書いている。

でもそんな中でも希望を持たせてくれる人や言葉が存在するから死ねないわけで、その中でも今年の私は特に、オレオのコピーの精神性に依存しながら生きている。

ちょうど年始頃、薬局でお菓子を選んでいて、「高校生ぶりかもな」なんて思いながらオレオを手に取ったら、あの青いロゴの上に衝撃的な言葉が書いてあった。

“Milk’s Favorite Cookie”

オレオに触れた指先から脳天まで衝撃を受けた。
拙訳で申し訳ないけど、オレオのコピーが「牛乳のいちばんのお気に入りのクッキー」だなんて。

私なんか自分自身のお気に入りの人間でさえないし、恋人の「大好きだよ」という言葉や、後輩からの尊敬の言葉さえ疑うのに、「牛乳のいちばんのお気に入り」を自称しているクッキーがあるなんて。

オレオ、なんてギャルなんだ。
世界中の人が世界中のクッキーをつけて食べている「牛乳」のいちばんのお気に入りを自分で名乗れるって、なんかすごい精神力だ。自己肯定感が高すぎる。羨ましくて、涙が出てくる。

そんなこんなで、私は毎日「もっとオレオみたいになりたい」と思いながら一年間生きていた。

でも、やっぱり二十年近く続けたメンヘラは一瞬のオレオよりも根強くて、
ふとした瞬間に心が不安や恐怖に蝕まれてしまうわけで、そう簡単にオレオみたいな自己肯定感は得られないことを痛感するような一年を過ごした。

この心の暗闇はどうしたものかな、オレオみたいになりたいな、どうしようかな、なんてずっと考えていたけど、
何もわからないまま年末を迎えて、ひょんなことから比叡山に登ることになった。

たくさん助けてもらいながら麓から頂上まで登って、延暦寺に行った。
延暦寺に着いたら油断して、なんでもない道で氷に滑って尻餅をついて、
数日経った今でもまだちょっとお尻の痣が痛い。

改修中の延暦寺を見て、不滅の法灯すごいな、なんて思いながら、
下山のケーブルカーを待つために延暦寺前の売店に入ってごま大福を食べていた。

そしたら「一隅を照らす - 自分が輝くことで周囲の人が輝ける」という言葉が書いてあるポスターが貼ってあって、また衝撃を受けた。

「一隅を照らす」というのは最澄の有名な言葉らしいけど、私は延暦寺内で見た時は「一人一人がそれぞれいる場所を照らすんだな、良い言葉だな」ぐらいの感想でなぜか受け流していて、
「自分が輝くことで周囲の人が輝ける」という解釈を売店で見て衝撃を受けた。

私は自分が何かを照らすとか、自分が何かを変えることを考えるときに、自分自身は手段でしかなくて、いつもその「何か」のことばかり先に考えてしまう人間で、自分が輝くことをまず考えようなんて思ったことはあまり無かった。マイケル・ジャクソンのMan in the Mirrorをあと100回は聴いたほうがよさそうなタイプの人間ですね。

でもよく考えたら当たり前だし、何なら大学生時代ずっと活動していた学生団体で考えていた「リーダーシップ」ってそういうものだったよなと改めて気付いて、
突然明るすぎて意味不明だけど「輝こー!」みたいな気持ちになった。

私はきっと、自己肯定感の高いオレオのことは一生羨ましいけど、
今は「牛乳」とか「誰か」のお気に入りになることよりも、
自分が輝くことが大事なんだと当たり前のことに気付いた。

今はお尻の痣が痛い度にこの気付きを思い出すけど、
痣が治っても来年はこの気持ちは忘れたくないなと思った年末。

でも結局まだまだメンヘラなので、延暦寺の一隅を照らす運動総本部の公式キャラクター「しょうぐうさん」のぬいぐるみを売店で買って、今はそのぬいぐるみに依存している。

一隅を照らす運動総本部のホームページによるとしょうぐうさんは「不思議な法力を持っていて、私たちが生きていく中で感じた疑問や迷い、不安などを取り除き人生の道しるべ的な役割」を果たしてくれるらしい。

迷いや不安なんて本当は全て忘れてしまいたいなと思いながら、今夜はしょうぐうさんと一緒に寝る。

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