貧血と出血と
まずはじめに。
今回の記事では貧血の話を中心に、月経(生理)に関する話、特にその出血量について少々生々しく書いている部分があります。
ですから出血する話が苦手な方にはオススメしません。
また、当然のことながら男性にはわかりづらい話が続きます。
正直、男性にとってはあまり読みたくない部類の記事かもしれませんが、私は今回の記事を男性が読んでくださっても良いつもりで書いています。
ひとまずチラ見して、大丈夫そうならぜひ読み進めていただきたいと思っています。
(なおそれぞれの話に関する詳しい私の年齢は伏せており、時系列に関しても少し曖昧にしています)
気がつけば貧血
貧血のことを書くにあたって、自分がいつから貧血だったかを考えてみたが、さっぱり覚えていない。
私は10代後半には立派な(?)貧血だったし、今も貧血だ。
若い頃には血液型が同じの兄から血をもらって輸血したこともある(…が効果はなかった、兄よごめん)。
私は先天性心疾患(生まれたから心臓病)だ。
心疾患の友人もそこそこいる。そんな私が見る限り、先天性心疾患の女性はその多くが貧血に悩まされている。
貧血になる背景はそれぞれ違うだろうし、細かい仕組みについて不勉強な私は理解しきれていない。
でもわかっていることが一つ。
皆、かなり深刻な貧血だ。
貧血を深刻にしている理由の一つとして、私は月経(生理)が深く関係していると考えている。
なぜなら私自身がそうだからだ。
ここからは貧血の話の合間に、私の生理(以下、月経のことは生理と表記)についての話をしたい。
ただ、これから書くことはあくまでも私の経験だ。
生理が軽いか重いかは個人差があり、比較することではないと思っている。
だから先天性心疾患の女性であっても皆それぞれ違いはあるし、また逆に「私よりはマシよね」と思う人もいるとは思うけれど、そこはそっと読み流してもらえるとありがたい。
まともな生理って何?
私の初潮っていつだっけ。
実は全く覚えていない。
なぜこんなに曖昧かというと、きちんとした出血がいつからなのかわからなかったのだ。
あるときから出血とは呼べないけれど確かに何か…茶褐色や赤黒い出血のようなものが見られるようになった。それが数日~数週続いて少しずつ赤い鮮血が混じりなんとなーく出血が始まる。
おそらくはこんな感じだった。
だから「まあ、あなたも生理が来たのね」というお祝いムードもなく
「え?これは生理と呼んで良いシロモノですか?」という気持ちが強かった。
そしてこのような出血が繰り返しやってくるようになった。
28日や30日と言った周期は全くなく、月に二度起こることがあれば一ヶ月以上ダラダラ続くこともあった。
こういう状態は数年にわたった。
幸いその頃は大した痛みを感じることもなかったので、ただただ延々と続く出血(あるいは出血もどき)に辟易としていた。
私の体がまだ未成熟であった可能性も大いにあるけれど、そのわけのわからない出血の仕方には、当時服用していたワーファリンという抗凝固剤(血栓ができないように血液をサラサラにする薬)も影響していたのではないかと思っている。
心臓手術をした後しばらく、私にはその薬が欠かせなかったのだ。
血液がサラサラになるということは、出血しやすい傾向にあるということだ。
長々だらだらと出血が(もどきも含めて)続いてもおかしくはなかった。
様子を見続けていても変化はなく、体調が安定したので主治医はワーファリンから効き目が穏やかなバイアスピンへと抗凝固剤を切り替えた。
でもその後もずっと生理は安定しなかったし貧血も相変わらずだった。
けれどもうそれに慣れてしまっていたし、それが特に問題とも思わなくなっていた。
ちなみに、私は婦人科への受診もしていた。
まずは基礎体温を測りましょうから始まり、その基礎体温をつける行為は恐ろしいことに今も続いている。30年近く基礎体温測ってる気がする…。
で、この頃の婦人科の判断によると、私は無排卵月経だった。
無排卵月経の人は不正出血が起こる・生理不順であることが多いそうで、私もおそらくその類だろうということで様子見が長い間続いた。
鉄分をください①
生理の話は一旦横に置き、では貧血に対する対策をしてこなかったと言えば、そんなことはない。
おそらく貧血の人が一度は通る道、鉄剤の服用だ。
私も何度も挑戦したが、毎回副作用に悩まされて飲み続けることができなかった。
鉄剤の副作用では、代表的なものに吐き気、胃痛、下痢などの胃腸障害がある。
私もそこの三つが出たが、最も酷かったのは下痢だった。
飲んでしばらくするとトイレへ行く。そしてトイレから離れることが難しい。
胃痛は胃だけでなく胃の裏と思われる背中も痛くなり、起きていられない。
吐き気は本当に吐いてしまう事態にはならなかったものの、ずっと気持ち悪さが続いた。ぐったりして寝て過ごすうちにその日が終わる、そんな具合だった。
要は、日常生活に支障をきたすレベルの副作用だった。
そんな鉄剤にはいろいろな種類があったのであっちの鉄剤、こっちの鉄剤と変更してみたけれどダメだった。入院中には小児用のシロップタイプも試したけれど同じ。
「鉄剤、もう禁忌にしておこうか」と当時の主治医が言ったくらいなので、なかなかハード目の副作用だったのかもしれない。
☆
では何か鉄分が豊富な食物を摂れば良いのではと思うだろう。
もちろん頑張ってはいた。
母は大変だったと思う。
レバーや牛肉、あさり、ほうれん草、小松菜…いろいろと食事として出してくれていた。私はそれらをしっかり食べていたけれど、数値に反映されることはなかった。
また、鉄分を多めに入れた加工食品、例えばチーズやウエハースなども食べていた。「鉄たまご」って商品の鉄の塊があるのだが、それをお湯を沸かすときに入れたりもした(鉄分がお湯に溶け出すのだそう)。
他にもいろいろ試したけれど、鉄分が多く含まれた飲料は飲むと鉄剤と同じような症状が出たので飲めなかった。
サプリメントに関しては薬剤師さんから「鉄剤が飲めない人は飲めないしやめた方がいい」と飲まないよう言われたので手を出さなかった。
「たぶん、食べ物から鉄分を吸収しにくい体なんだと思う」
と主治医に言われてしまい、なんですかそんな体質あるんですか嘘でしょ…とお手上げ状態だった。
鉄分をください②
結婚した私、今お世話になっている病院へと転院した。
さてこの頃、私の生理はなんとなく〇日周期かな?くらいにはなっていた。
でも唐突に出血することもあり(どちらかといえば不正出血だと思われる)、全体的には出血過多であったと思う。
それでも落ち着いた方だった。
年齢と共に落ち着いたのか、あるいは手術からかなりの年月が経ったと言うことでバイアスピリンを飲まなくなった恩恵なのかもしれない。
でもとにかく、この頃ようやく私の生理は安定しつつあった(安定するまで何年かかるねん、と我ながら思うけども)。
ただこの頃にはタイミングよく痛み止めを飲まないと効果が発揮されることなく一日中しんどい、というくらいには生理痛がひどくなっていた。
私は生理前~生理中にかけて不整脈(期外収縮)が多くなるタイプだ。
痛みが強くて苦しいと感じても不整脈は増えるらしく、生理痛がひどいと不整脈も増していた。
痛みを抑えることは心臓への負担も軽減することに繋がると、「無理して我慢しないで痛み止めを飲むこと」と言われ、比較的積極的に痛み止めを服薬していた。
あまり良くないことだろうと思いつつも、予防的に飲むこともあった。
生理が安定して来たなら、貧血も改善されなければならない。
…のだけど、改善されることはないままだった。
というか、どんどんひどくなっていた。
さあ、やはり始まる鉄剤チャレンジ。
そしてあえなく敗れる鉄剤チャレンジ。
ということで、外来受診のたびに鉄剤の点滴をすることになった。
正直効果はない。気休めかもしれない。でもやらないよりやろう。
そんな感じだった。
貧血がひどいとどんな症状が起こるか。
私の場合は、
〇とにかく息切れが激しくなる。
〇いったん下がったspo2の値が元の数値に戻るまで時間がかかる。
○そうした影響か、不整脈が増える(心臓への負担が大きくなる)。
〇年中、肌がガッサガサの乾燥肌。痛いくらいの乾燥肌。
〇めまいやふらつきが増える。
〇ひたすらだるい。何をするのも苦しい。
…こんな感じかな。
そんな状態が続いてたが、ひょんなことから転機が訪れる。
☆
たまたま実家のほうにある病院を受診したときのこと。
その当時のそちらの主治医が「尋常じゃない貧血でこのまま帰すことはできない」と言った。
ひとまず鉄剤の点滴を注射して、そして鉄剤を飲むよう勧められた。
「鉄剤無理…」
言う私に、
「とにかく帰宅後すぐ飲むこと。どうしても辛かったらやめていいけど、なんとか一週間挑戦して」と。
その鉄剤はこれまで一度も飲んだことのない鉄剤だった。
飲んだことのない種類、まだあったのか。
そう思いつつ、覚悟を決めて帰宅後飲んだ。
まあ、予想通りのしんどさだった。
下痢になる、胃の裏が痛い、起きてられない、気分が悪い。
でも、でも。
わずかにマシだったのだ。
横になって背中をさすってもらいながらも、夫と少し会話できる程度にはマシだった。辛くて辛くて泣くほどじゃない。
耐えられるかもしれない、そう思った。
言われた通り、一週間飲み切った。
もしかしたら、実家にいて家事を一切しなくて良い環境だったのも幸いしたのかもしれない。ヒーヒー言いつつ飲み切った。
そして再度実家方面の病院を受診すると、少し数値が改善していた。
かなり苦しいけど飲めるかもしれない。
私はこのとき初めてきちんと鉄剤が飲めたのだった。
たまには違う医師に診てもらうのも大切だな。
セカンドオピニオンとまではいかないけれど、違う医師の意見を聞くのも必要だと感じた(まあ、結果悩むだけという場合もあるけどね)。
以降、こちらに戻って来てからもその鉄剤をずっと飲んでいる。
やはり副作用はあるため、量の調整などを経て今は週に2回、夕食後に飲んでいる。
「お腹いっぱいの状態で飲めば少しマシになる」と言われたので、夕食をしっかり取った後に飲んでいる。
それに夕食後にしておけば、苦しくなっても後は寝るだけ。なんとかなる。
なぜか水かうすーい麦茶限定でしか(私は)飲めない。
他のお茶で飲むと一気に気分が悪い。
最初の頃は苦痛だったけど、人間は適応できる生き物だなとつくづく感じている。たまにとても辛いときはあるけど、今は耐えられるようになった。
私はようやく鉄分補給ができるようになった。
出血過多カタカタ…
これで貧血改善一直線!となるかと思いきや、そうはいかなかった。
心房細動だの心房粗動だのを起こすようになり、血栓予防に抗凝固剤が再開されたのだ。
これまでのワーファリンやバイアスピリンではない違う種類。
1日1錠。これが良く効く。
そして何が起こったか。
生理がどえらいことになった。
もともと出血過多気味であったと思われる私。
それまでは出血初日と翌日くらいまでは時間に関係なく、夜用のナプキンを使用していた。なぜなら漏れちゃうから。
その薬が始まってからはそれどころじゃなかった。
出血初日と翌日、場合によっては3日目くらいまでは、吸収量の多いタイプのタンポンと「量の多い夜に」とかいう後ろまでかなり長い巨大ナプキンを併用して1〜2時間持つかどうかになった。
これに利尿剤による尿意が加わる。
そんな祭りがあってたまるかと思うけど、それはもう、トイレ祭りだ。
しかもどんどん体から血が抜けていくので、時間の経過と共にふらふらしてくる。
また、お風呂に入って体を洗っている最中もあまり出血が止まることがない。
当然湯船に浸かることができない(本当は腰を温めたいから浸かりたい)。
お風呂から上がるタイミングを見計らって夫を呼び、これまたタイミングよくナプキンを手渡してもらってあてがわないとすぐに血まみれ。
夫が泊まり勤務の日は手の届くところにナプキンを準備しておくのだが、立ち上がった瞬間に出血するものだからよく失敗した。
シャワーで血液を流して出血が止まったときに動くのだけど、そもそも出血が止まる気配がないので延々とシャワーを流したまま数分、出血が止まる瞬間を待つしかないことも多かった。
入院中、一度だけ大失敗をしたことがある。
本当に予想外に出血が始まり、トイレには辿り着けたけど便器もトイレの床も血みどろにしてしまい、看護師さんの手を煩わせてしまう結果になった。
イメージでいうと、カップに入れたコーヒーやお茶の類を床にぶちまけてしまった感じだろうか。
あれほど虚しいものはない。
そして一番の問題は、出血量が多いことで外出が困難になったことだ。
外出すると1時間に一回の割合でトイレに行かねばならない。それ自体は構わないとしても、外出先のトイレの個室内で服を汚すことなくタンポンとナプキンを交換するのはなかなか厳しいものがある。
とても生々しいことを書くと、タンポンを抜いた瞬間ドボドボと出血するので、外出先での生理用品の交換がめちゃくちゃ大変なのだ。
できる限り生理と被らないように外出予定を組むものの、抗凝固剤を飲むようになって以降の生理は再び○日周期というものがなくなったため、予想がつきにくくなったのも困った。
正直、外出が苦痛になった。
そして当然、貧血改善どころか、貧血街道一直線となる。
鉄剤を飲もうが関係ない。
苦しい。
☆
この出血量を男性である主治医に伝えるのはなかなか難しい。
「多くて大変と想像はつくけど、どうしても僕にはわからん部分があるからなぁ」
と、とても正直に話してくれていた。
でも貧血がどんどん酷くなっているのは数値がはっきりと示していて、なんとかしないといけないレベルであることは先生にもわかっていた。
一方で、近所でお世話になっている内科の先生(女性)に出血量について話をしたときのこと。
「見たことないけど殺人現場ってこんなのかなと思いまして」
と冗談混じりで話すと
「まあそこまでではないだろうけど、でもその出血量は傷害事件現場並みと考えていいと思うわよ、私もそんなとこ直接見たことないけど」
と傷害事件認定(?)をしてもらい、この出血量はおかしいのだなと認めてもらえてほっとした。
女性の医師に話をすることはとても大切だと思った。
☆
生理不順を改善しようとしている人や、なんとか生理が来るよう服薬している人からすればとんでもないことを言っていると思うだろうけど、私は本気で閉経して欲しいと願っていた。
叶うならば子宮摘出をして欲しいと思っていた。
想像していたより長文になってしまった。
まだまだ続くので、今回はここまでとする。
次回の記事では、私がこの過多月経による貧血を改善しようと、どんな処置をしたかを書こうと思う。
また、こうした状況にあるのは何も私だけではない。
多くの先天性心疾患の女性が同じような体験を少なからずしている。皆、話をすればたいてい貧血で、更には過多月経だ。
これは、そこそこ異常なことではないかと思っている。
そうしたことを踏まえた上での、私の気持ちも書けたらなと考えている。
よろしければまたご覧ください。