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【過去詩】乙女を誘う擬古的な二つの唄【日本語ソネット】
キシキルリルラケが乙女に唄ふ唄
ぬばたまの闇の髪持てる乙女よ
汝が思ひ出の道をたどれ
我が元に来たれ我が元に戻れ
汝に相応しき唯一つの生を求めよ
漆黒の夜の瞳持てる乙女よ
我が娘らと楽しき鳥屋に宿れ
我が娘らと唄ひ踊れ
汝が美しき姿態を我が眼にとどめよ
我が娘らと地に愛をもたらし
ひたすらに笑ひさざめき
地を這ふ鈍色の人らに愉悦を
常の人とあらば汝を襲ふ木枯らし
されど我と来たりなば汝が頬は燦めき
麗しきまゝ過ごさん幾歳月を
ルサルカが乙女に唄ふ唄
暖かきペチカの前に佇み、
爪弾くは古きバラライカ、
人の涙振り絞るその哀歌、
されど汝が知るは人の世の上澄み。
冬も凍らぬ我が泉、
彩るものはすみれか百合か、
されど汝が明日は如何にか、
モロオズ爺は今宵も乙女を喰らひて舌鼓、
冬の嫁となる前に、
答へよや我が呼び声に、
時を逃して我が泉を去るか?
常春の我が家に、
汝が寝床整へし故に、
来たれよや、我はルサルカ。