【特集】世界の今。新型コロナウイルスが変えた私たちの生活(1)——「フィンランド・ヘルシンキ」の今
ロックダウン中のヘルシンキ生活の現状
世界中で新型コロナウイルスが深刻な状況ですが、私の住むフィンランド・ヘルシンキでは、現時点(4月8日)での国内感染者数 は2487名(死者数40名)で首都圏を中心に感染者が多く出ています。
Photo:ヘルシンキ大聖堂前の様子。人の姿はありません
ここまでのフィンランド政府の対応を振り返ると、非常に迅速で、明確な国の対策と方針を打ち出し、国民への具体的で的確な指示が出されたため、この不安な状況下においてもフィンランド国民は過度な心配をすることなく、事態を冷静に受け止め、政府と社会を信頼して過ごしています。
3月中旬の緊急事態宣言発令後、3月19日に国境を封鎖、3月27日にはウーシマー(首都圏を中心とする南フィンランド)を封鎖しました。今なお感染者数が増えているため、この緊急措置を5月13日まで延長しました。具体的には以下の措置をとっています。
・企業は自宅からのリモートワークを実施
・学校は一部の生徒を除き遠隔授業(子供たちへの無料給食は引き続き継続中)
・食料の買い出し、健康維持のための散歩や犬の散歩以外の不要不急の外出は控える
・70歳以上の高齢者や基礎疾患を有する人との面会は禁止
・全ての美術館、シアター、図書館、スイミングプール、ジムなどは閉鎖
・10名以上規模の公共のイベントや集会は禁止
・公共の場では人との距離を1.5m開けること
・飲食店は5月末まで閉鎖(テイクアウトを除く)
・首都圏エリアのロックダウンに伴い警察や軍が出て監視を行う
生活の様子は?
私と夫も、自宅からのリモートワークを始めて1ヶ月が経ちます。食料の買い出しと健康維持の散歩以外は、外出せず家に篭っています。スーパーマーケットは週に数回で済ませ、1日3回の食事の献立プランは、これまで以上に計画的に、1週間単位で組んでいます。
人に会わないのはもちろん、人混みを避け公共交通機関の使用は控えています。ヘルシンキの街はコンパクトなため、移動は徒歩または自転車で十分です。フィンランドの企業は、夏頃まで自宅からのリモートワークを継続することになりそうです。
ロックダウン中のリフレッシュ方法は「森の中を歩くこと」
日々の生活で心掛けていることは、手洗いとうがいに加え、規則正しい生活を送ることです。よく食べよく睡眠を摂り、毎日近所を歩いています。長い冬が明け、ようやくヘルシンキにも春到来、日も伸び太陽がでる機会も多くなったので、積極的に日光を浴びてビタミンDを摂取しています。
Photo:近所の散歩風景
とても恵まれていることに、自宅の近所には海と森があります。毎日森の中を歩いては自然の美しさに癒され、リフレッシュしています。人も少ない森の中は自分たちだけの空間なので、安全で安心感を与えてくれます。自然の中を歩くことで、心身ともに健康を維持できているように感じます。
フィンランド生活においては、冬の間は非常に長い時間を自宅で過ごすため、その点はあまり普段と変わらないものの、1日3回の食事の準備は大変なので、たまにはフードデリバリーを利用しています。
ほとんどのレストランが閉鎖している中、有難いことに一部のレストランはテイクアウトとデリバリー対応をしています。テイクアウトは20%オフで提供しているレストランも多く、「地元のレストランをサポートしよう!」という動きも見られます。
また、自宅まで届けてくれるデリバリーサービス(フィンランド発のWoltやドイツのFoodora)は多くの人が利用しており、数名で営業しているレストランはかなり忙しいようです。自宅までのデリバリーは配達員と顔を合わすことなく、ベルを鳴らして玄関前に置いて行ってくれるので安心です。
スーパーマーケットは優先時間を提供
Photo:空っぽのトイレットペーパーの棚
大手スーパーマーケット2社、K-SupermarketとS-Marketは、新型コロナウイルスに感染するとリスクが高いとされる、70歳以上の高齢者や基礎疾患を有する人を対象とし、開店直後の1時間(朝一番)清潔な環境でゆっくりと買い物をしてもらう時間として、特別な時間枠を設けています。
この時間帯は、対象外の人たちはスーパーの利用を避けるように呼びかけています。もちろん対象者の方たちは他の時間帯も入店できますが、様々なリスクを考慮し、この時間帯を推奨しています。商品を必要としている人たちに均等に手に入るよう配慮されており、実に良い取り組みだと思います。
フィンランドでも3月半ばの緊急事態宣言発令直後、一時的にスーパーマーケットではトイレットペーパーや缶類などを買い求める人のパニック買いが起こりました。しかしそれは数日で収まり、現在では元通りです。アルコール消毒液やマスクは現在も品薄状態が続いています。
Photo:スーパーのレジに店員と客が接触するのを防ぐために設置されたクリアパネル
ご近所同士の助け合い、思いやり
皆が大変な状況下ではありますが、お互いを思いやり気遣う姿が多く見られます。散歩する人たちや世の中の人を励ます目的で、窓際にテディベアを飾る家が続出しています。
Photo:#nallehaaste (nalle=テディベア、haaste=チャレンジ)
他のヨーロッパ各国のように、表に出てベランダから決まった時間に医療従事者に拍手を送ったり、歌や演奏をする人は見られないものの、控えめで静かな表現はフィンランド人らしいと思います。
また、自宅アパートの共有掲示板には「買い物など手伝いが必要な方はどうぞ連絡ください」と、名前と電話番号が書かれた張り紙があります。アパートには高齢者もいるため、他の住民が買い物の代行などを助けています。
世界で起きているこの事態が、1日も早く収束することを祈るばかりです。
by パケトラライター ラサネン優子
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