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「外環の2」の中の石神井

 西武池袋線・石神井公園駅南側の再開発では、以前からある建物はあらかた撤去されてしまったようだ。神社と桜の木もどうなっていることやら、白い塀に囲われ、中の様子は分かりづらい。
 再開発では高層ビルが予定されている。テレビニュースにもなった先日の裁判では、「すでに高い建物が二本あるので、今さら増えても問題なし」ということらしい。練馬区の今のトレンド(?)は「高く、高く」のようだが、最近は「外環の2」の掲示板を以前よりも街中で見るようになった。「広く、広く」の話まであるのだ。

ニュースにもなった石神井公園駅駅前

「外環の2」の正式名称は「東京都市計画道路幹線街路外郭環状線の2」。世田谷区北烏山を起点とし、三鷹市、武蔵野市、杉並区を抜け、練馬区東大泉にいたる道路である。
 いくつかの資料やネットの記事を見ての感想は、「車ファーストだな」ということだ。大泉JCTから南方向に向かう延伸部は「大深度地下」に建設される。これはこれで課題があるとして、用地を買収し、あらたに道を設けるためのお題目はなくなった。ところが、高架の高速道路を前提にした以前の都市計画に乗っかって、南北に延びる一般道路も造っておこうというのが「外環の2」の正体のようだ。目的は交通利便性の向上らしい。

計画を報せる看板があちこちに

 石神井で「外環の2」が進むと、青梅街道から目白通りまで一気に抜けられるので、車にとっては便利になる。
 東京都の説明によると、無電柱化や街路樹の植栽により、地域の防災性は向上し、良好な都市景観も創出されるそうだ。今のままだと「狭い敷地に狭小住宅が建つ」「ブロック塀が作られ地震で倒壊する」という。
 防災の重要性は理解出来ても、「外環の2」をすすめないと、「ネオン看板や屋上看板など、まちの雰囲気に似合わない看板が設置されかねない」というのは説得として不可解ではないか。

 計画にはいくつかのフェーズがあって、全体像は分かりにくい。今年になって、石神井台工区で事業着手されることが発表された。まずは、富士街道から前原交差点までのようだ。
 この部分ではリアルな地図が公表されている。交差点から新たな道が南へと延び、西武池袋線をくぐる。そこまでもその先も、多くの住宅が立ち並び、もちろん生活をしている。最終的にどれだけの立ち退きが必要になるのか、本当に道は出来るのか、想像がつかない。
 線路近くの区民農園では、畑仕事を楽しんでいる人がいた。今現在でネオン看板の立つ恐れはないし、住民が幹線道路と幹線道路を結ぶショートカットを受け入れる理由にはならない気がする。

このあたりで池袋線をくぐるはず

 上石神井駅周辺でも「外環の2」に伴った道路建設が予定されている。千川通りから新青梅街道については、南北道路がすでに事業化されているようで、用意周到だ。
 その上石神井駅南口には、商店街に向かって三分もかからないところに「Beer Restaurant LEAF」(リーフ)という洋食店がある。急な階段を上った二階にあるが、建物の壁に蔦がからまり、一階にメニューが出ているから、分かると思う。
 外から想像するよりも、店の中はずっと広い。イタリアン、フレンチ専門でないので「洋食」とさせて頂くが、メニューは豊富だ。

 リーフは三十年以上、営まれているそうだ。店内には昔の日本の歌謡曲が流れている。杏里、高中正義など、聴いたのは70年代だったか。タイトルは分かるけど名前が思い出せない人もいる。「歌手」を「アーティスト」と呼ぶようになったのはいつの頃からか。自分には懐かしい曲も多いが、年期の入った内装ともども、今の若い人は店に「レトロ」を感じてしまうかもしれない。ビールジョッキを前にいろいろと考えてしまった。

「リーフ」にてカットステーキのセット

 リーフは西武線の線路が近いので、電車の音が聞こえる。いや、揺れもする。西武新宿線は高架化が予定されていて、線路をそのまま持ち上げるわけにもいかないから、近隣は何がしか影響があるだろう。いずれ詳しい番地がはっきりするだろうし、この段階で具体的な店の名前を出して誤解を生むのは申し訳ないのだが、ルートを外れたとて、上石神井駅を中心にあっちもこっちも計画がある限り、そのままの街並みというわけにはいかない。
 まだ先の話とは言え、この界隈で食事をする時の落ち着かなさはいかんともし難い。

上石神井駅の北側。「立入禁止」


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