小椋佳さんの歌詞のかほり
以前、鬼束ちひろの「眩暈」で歌詞が頭に入ってきたと記事を書きました。同じ経験で言うと、かなりかなり強烈に歌詞が印象的だった歌があります。「愛燦燦」です。超有名曲すぎて、なんの説明もいりませんね。
美空ひばりさんの歌い方には「凄い」以外の語彙を失ってしまいます。
心にバンバン響いてくる。
わたしは初めて愛燦燦の歌詞にきちんと出会った時、目の覚める思いでございました。当時、高校生だったかな。
「睫毛に憩う」って?
なにその日本語。どういう意味?
こんな発想ができる人がいるのか... マジか... 情景が美し過ぎるやろ。
なんかもう、打ちのめされました。頭を抱えました。
この歌詞を書いた人はいったい誰なんだ。
小椋佳さん。
あ、めっちゃ知っとるわ。
とても身近な人でした。というのも、父がフォークソングが好きな人間でして。吉田拓郎とか、かぐや姫とか、井上陽水とか。カセットテープに録音してあって、ドライブ中はずっと流れてました。もちろん小椋佳も。
わたしはわたしで小さい頃からミュージカルが身近なエンタメでして。
それを知っていた父が「小椋佳のアルゴミュージカル」がNHKで放送されたときにビデオに録画してくれてたんです。それをテープが擦り切れるまで見続けてた当時小学生のわたし。
それで、小椋佳さんは身近な人だったわけです。
うなぎパイよりも身近。
どうして「睫毛に憩う」って不思議な歌詞を創ることができるんだろうと、今更ながら調べておりましたら、2017年の女性セブンの記事にこんなことが書かれていました。
なんか、創造性ってパズルみたいですね。
言葉と言葉をつなぎ合わせると別世界が現れる。化学反応かしら。
(あぁ、そういえば! ショートショート作家の田丸雅智さんの本にも共通することが書いてありました。)
そこが、創ることのおもしろみなんでしょうね。
さて、小椋佳さんの作詞曲で有名人気な曲を挙げていくと、なんだろう。「俺たちの旅」「シクラメンのかほり」「さらば青春」「愛しき日々」とかになるんでしょうかね。俺たちの旅、好きだわ~
わたしにとっての小椋佳さんの曲と言えば、「あなたが美しいのは」です。
前述したアルゴミュージカルで、わたしが1番好きな「アイスクリーム応援団」(1992年)という作品がありまして、その劇中で歌われるんです。
歌われるシーンは、主人公たち(子役)が敵対する悪役(大人)を説得というか、改心させるというか。劇中のクライマックスです。
そういう意味合いでの歌われ方なので、聴く側の心が動かない方が変なんですけど... 子どもだった わたしの心に、ジーンと染みていました。
ただ、当時はサビの部分しかあまり意味を理解できてなかったかな。
大人になって。嫌な思いを抱えたまま無理し続けて体調を崩して1年休職しているときに、急にこの曲を思い出してiTunesで購入しました。
改めてA,Bメロの歌詞も読みながら聴いてみました。
2番のAメロは、こんな歌詞。
きっと霧深い海に 沈ませた宝のように
誰の胸にも必ず 色あせぬ夢があるもの
小椋佳さんの穏やかな歌声と歌詞のメッセージが、会社をドロップアウトしかけている自分にそっと寄り添ってくれました。
しとしと雨の降る曇空から、徐々に晴れ間が見えてくるような。
希望が見え始めてくる気配がしたのです。
サビはストレートに心を打ちます。2番のサビは
あなたが素晴らしいのは 愛されようとする時でなく
あなたが素晴らしいのは ただ生きようとする時
まぁ、結局わたしは会社ドロップアウトしましたけれども。
これからも、わたしは生きますよ。生き延びてやりますよ。
「あなたが美しいのは」是非、聴いてみてください。
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補足① 愛燦燦について調べていくと、誕生秘話がとてもおもしろかったです。味の素のCMソングだったんですね。へぇ~
補足② アルゴミュージカル出身の役者さんと言えば、現在放送中の朝ドラ「エール」にも出演中のプリンス山崎育三郎さん。アルゴで初舞台、しかも主演でした。
補足③ 「あなたが美しいのは」は、もともと堀内孝雄さんの1983年発売の7thアルバムに収録されています。作詞 小椋佳、作曲 堀内孝雄です。そこから時を経てアルゴで歌われるのですが、この時、歌詞は一緒だけど1983年版とは微妙に違うメロディーです。なので、この曲は2バージョンあるということになります。堀内孝雄バージョンと、小椋佳バージョンとでも言えばいいんでしょうかね。なぜ「アイスクリーム応援団」にこの歌を持ってきたのかとか、メロディーが違うのかとか、わたしには詳細は分からないのですが。おそらく、この1983年~1992年の間にあった出来事が関係しているのではないかと勝手に思っているんですけど... 小椋さんにはとても思い入れのある曲なのかもしれません。
補足④ うなぎパイファクトリーに行ったことがあります。うなぎパイは旨い。
(おしまい)