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「実況者」の意味について考える

2022年5月に書き始めて、長い間放置して、ようやく書き終えました

2022年5月、作曲家のほんでぃー(ぺちこん)氏が
以下のツイートをしていました

実況というのは、視覚で状況を確認できない人に口頭(聴覚)で正確に詳しく説明する為にある役目だ。
それを、独りで勝手にゲームで遊んで独りで勝手な主観的感情を吠えるだけの愚蒙な収録にも言う、実況の正しい意味を知らぬ幾万もの道楽者の卑しさよ!

ほんでぃー(ぺちこん)氏のTwitter

数日後、これに続けてこちらのツイート

大物気取りほど、ただの問わず語りを、実況という言葉で正当化させてカッコツケる。
半可通もイートコロだ。
そんな愚昧な見栄張りどもは、野次馬からそれを指摘されたことは無いの?
あぁそうか……こんな嘆かわしい時代だから、この指摘すべき案件を指摘すべき案件だと気が付けてる者が居ないのか

ほんでぃー(ぺちこん)氏のTwitter

自分も「ゲーム実況者」として、看過できないというか、これは今一度「実況」の意味するところを考えなくば、と思いました

尚、ほんでぃー(ぺちこん)氏は、難解なインスト楽曲を専門に作られてゐる、とても才能のある方です
反面、作品同様といいますか、人間としても難しい方のやうで、ネガティブな内容のツイートが多い印象です
BMS界隈でいうところのtarolabo氏に近い感じでしょうか

「実況」本来の意味は?

まず「実況」たる言葉の本来の意味を考えてみませう

「物事の、実際に行われている状況」 広辞苑
「実際の状況、ありのままのようす」 明鏡国語辞典
「現に何かが行われている、実際の状況」 新明解国語辞典

「実況」とだけでは、こんな感じになります
「実況放送」だと「実際の状況を、そのまま現地から放送すること。また、その放送」と、広辞苑では出てきました

これだけだと、まだぼんやりした部分がありますが、Wikipediaとピクシブ百科事典に、わかりやすくまとめられていました

実況(じっきょう)とは、際の状
1.実況報告の略称。
2.実況見分の略称。
3.実況中継の略称。
 1.掲示板等に現在の状況を書き込む行為を指すインターネット上のスラング。実況プレイ等。
4.テレビやラジオにおけるスポーツ中継などの実況中継において、アナウンサーが行う状況説明。

Wikipedia

1.現実のありのままの姿。実際の状況。物事が行われている実際のありさま。
2.テレビ・ラジオにおけるスポーツの中継放送などで、アナウンサーが行う状況説明。
3.掲示板などに現在の状況を書き込む行為を指すネットスラング。
4.実況見分の略。

pixivでは『実況プレイ動画』の略語として使われることが多い。

ピクシブ百科事典

恐らく、ほんでぃー(ぺちこん)氏が指してゐる「実況」の意味は、Wikipediaの4及びピクシブ百科事典の2であると思われます
ところが、上の引用を見てもわかるやうに、ゲーム実況たる意味も書いてあるのです。両方に
Wikipediaには「ゲーム実況」の項目へのリンクもあります。それだけ世の中に定着してゐるといふことですね

ちなみに「実況者」のほうで意味を検索すると、ゲーム実況のほうが先に、しかもたくさん出てきます
アナウンサーに辿り着くには、ちょっと下にスクロールする必要があります

ここで少し気になった記事がありました
例文買取センターの「【実況】と【解説】の意味の違いと使い方の例文」の最初のほうに「『実況者』と『解説者』の違い」の項目がありました

実況と解説という言葉は、どちらもテレビやラジオなどのスポーツ中継において、よく耳にする言葉です。「実況者」「解説者」など同じような表現をするため、混同して使われる傾向がありますが、二つの言葉は意味が大きく異なります。

実況とは、物事のありのままの状況を意味します。プロ野球中継における実況とは、試合の進行状況や、ピッチャーが投げた投球数、ボールの速度やコースなどを視聴者に伝えることです。このような試合運びや状況を伝える人が「実況者」です。

解説とは、物事を分かりやすく説明することを意味します。プロ野球中継における解説とは、各チームの戦略について説明したり、ピッチャーのコンディションや投げ方の技術論などを語ることです。このような専門知識を組み入れて試合内容を説明する人が「解説者」です。

このように、実況と解説という言葉の意味は全く異なり、区別されるべきものなのです。

例文買取センター「【実況】と【解説】の意味の違いと使い方の例文」

これで「実況」と「実況者」の本来の意味ははっきり確認できました
ほんでぃー(ぺちこん)氏の言う「視覚で状況を確認できない人に口頭(聴覚)で正確に詳しく説明する為にある役目」といふのも、偏ってはいるものの本来の正しい意味で使っています

また、上記の通り「実況見分」「実況報告」たる意味もありますが、ここではさして重要ではないので省略します
ネットスラングの「実況」も省略します

ゲーム実況者は「実況者」といへるのか?

以上を踏まえて、ゲーム実況者といわれる方々は、言葉本来の意味で「実況者」だといへるでせうか?
「独りで勝手にゲームで遊んで、独りで勝手な主観的感情の問わず語り」たるものは、果たして本来の意味での「実況」なのでせうか?

その「問わず語り」が、上記の「実況者」「解説者」の役目をちゃんと果たしているならば、言葉本来の意味での「実況者」だといへるでせう

上記の引用に従うならば、
「実況者」とは状況を正確にそのまま伝える役目であり、
「解説者」とは専門知識を組み入れて詳しく説明する役目であります

「実況」本来の意味が「物事のありのままの状況」であるからして、
ここに主観的感情が入ると、本来の意味からは少し逸れてしまうのです
「正確にそのまま」の部分が逸れてしまうからです

そして「解説者」であるには、専門知識が必要であるからして、
単なる「その分野が好き」程度では本来成り立たないものです
「その道で身を立てられるほど通じてゐる」位が本来必要になるのです

こう考えると「主観的感情が入った問わず語り」は、
「実況者」「解説者」本来の意味とは少し違つてゐることになります

言葉本来の意味で「実況者」とするには、
「ゲームの状況を、主観的感情を交えず、見たそのままありのままを喋って伝える」形式が適切だろうと思います

しかしそれではエンタメとして面白くない
また、主観的感情を入れるならば「ゲームのこの状況から、私はこんな感情が生まれ、それをそのまま表現する」とすれば、
「実況者」本来の意味に少しは近付くことができる、とも考えられます
(この場合、実況する対象が「ゲーム」ではなく「自分自身」とはなりますが)

そもそも何故、ゲーム「実況」と呼ばれるやうになった?

ゲーム実況の歴史については、この記事に詳しかったです

この記事の上で、何故ゲーム「実況」と呼ばれるやうになったかといふ部分をまとめるとこうなります

匿名掲示板「2ちゃんねる」において、スレッド主がプレイしてゐる様子を、スレッド主自身が文字で説明する、それを「実況」と称した
即ち「自分がゲームをプレイしているという出来事を自分が実況中継している」ということである
その後、動画配信ができるやうになり「プレイヤーが文字で実況するもの」から「プレイの様子をプレイヤーと視聴者が一緒に実況するもの」に変化
次第に配信者のトークやリアクションに注目が集まり、ゲームの「実況者」は「視聴者と一緒に実況する人」から「視聴者に実況される対象」へと変化していった

これはかなり説得力のある説ではないでせうか
「実況」本来の意味を大きく逸脱することなく、喋りつつゲーム配信たる意味に派生していった

これにて、ゲーム「実況」と呼ばれる理由はわかりました

「ゲーム実況者」はこれからどう呼べばいい?

以上を踏まえて、ゲーム実況者はこれからも「ゲーム実況者」でいいと思います

他の言い方をするのであれば、やはり広義の言い方で「動画投稿者」
生放送などであれば、海外基準の言い方で「ストリーマー」または「ライバー」たる言い方もあります

とはいえ、あまり細かいことは気にせず、ゲーム実況を楽しめばいいと思います

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