狂った童話からの脱出の感想〜ファーニャーらしさとは?〜
現在、メンバーシップにて約月4〜5本ペースで謎解き公演評を書いています。現在公演評は2種類あります
・ロング感想:1公演あたり4000〜8000文字程度の長い内容
・ショート感想:1公演あたり1000字程度で複数公演詰め合わせ
本記事は「ロング感想」となっております。
※謎解き公演評について※
当たり前ですがあくまで私の個人の感想として捉えてください!
自分はこう思った、それ以上でも以下でもありませんし、誰かを意図的に攻撃したりお世辞を言ってゴマをするつもりも一切ないです。
自分の感想を言語化して残しておく場という感じなのと、私の感想が誰かしらの「咀嚼」の手助けになっていただければいいなぁという想いで感想は書いています。
一応、公演の感想を書く際に気をつけている点としては、基本的に「自分の感じたこと」オンリーとしていることです。
他人の感想を受けてアレコレとか、評判どおりこうだった、こう言われてるけど自分は違かった、という感じの「他人の感想」を何かしら意識した内容にはしないように気をつけているつもりです。
また、謎の内容についてのネタバレはありません。が、雰囲気やテイスト、難易度感といった部分には触れている場合が多いので、完全にフラットに公演を楽しみたいという方は「プレイ後」の閲覧を推奨いたします。
そのあたりを考慮した上で読んでいただければ幸いです。
前回の感想はこちら!よだかさんの最新おもしろ公演2作。
狂った童話からの脱出/ファーニャー
まず結論として、謎解き公演として十分に面白かったです。ファーニャーさんの新たな代表作となる公演だなと感じました。
2020年の結成以降、結構な数の公演を送り出してきたファーニャーさんですが、個人的には一時期かなり不安定な時期があったと思っています。
公演のクオリティが高かったり低かったりめちゃくちゃ差が激しい…。かなりガタガタしていた印象を持っていました。
詳しくは後述しますが、「ファーニャーヴィランサイド」と銘打ってヴィランサイド公演を連発し始めた最近は、「謎解き公演」としてのクオリティが段違いに高くなったと私は感じています。
公演のクオリティや安定感が増し、「同人団体」から「商業団体」へと確実にイメージが変化していくなか、ふと自分のなかに「ファーニャーらしさ」とは何だろう?と疑問が出てきました。
本公演の感想を書きながらそこも考えてみることにします。もちろん完全部外者なのであくまで私の中で、です。
映画評論とかでよくするじゃないですか。監督らしさ、制作会社らしさ、みたいなのを本人しかわかるわけないのに語るやつ。まぁそれこそ批評の醍醐味なんですけどね。
で、そもそもなんでいきなりそんなことを考えたのかというと、それは今まで自分の中で明確に「ファーニャーらしさ」みたいなものを公演を通して感じる機会が少なかったことに気づいたからです。
さて、前置きはこのあたりにして早速「狂った童話からの脱出」の感想です。こちらの見出しに沿って書いてきます。
【良かった点】
・混雑緩和を意識した設計
まずはここでしょう。
よくあるといえばよくある形式ですが、店舗の構造を活かした謎解きの構成で混雑を感じにくい内容となっていました。
「混雑が嫌なので序盤はなるべく早く駆け抜ける」というプレイングがSCRAPや大型公演では多いんですが、これって何かとストレスというかゲーム体験的にはノイズなんですよね。
「普通に丁寧にじっくり解いてめちゃくちゃ速い」ような超人チームは別ですが、自分のようにそんなに解くのが速くない人間は、
「とりあえず答えは出たっぽいし、読んでない紙あるけど一旦チェックポイント行こう!!」
といった具合に何らか急ぐことを「意識」をしないといけない。ゲームや物語とは実質関係のない「意識」。
意識して急いで解くことによって生まれる絶妙な脳負荷。
これって結構嫌なやつ。
しかし本公演は前述したように、基本的に待ち時間が発生しづらい内容なので、そのあたりに気を使わずに楽しむことができました。良いですねー。
・凝った建込みを活用した謎
いつの間にかファーニャー店舗は進化を遂げました。
この改築?により、公演で出来る表現の幅が大きく広がったと思います。
もとから「ホール型っぽくないギミック」がファーニャー公演では度々出てきて驚いていましたが、今回のこの改築によって謎解きギミックの表現により幅がついたと思います。
後述しますが、とくにこの「ホール型っぽくないギミック」はファーニャーの圧倒的な強みであり、ファーニャーの公演に参加する理由の1つかなと思います。
こういった仕掛けと全体構成の妙もあり、緩急が適切につき飽きずにゲームを楽しむことができました。気づいたらだいぶ時間が経っている、気づいたらゲームが終わっている、こういったプレイ体験が作れている公演は好きですし、制作する際も目指しているところです。時間に追われる謎解きだからこそ、時間を忘れさせるような体験を届けたい。
・温故知新な謎解き
本公演は「童話」というタイトルから、「ストーリー」要素が強めなのかな?という印象がありましたが、実際は自分が好きな「古き良き謎解き」をベースとした骨太の謎解きゲームでした。
現代基準で考えると正直ストーリーは薄め(個人的には昔ながらなボリューム感とテイストで大好き)ですが、そのぶんガッツリと謎解きで勝負する内容でした。
この「勝負」というのは、制作者側が「純粋に面白い謎で勝負するぞ!」という覚悟的な面と、「登場人物と謎解きで勝負する」という物語的な面の2つの側面があります。メタな解釈ではありますがこの2要素が重なると地味にシナジーを起こす。好きなんですよねー。
いわゆるオールドスタイルなテイストを出しつつ、先述した「ホール型っぽくないギミック」も楽しめる。
まさに「いま」と「むかし」の良いところどり!といった内容で満足度が高かったです。
・盛り上がる解説
本作のような難易度高めのホール型とえば、やっぱり解説は大事です。醍醐味。
失敗するチームが多い高難易度公演こそ、解説には力を入れるべきだと思っています。解説というエンタメ。
そういった面で本公演の解説は中々に良い内容でした。
基本客層を考えるとSCRAP以外の解説って盛り上がりづらいんですが、今作はちゃんと盛り上がっていた。素晴らしい。
SCRAP加藤さんが生み出した「本当にそれでよかったんでしょうか?」。
日本の体験型謎解きイベントという文化に一番影響を与えた言い回しだと自分は思っています。あまりにも良い。ここから根本的にゲームが変わったといっても過言じゃない。
失敗による圧倒的悔しさ。成功による圧倒的嬉しさ。感情が二分されて熱狂に包まれる会場。100分以上はあるイベントの最後の最後を締めくくる解説こそ最大の熱狂を生むべきでしょう。ピークエンドの法則ですね。
このような空気を味わうために謎解き会場に足を運んでいるまであります。
で、本作の解説はその熱狂もちゃんと出しつつ、そこをシンプルに「謎解きギミックの巧みさ」で押し切っているのが良いんですよね。
純粋な謎解きの技巧で人の感情を揺さぶれている。実装含めて大変良きでした!
【気になった点】
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