"長編小説 『じゃんだらりんの国から』 第4話 「揺れるすき焼き」"
時は変わって翌日。
父の約束通り、この日の晩ごはんはすき焼きになった。
「わーい!すき焼きだぁ!」
8人兄弟の末っ子、修が無邪気にはしゃぎ回っていた。
「修は可愛えぇのう。紀子も将来はきっと別嬪さんやし、将来が楽しみだなぁ。」
父、貞(さだか)は、嬉しそうな顔をして、子どもたちのはしゃぐ様子や妻のヨシノの顔をまじまじと見つめていた。
「ところで、すき焼きはまだ煮えないの?お肉食べたいよー!」
食いしん坊の皆子は待ち切れなさそうにしながら言った。
「皆子は本当に食いしん坊だなぁ。肉はワシが全部もらうからな!」
「タケシ!独り占めはやめて!」
「やぁだよぉ!」
「こらこら、食べ物のことで喧嘩しない!お前たち、喧嘩ばかりしてると、お父さんみたいに強くなれないぞ!」
「はーい。」
父、貞(さだか)は、警察官であるが、曾て柔道の祖として崇められている、嘉納治五郎のもとで修行した男のひとりであり、その鍛えられた肉体は強靭で、ゲンコツなんか食らったら普通の人間なら、ひとたまりもないだろう。
だが、昨日のこともあってか、子どもたちを力でねじ伏せようなどという気配は一向になかった。
そして、楽しい家族団欒の時間を脅かすような出来事が起こった。
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