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katakana_chan
86.ヘアゴム【ショートショート】
とあるファミリーレストランで、二人の男が口論している。
「外した時の束ねた髪が広がる瞬間が良いんじゃん。纏まってたのが解放されて、綺麗な髪が流れるところが最高だろ」
「なに言ってんだ。髪を結んで変身するところが良いんだよ。お前が想定してるのって、ビジネス一束縛り一択じゃねーか。女の子の髪形はバリエーションが豊富だから良いんだよ。ツインテールにポニーテールに三つ編みに編み上げ、気分やファッションによって変わるのが最高じゃんか」
「出てくる髪形がオタクくせーよ。だいたい、バリエーションなんて要らないの。一パターンだけでいいんだよ。外行きの外套を脱いで、髪を解いてプライベートの顔を見せてくれるのにそそるんじゃん。そこからが本当の二人の時間だろ。まあ、経験ないお前にはピンとこないか」
「経験? ……! あーるし! 経験あるし。てか、お前の話の方が妄想くさいだろ。シたことないから想像で話してるの、バレバレだぞ」
二人の口論は続く。
誰かが落として行ったらしい床のヘアゴム一つからこんなに熱くなれるなんて、男ってバカな生き物なんだなと呆れながら、テーブルのフルーツパンケーキを一切れ口に運んだ。