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42.連絡【ショートショート】

「彼女と連絡が付かないんだよ」
 友人が突然、そんなことを言い出した。
「え、まず彼女いたことも初耳なんだけど。え、いつから連絡付かないの?」
「一週間前から」
 深刻な話のわりに、友人があまり慌てていない。
「なに、お前が振られたって話? 何したの」
「いやー、喧嘩もしてないし、旅行楽しみって話したばっかりだったんだけど」
 失恋話なわけじゃないのか。であれば友人の態度が怖さを感じる。
「そんな急に居なくなるって、詐欺とかじゃないよな? 金貸したりした?」
「特にないなぁ。あんまりお金が掛かる娘じゃないし、プレゼントもせいぜい総額で数万円くらいだし」
 じゃあ違うか。しかしなんでこいつはこんなに冷静なんだ。だんだん腹が立ってきた。
「何かトラブルに遭ってないか? 家は知ってるんだろ、行ってみろよ」
「家は知らないなぁ。そもそも直接会ったこともないし」
 そんなことあるか!? いや、今の時代SNSで付き合って、初デートでプロポーズするカップルもいるくらいだ。そんなこともあるかもしれない。
 知らなかった友人の一面に恐怖を感じていると、彼がスマートフォンを開きながら物憂げに語る。
「はあ。ユーザー増加によりサービス向上のため近々長期メンテナンス予定とは連絡来てたけど。
 早く再開してくれねえかなぁ」
「あ、そういう話?」
 わざとらしい溜息を吐く友人に、軽く殺意を覚えた。

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