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78.トラウマ2【ショートショート】

「俺、特定の女性にはトラウマがあってさ」
 合コンの誘いを持ってきた友人に、彼はそう切り出した。
 予想外の答えに内容を訊き返してきた友人に、彼は静かに答えた。
「俺、高校の時に一度だけ彼女がいたんだ。その彼女はいかにも清楚で大人しそうなタイプの娘だったんだけど、猛アタックしたら付き合えることになって。
 一年くらいプラトニックな交際してたんだけど、ある日彼女がギャル系の友達と話してるのを聞いちゃったんだ。
 実は俺と付き合う前から一流企業の社会人と他校のバスケ部のエースとも付き合っていて、成績が良くて顔もまあまあ良い俺は三番目のキープだったんだ。
 それ以来、清楚そうな美人を見ると裏があるんじゃないかって疑うようになっちまったんだ」
 深刻そうな顔で聞いていた友人は、慰めるように肩に手を置く。
「そうか。辛い恋愛したんだな。
 ――セッティングした合コン相手さ、さっき言ったようにお嬢様大学の面々なんだよ。そんな娘はいないと思うけど、幹事の娘は俺の友達だからさ。その娘経由で裏表の無い娘とくっつけて見せるから、思い出を上書きしてみようぜ」
「ああ、あんな悪女の方が稀だって頭では分かってるんだけど。
 ――そうだな。お前がそう言うなら、頑張ってトラウマを払拭してみせるよ」
 笑顔で決意する彼に、友人は良い笑顔で応える。
「よっしゃ! じゃあ、最高の彼女が作れるように計画練ってくるぜ!」
 そう言って講堂を去る友人を、彼は微笑んで見送った。
「まったく、持つべきはコミュ力の高い友達だな。これで好みのタイプの女の子が邪魔されずに俺に回ってくるんだから」

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