47.横顔【ショートショート】
君の横顔を見つめている。
アイツに視線を向けている君の横顔を、気付かれないようにじっと見つめている。
大学で出会って、一目惚れした。その頃には既に、君の視線はアイツに向いていた。
それから俺は、君を振り向かせるためにあらゆる努力をした。してこなかったオシャレにも気を使い、頻繁に話し掛けて友達になり、君の気を引くためにアイツと親友と呼べる間柄になった。
そうとは判らないように、アイツの印象を下げるようなことも言った。卑怯だとは思ったが、それほど君の目を俺に向けたかったんだ。
そうして念願叶い、今俺は君の顔を正面から見つめている。
「なに、そんなに見て。私の顔に何か付いてる?」
フフッ、と可愛く笑う君を見ている俺は、内心とても冷静だった。
達成感で満足したとか、手に入れてみたら冷めたとか、そうではない。
気付いてしまった。俺は最低なことに、
君の”横顔”が好きだった。