24.猫【ショートショート】
何時の頃からか、猫になりたいと思うようになった。
嫌な上司に媚びることのない、食物連鎖の頂点。
ムカつく客に愛想笑いする必要のない、孤高の強者。
一日一度全力で狩りを行ない、残りの時間を寝て過ごす。気が向いたら縄張りをゆっくりパトロール。
気の合う仲間たちとたまに集会。何をすることもなくだらけて過ごし、気が済んだら解散。
そんな自由な猫に生まれたら、きっと生きるのが楽しかったことだろう。
猫に生まれたらよかったのに、と虚しく考える日々だった。
「でも最近悟ったんだ。こんなんじゃ猫になるなんてできないなって」
愛猫の喉を撫でる。ゴロゴロと甘えた声で擦り寄ってくれる。
「だって、こんなこと考えて悩んでるのがもう、理想の猫像と矛盾してるんだもの」
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?