35.しわくちゃ【ショートショート】
しわくちゃになったシャツを前に、唸る。
縦型洗濯乾燥機がこんなに皺だらけになるなんて知らなかった。ドラム式ではこんなことはなかった。ケチるべきじゃなかったと後悔する。
今日に備えて洗濯しておこうなんて考えるんじゃなかった。アイロンなんて持ってないし、今から買いに行くんじゃ間に合わない。そもそもあっても、多分まともに使えない。
こんな無様を見たら、あいつは呆れるだろうか。それとも心から笑うのだろうか。
止めよう、考えるのは。
さて、このしわくちゃになった数少ないお洒落着を着ていくか、タンスの中の仕事用開襟シャツを着ていくか、それが問題だ。どちらがまだ嫌われる可能性が低いだろうか。
ようやく久しぶりに娘に会えるというのに。
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