~刃は握れない~創作の系譜:番外
刀って綺麗だよね。
研ぎ澄まされて落ちて来た紙すらも僅かな重力で簡単に斬る。
美しさと鋭さ。
それはルノワールなどの描く、たおやかな柔らかさや色調とは違い、
凛とした甘ったれていない究極の美なのだ。
だから、おれは細長い尖ったものが好きだ。
タイトな服が好きだ。
(ゲイが好んで着るピタピタの服とは違うぞ)
長瀬智也が最強のイケメンだとは思ってやまないが、
往々にして切れ長の鋭い眼をした男が羨ましい。
(田島昭宇先生の描く鋭い男の人みたいな感じだ)
ヤドクガエル、ベニテングダケ、有毒な鉱石などにも強く惹かれる。
栗の棘にも大きく魅力を感じる。
毛虫は嫌いだが、サソリは何と美しいのだろうと感じる。
毒蛇ほど美しい。
でも有害そうな山本リンダは受け付けない。
あからさまに色っぽい女は、あからさまで美意識を感じない。
”張り詰めた弓の 震える弦よ その切っ先によく似た そなたの横顔”
”もののけ姫”の歌の一節だ。
間違えれば危うい紙一重の美しさだ。
甘ったれていない真の美しさだ。
アルテミスの様な美しさだ。
甘ったれた美しさは腐敗する。
劣化して懐かしいものになる。
いつも新しく新鮮であるには鋭さや毒が必要だ。
ベーシックで普遍的でおおらかなもの。
それらは何時でも快適だが、大きく何かを、誰かを強く虜にするだろうか?
ジェームスディーンが着ない、白と紺のバスクシャツなど布切れだ。
だけど白のキャンバス地のコンバースはやばいんだ。
マイルドセブンはクソ不味かったしメビウスだなんて銘柄を変えて時代に媚びている。
キャメルは堪らなく美味しくてパッケージも天までいかしていたのにどうして……。
ラッキーストライク、スタンレー、アメリカンスピリット、ハイライト、ピース、ショートホープ、ガラム、
この伝統は守って欲しい。
ジタンの今のはパッケージがダサイから駄目。
新しくとも薔薇の香りのメンソールは大好きだ。
ミニクーパーはやばいけれど、
ミニクーパーを好きな奴らは全然やばくない。
乗るならゴルフに乗れ。
ドラッグスターに乗るならSRに乗れ。
ボルボを選ぶくらいなら四角いベンツかジャガーに乗れ。
おふくろの味だって進化しなければいけない。
おれのお母さんの料理は常に日々美味しくなっているんだから。
おれは料理に自信があるが、
お母さんには最終的には敵わない。
お母さんが家に持って来る料理はやばい。
再現しても更に先に進まれては敵わない。
うちの母ちゃんはやばい。
すべて、
最強である必要など無いけれど、
懐かしい物には最強の資格など無い。
懐かしいビートルズもあれば、
何時の時代も新しいビートルズもあるからな。
ビートルズやストーンズ”だけ”にかぶれたジジイには、
レディオヘッドはクソらしいが、
プログレマニアやポストロックに理解のある柔軟な方々には最高評価だ。
YMOなんて昔から古臭かったけれど、
アンダーワールドだって懐かしい感じになっているけれど、
エイフェックスツインは何時聞いてもやばい。
全てのアートって、
全ての表現って、
やばさなんだ。
奇をてらったハリボテの危なさじゃなくて、
”やばい”ものである。
ビバやばい。
やばい最高。
おれがくたばる時は村正か菊一文字を握りしめながら死のうと思う。
くたばっておさらばするまで、
やばい。