今期の徳島を振り返り…攻撃⑤

次にスペースがうまく使えず、カウンターやベースの部分から前進できない場合…相手にケアされたなかでのその他の攻め手を考えていきたい。

これについて徳島では、先にも簡単に述べたポストプレーとアイソレーションを活用した攻撃が確認できた。

しかしこれらは結果的に属人的な割合の大きなものになり(アイソレーションは質的優位を活かすものなので当たり前ですが)、
移籍によって来期以降も継続していくためには新たな選手の台頭が必要となり、もしくは違うかたちへの変更も考えなくてはいけなくなってしまったのは、降格に伴う大きな痛手となった。

ポストプレーについて

ボールを繋いでいくなかでスペースを先に取れない時等に前進の手段として活用することはもちろん、局面によっては優先的に狙うこともあるプレーだと考えています。

高い位置で相手DFを背負い、味方の目標となって縦パス＝くさびのパスを収め起点となり、後方から押し上げる味方に落としチームを前進させる。
この一連の流れはボールより前にいる守備側にとってはボールと相手を同一視できない瞬間が生まれ(後ろにボール、前に観るべきマーカー)対応が難しい状況に置かれる。

また相手の守備がタイトであれ、背負える選手が居れば(作れれば)ボールの受け手…預け先は確保できる。「フリーがいないからボールを出せない！」という状況を無くせる。

保持や前進に効果的なコンビネーションとなると理解しています。

代表の試合から観るポストプレー

ポストプレーの効力は代表の過去の試合が分かりやすく、柳沢・本田・大迫選手などポストワークの上手い選手が前に居る時に日本のボール保持は明らかに安定し、強みであるパスワークを活かした試合を展開できていた。

特に国内組だけで臨む東アジアE-1選手権で保持がままならず押し込まれる場合が多くなるのは、この部分が大きく影響していると考えている。

日本にはフィジカル的な問題？もあり元々国際試合でこの起点になれる選手の駒が少なく
だからこそ特に南アフリカW杯での本田選手、ロシアW杯での大迫選手の働きは替えの効かない圧巻の出来だった。

両選手とも単純な体の強さだけでなく判断と技術も良い。
間違うと相手が寄せるタイミングで片足立ちになってバランスを崩したり半身から相手の前進を押さえられなかったりするが、
彼らは両足をしっかり地面につけつつ相手に体を寄せ尻を中心に前進を止めたり、強く寄せてこないタイミングではボールを先に触り収めたりして、世界レベルのCB相手にも判断よく起点を作れていた。

徳島におけるポストプレー

これについては徳島も選手獲得の段階から強く意識している様子が見え、
常にリクルートには、起点になれ体を張れるサイズのある選手を狙って揃えてきている印象がある。

そして流れのなかの起点だけでなく、相手からのプレス回避としてGK→FWへの足元に落とすパスも戦術的に組み込んで保持・前進に一役買っていた。

昨期から引き続き今期ここを主に担ったのは垣田選手。彼がJ1でもボールの預かり所としての役割を充分に果たしたのはチームとしてかなり大きかった。

彼はスピードもありサイドに流れてボールを呼び込むことも可能で、幅広く起点を作る動きが効果的に働きチームとしての保持率を上げる大きな要因となった。

また高い位置に起点を作ることで相手のプレスの裏を取ったり手前の中盤にスペースを産む「深さをとる」役割だけでなく、
カウンターの先鋒役としても徳島の攻撃に様々なバリエーションを加えていた。
抜けた穴を埋めるのは簡単ではない。

この部分はどのようなサッカーをするチームでも基本的には必要な要素なので、戦術的に他の何かに代えることは難しいと考えている(ロシアW杯でベルギーがブラジル相手に完全なカウンター狙いの0トップをやりきったりはしたが、あくまでこのようなシステムは相手の分析による構築が占める割合が高く、チームのベースとして据えるのものでない？)

今後徳島でも一美・バケンガ選手という過去の実績がある二人を中心にこの役割は継続していくはず。昨期から所々観られ今期はより機能しているように見えた２トップシステムにも期待したい。
またそこに至るくさびのパスの通り道をつくる動きや三人目が受けるタイミングについても更なる向上を期待している(これについては昨期のほうがスムーズにできていたように感じた部分もあった)。

アイソレーションについて

バスケではお馴染みの戦術。いつの間にかサッカーでも使われるようになった(2010年代後半？元々国として4-3-3を基本システムとして統一しているオランダではウイングを活かす手段として言葉は違えど昔からあったかと思いますが)。
この言葉で検索してもまず出てくるスポーツはサッカーではなくダンスやバスケ。このことからもサッカー界では後発な考え方なのだと感じる。

これはあえて人を特定のエリアに集結させ連携力を高めるオーバーロードとセットで用いられる。
片方に人を集結させ、コンビネーションで崩す意図を持ちつつ、もう片方に現れる広いスペースにてカバーリング効果が薄まるなかでそこに打開力のある個での突破を狙うかたちだと理解している。

徳島におけるアイソレーション

徳島では保持のなかで左にオーバーロードを発生させ、そのなかでいくつかある選択肢のなか右サイドに張り出したワイドを勝負させるというのが昨期から継続して観られた効果的なパターンとなった。

しかし人選は昨期だと藤田選手と岸本選手の使い分けだったが、今期は岸本選手に絞られた。
前への推進力を強く要求されたなかでの起用だろうか。
岸本選手は見事期待に応えカテゴリーが上がったなかでも昨期同様次々とチャンスを作り出した。

果たしてこの穴はどのように埋めていくのだろうか。
またこれまでもそうだが、個で通用しない場合を見越した二の手まで用意しているのだろうか。
個で突破できない＝打つ手がない…ではチームづくりとしてはイマイチな感じはする。

そして岸本選手の移籍については他とはやや違う感想がある。
徳島で個の打開を求められていた彼については、徳島の一員としてプレーすることでサッカーを学び得られるものがもう他の選手よりは少なく、環境に自身の成長を求めるほうがプラスになるのかもしれないということ。
本人が何を思ったかはわからないが、コンバートされ活躍した今が卒業する時期…納得できた移籍に感じている。もちろん降格しなければこの理屈は当てはまらなかったのだが。