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なぜ私は「シン・ウルトラマン」が気になるのか
ヒーローとして、日本中が知っているウルトラマン
巨大な体躯。赤と銀のカラー。両腕をクロスして光線を放つ。ピンチになるとピコンピコンとカラータイマーがなる。空想特撮シリーズ「ウルトラマン」に出てくるウルトラマンを、日本で知らない人はいないだろう。彼はそれほどまでに有名で、その姿は頼もしさを感じさせる。
庵野監督が「シン・ウルトラマン」を製作すると聞いて、一体どんな物語になるのだろうと非常に興味があった。現段階までではストーリーの全容は明かされていないが、登場するウルトラマンの姿は一足先に公開された。
巨大な体躯。赤と銀のカラー。両腕をクロスして光線を放つ。しかし胸には、ピンチを知らせるカラータイマーが無かった。
故・成田亨氏のこだわりのデザイン
ウルトラマンをデザインした成田亨氏のスケッチをみると、体にカラータイマーはない。彼は、流線型の美しい赤と銀のコントラストを全面に載せたウルトラマンをデザインしていた。しかし、実際に番組として放送するにあたり、3分しか戦えないことを表すために勝手にカラータイマーは取り付けられたという。成田氏はこれにかなり不快感を示したようだ、という話を聞いた。
確かに成田氏の描いたウルトラマンは美しい。ここにカラータイマーなんざ邪魔なものをつけたらそれが台無しである。
しかし私は、制作陣の気持ちもわからなくもない。
完全なものは美しい。でも欠けていると面白い。
ウルトラマンはたしかに成田氏のデザインで完成だと思う。余計なものがないぶん、カラータイマーが浮いて見える。だが、この”浮き”が強烈なフックになるのだ。つまり、カッコイイ。
「ウルトラマン」本編では、ウルトラマンと人間の関係性を表立って描くことは少なかったが、最終回はウルトラマンに頼らず敵を倒すという演出がなされた。この段階で、我々は初めてウルトラマンと同一のステップに立つことができた。それは3分しか戦えないこととか、カラータイマーがついていてピンチがわかりやすいといった”弱さ”が垣間見える。負けることに納得できる。
これが完全なウルトラマンならどうだ。少々異質ではないか。完璧なウルトラマンが負けたとなると、もう我々に「何故ウルトラマンが負けたのか」と解釈するすべがなくなってしまう。そういう意味で、あえて完璧なものに瑕をつけたのだろう。
カラータイマーのない「シン・ウルトラマン」。はたして……
ピンチになったことを表す表現は他にだってたくさんある。私は「シン・ウルトラマン」で、如何にウルトラマンのピンチを表現するのか。はたまた別方向での、完璧なウルトラマン像を確立する方法を探るのか。気になる。
別にウルトラマンに冷や汗を流させてもいいと思う。