大人の世界と子どもの世界
SNSで動画が流れてきた。居酒屋のような雰囲気の韓国のお店で、店員の3~40代らしい女性が、パフォーマンスをする。
酒瓶を何人分かのグラスに注いでいくのだが、あの手この手を使って、かなりおもしろく考えられている。振ることでシュワシュワを強くして、穴を開けてまるでビームみたいに酒を注ぐ。
最後に残りの泡が出てくるときに、女性が瓶の細長いところを手で覆い、扱くような動作をすると、客である男性たち数人が盛り上がる。恐らく性的な動作を彷彿とさせるそのパフォーマンスで、酒を注ぎ終わった女性に、男性陣が拍手を送る、という動画だった。
この動画を見たとき、簡単には習得できそうのない動作に、単純にパフォーマンスとしてすごいなと感じたのが最初の印象だった。
しかし、コメント欄や引用欄には、否定的な意見が多かった。「品がない」「汚い」「文化の違い」が主だったような気がするが、気になった意見がひとつあった。私が元のポストに戻れず、一言一句同じ言葉を探せなかったのが悔やまれるが、
「今のSNSがある時代では、大人の世界と子どもの世界を分けて考えられなくなっている」というニュアンスのものだった。
先ほどの動画を子供に見せたいかと問われたら、恐らく100%に近い大人が、「見せたくない」と答えると思う。
でも、大人しか見ていないと仮定したときに、大人を楽しませるパフォーマンスの一部として、あの洗練された手つきの動画を楽しんでくださいとなれば、受け入れられる人はまあまあの数、いるんじゃないだろうか。
いろんな情報が垂れ流しでない時代、こういった大人向けのコンテンツはそれに合わせた場所で称賛されていたのではないかと思う。
それが、棲み分けのしにくい、子どもでも簡単に目に入るSNSに現れたから、嫌悪感を抱く人が増えた。
そういう意味でこのコメントは考えさせられるなあ、と思った。
今は大人と子どものコンテンツの境界が薄くなりつつあるのだろうか。過激だがギリギリ禁止されないラインの動画。これは禁止されていないからといって子どもが見てもいいということなのだろうか。子どものモラルを破壊するような刺激的な動画。性的コンテンツに限らず、暴力的であったり、煽るような言葉遣いで目を引く動画がたくさんある。分別のついた人が見る動画と、見分けがつかない人が見る同じ動画がもたらす結果は果たして同じか。「品がない」と言われるから、大人にも大人向け動画は必要ないか。
情報を選び出す、見つけ出す時代は終わり、目に入れたいわけではない膨大な情報が勝手に流れてくるような時代になった。でもやっぱり大人が面白いと思うものと、子どもが面白いと思うものは違うような気がする。違うものであってほしい。大人になったときに、やっと理解できる世界もある気がする。
子どもには見せられないけど、大人たちには面白いこと。インターネットの海は広い。私の見ていたSNSで見かけたあの否定的なコメントたちは、子どもを配慮して書かれたものだったのか、はたまた、私たち「新世代の大人」のユーモアに子どもと大人の境界がなくなってきているのだろうか。
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