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ーーわたしが息を吹き返した。

眠りから目が覚めたときに一番最初に吸った
冷たい空気は、空気人形だったわたしに
息吹をもたらしました。

やっと息を吹き返した。
やっと戻ってきた。

わたしが長旅から帰ってきたわたしの
額と髪をそっと撫でる。

やっと戻ってきたね、おかえりなさい。

だけど単純に戻ってきたのではなくて
何か進化して、書き換えられて帰還したのね。
そんな風に理解ができました。

この3ヶ月のわたしはほぼ毎日徹夜状態で、
夜になると可愛い顔をしていた皮膚症状が
悪魔のように暴れ出し、
わたしの心と身体と夜を蝕みました。

だからずっと夜が怖かった。

虫のように地べたを這いつくばり
獣のような声で苦悶する、
わたしがわたしじゃなくなる闇夜。

朝になるとようやく眠気が訪れるものだから
起きているのにずっとぼんやり。


わたしは5次元にいる?
それとも3次元にいるの??
仮想現実みたいに夢うつつ。
生きているのか死んでいるのか分からない。

昼間に会う人の瞳を覗き込み、
「ねぇ、わたし今、ちゃんと実在している?」
と内緒で確認をしては安堵していました。

全身火傷のような状態だったわたしの肌は
海の水が鎮火して鱗になり、
そして今、鱗の下から汚れを知らない
未踏の滑らかな初雪が見え始めています。

この新しい肌を持って
わたしは息を吹き返しました。

新雪の肌は未来の物語を
チラチラと煌めき、囁きながら歌います。

꙳ ꙳

7月の爽やかな海辺。

大好きな面々が再集合して
郁美ちゃん良かったねぇ、綺麗だね
と言ってくれました。

わたしを手招きをする人々は、
柔らかな微笑み。

ようやく人の手に触れてもらえるーー。

ようやく、ようやく…。

そんな感動の波が押し寄せて
わたしは思わずその輪の中へと駆け寄る。

人肌のぬくもりをじんわりと感じて
新雪の肌とわたしの心は溶けていきます。

溶けてこぼした一粒の歓喜の涙は
やがて豊かな泉になり
わたしの生涯をきっと、潤してくれるーー

そんな気がしてなりません。


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