【旧:慶学サロン】法規トーーク ラスト回(前半)-日野市立中央図書館
ちーょっと前になってしまいましたが。
4月18日(日)に、ラスト回と称して、法規トーークのライブを行いました!と言いつつ、1時間で終わらせるつもりが結局2時間・・・(どんなスケジュール組みよ・・・滝汗)
慶さんは、別な講義(防火区画)の準備ありだったので、アーカイブ残さないルール、というのもあり、前半と後半に分けて、ざっと振り返りとして、記事にしておきます。
慶学サロンでは、法規トーーク!と題しまして、一級建築士試験に出題される建築作品をピックアップ、その都市計画情報をもとに、建築基準法第3章 集団規定について学んでます。
全7回のまとめのマガジンは下記。
ちなみに ↑ 上記マガジンのトップ画像は、ロンドンのtube。東京メトロの副都心線のデザインの骨格は、ここを真似しているのではと勝手に。
また行きたいっす、大好きなロンドン・・・涙
さて、前フリはここまででさっそく。
■建築作品選定のうらがわ(前編)
・4月18日(日)当日慶さん不在+録画なし
・初回法規トーーク! 金沢21世紀美術館の時に、図書館作品をやってくださいというリクエストあり
で、事前アンケートしました。
はい、複数回答可にしてもらったので、8名で14の回答になってます。笑
いんです、テキトーで。
これまでの復習は不要ということがわかれば。
で、前半、図書館作品。
後半は、ワールド・ツアー兼ねて、都市計画理論と事例にしました。
実質、準備期間は4日ほどですかね・・・慌てましたとも。汗
ライブでもお伝えしたのですが、図書館は、令和2年(最直近の過去問)の計画にて出題なので、今年はねぇ・・・出題はどうでしょうねぇ・・・と言いつつ。
前半は、日野市立中央図書館を中心に、令和2年出題の4作品をご紹介しました。
■ 敷地周辺調査
日野市は、細長い東京都の西側、多摩エリア。
立川のもうちょっと先。
友人の育った街です。
実は、令和2年7月に一級建築士の学科試験でこの図書館の出題があってから、11月だったかな、見学行きました。
その話は、つづけるにっき(受験生時代に書いていたブログ)の方に書いてまして。
自分で言うのもアレですが、ちょっと読みづらいんです・・・汗
【実例見学】日野市立中央図書館の理念 その1 その2 おまけ
さて。
日野市と言いつつ、立地は豊田駅から徒歩5~10分?かな。
この豊田駅南口一帯は、土地区画整理事業が施行中です。
その中で、この中央図書館が好立地なのは、「気軽に立ち寄れる場所がいい」と選定されたんだそうです。初代館長さんである「前川恒雄氏」をを始め、市民の熱意が政治を動かしてる感じですね。
この日野市立中央図書館が建設されるまでの誕生秘話を知ると、もう、涙なくして・・・(大げさ)
現地、国分寺崖線という、多摩川が削った崖の突端に建ってます。
図書館が建っているところは、元神社の境内だったとか。
こんもり見えてる森が国分寺崖線の一部で、湧き水あります。
湧き水あったから、神社できたぽいですけどね。そこまでの経緯はたどってませんが・・・
ところで。
今、2021年から、この「駅至近の好立地」や「試験で出題されたキーワード」を読んだだけでは、サッパリ「?」かなと。
まずもって、貸出し中心?駅から近い?え???どっちも当たり前ちゃう?って、思いませんか。
駅から近い図書館、全国にたくさんあります。
なんなら、駅から近いどころか、駅舎(!)に設けられた「交流拠点としての図書館」もたくさんあります。
なので、
建物の説明をする前に、時代背景・建設までの経緯を説明いたしました。そうでないと、キーワードが理解できないし、記憶に残らないかなと。
1.一級建築士試験計画科目における建築作品1つ目
お題:日野市立中央図書館
■ 出題的特徴・キーワード
知らなきゃ、へー?それで?で終わりかと。
私も、現地行くまでそうでした。
こんなすてきな図書館だったとは。
■ どうしてこうなった?という経緯
どっからどう書きますかねー
つづけるにっきに書いたものをコピペしました。笑
今の身近な図書館と、全然違う雰囲気ですよね。
インタネットがかなり普及した今、所蔵資料検索は、自宅からでもできます。貸出しの手続きも、貸出しカードさえ作っていたら、借りる側はそうたいへんでないです。
自動読み込みで、貸出し手続きできる機械あるし・・・
■ 図書館という行政業務がない世界からの始まり
前川恒雄氏が初代日野市図書館館長に就任された当時(昭和40年、1965年)、日野市には図書館がなかったそうです。
だから、1台の移動図書館(車に本を乗せて2週に1回市内を巡る)から始めたとのこと。
この熱意にあふれる前川館長は、市民がその必要性を感じないままに、図書館が「立派なハコと大量の眠れる蔵書として用意され、実際ほとんど使われない」という事態に陥るのは避けたかったと。
また、イギリスに留学されて、あちらの図書館機能を学んだ経験がおありだった、ということも、日本の図書館の未来を考える際に多分に影響を受けているのではと、著書を拝読していて思います。
いずれにしても、初代館長就任後、まず、市民の一人ひとりに、本を読むという楽しさや、書籍から知識を得ることがどんなに重要なことかを感じてほしくて、移動図書館でそれを始めたと。
2週間に1回の市内巡回は、実際大人気になったそうです。移動図書館の車が来ると、お父さんお母さんと子どもたちがわらわらと走ってきて、嬉々として本を返し、また新しく本を借りていくと。
■ 気軽に立ち寄って、本に触れてほしい
そんなところからの始まりで、中央図書館が計画されたのが、移動図書館の業務が始まってから8年後。
それまで、東京都から払い下げしてもらった都電を改修して図書館にしたり、使われなくなった施設を図書館に改修したり。お金のないなかで、分館が一つ、また一つと増えていったそうですが、8年目にしてついに「今の図書館はぼろぼろだから、ちゃんとした図書館がほしい」という要望が市長のもとに届いたそうで。
■ L型のワンルーム誕生秘話
前川館長は、建築家を選ぶ時に、これから図書館行政を変えることになる建物を設計してくれる設計者を探して、あちこち見に行ったそうなんですよね。それで
当時、横国大の佐藤仁先生が推して、東京経済大学の旧図書館(現大倉喜八郎 進一層館、構造:木村俊彦氏)を見学に行き、その設計が気に入って、「(前川國男事務所出身の)鬼頭梓氏」が選ばれると。
図書館の理念を、空間に具現化してくれる建築家。
まさに、前川館長の熱意のたまものですね。
そして、「L型のワンルームに、成人開架と児童開架を平面で振り分ける」すなわち、親子で来てもお互いになんとなく気配を感じながら本を選べる、という配置が生まれたと。
その辺りの話は、こちらや、1973年8月の新建築に掲載されています。
すでに、本を読む楽しさを移動図書館で知った市民のみなさんは、親子で本を借りに来て、お互い好きな本を借りて帰れると。
見学に行ったときも、ひっきりなしに来てました。親子連れが。
■ 自習室・閲覧席は誰のもの?
これも面白いエピソードが。
当時自習室・閲覧席を占めていたのは、受験生。
彼らは、受験勉強ばかりして、図書館の本を読んでるわけじゃない、ってことだったそうで。笑
今も変わらないんじゃないかな・・・
図書館に勉強しに行きますもんね・・・汗
建設当初、当の受験生からは、勉強場所を奪われたということで、相当反発があったそうですが、前川館長自ら一人ひとり説得していったとのことです。
■ 館外貸出し
当時、個人に「館外」貸出しすることは、とてもハードルが高かったとのことです。
戦争で負けて、社会的にも個々の市民も生活するのが精一杯。貴重な資料を持ち出されて紛失されたら・・・ということだったそうです。
国会図書館や東京都中央図書館は、今現在でも館内閲覧のみで館外の貸出しサービスはありませんが、当時は固定資産税の支払い証明書や、会社員である証明書やなにかがないと借りられなかったし、手続きも相当煩雑だったとのことです。(マジですかー!?)
それで、気軽に立ち寄って、貸出し手続きも簡素で、っていう図書館が生まれてきたわけですね。
改めて、建築作品として、というより、図書館行政とその当時の社会に相当な衝撃を与えた?変革を起こした?、その現場だったということみたいなんです。私も、鬼頭梓氏の著書を全部読んでるわけでないので、言い切れないところがありますが(あかん)。
もちろん、建築作品としても、とても重要ですね。
この図書館に影響を受けてる図書館が、全国にたくさんありますゆえ、身近な図書館を思い起こしてもらえばわかるかと。
日野市中央図書館の平面図を確認しながら、1階エントランスホール入ってL型の成人開架と児童開架、閲覧席の少なさや自習室がないこと、そして成人開架の上の吹き抜けの雰囲気。
2階のレファレンス室と管理諸室、地下の書庫等を確認しました。
国分寺崖線の高低差を利用した地上2階地下1階の図書館になってるので、地下一層分は半分埋まっていながら、低い方からそのまま車両が出入りできるような断面構成になってます。この辺りの崖の使い方(?)は、東京経済大学の旧図書館とかぶるものがあります。
■ 建築概要、都市計画情報
長いので略します・・・
2. 一級建築士試験計画科目における建築作品2つ目
お題:金沢市立玉川図書館
■ 出題的特徴・キーワード
こちらも、図面を見ながらですが(公式サイトのフロアマップ)、
もともとタバコ工場だったものを、一部保存して資料館に、そのほかの部分は壊して新しく図書館にしています。谷口吉郎氏・吉生氏親子の合作です。
ここで「気軽に立ち寄りやすい」というキーワード来ますけども、日野市立中央図書館が1973年、金沢市立玉川図書館が1979年竣工なので、影響受けてそうですよね。
きれいに、開架部門とその他の部門が分かれていて、南側の玉川公園から中庭を突っ切ることもできるようになってます。
ガラス張りの明るい閲覧席は、公園からも入りやすい雰囲気ですね!
メンターのkakeno先生も参加してくださってたんですが、どんな雰囲気の図書館か、聞く時間がとれませんでした・・・泣
あとで伺ってみたところ、昔はよく行ってたんですが、最近新しく「海みらい図書館(設計:シーラカンス)」ができて、よくそっちに行ってるので、玉川図書館の方には最近行ってないんですーということでした。笑
3. 一級建築士試験計画科目における建築作品3つ目
お題:朝霞市立図書館本館
■ 出題的特徴・キーワード
この図書館の竣工は、1987年。
バブル絶頂期、ですね。
フロアマップは、こちら。
令和2年の実際の出題では、朝霞市図書館本館という文で始まり、以降の内容が日野市中央図書館になってました。
試験元は、こうゆう出題の仕方するんですよねーっていう・・・
日野市中央図書館を知らないと、ちょっと見抜けないかと・・・
(私は逆に、「貸出を重視した」というキーワードに、あれ?と思ったわけですが)
日野市中央図書館が建った1979年と違って、公共施設に予算がかけられる時代だからこその、高機能化。
延べ面積も大きくなり、開架冊数も増え・・・
こちらも、公共施設に予算を割いてくれない今現在からしたら、うらやましい限り・・・汗
もともと図書朗読や団体での研究用の集会施設が、地域交流の場と変わってきてるところも、なるほどな変化ですね。
4. 一級建築士試験計画科目における建築作品4つ目
お題:苅田町立図書館本館
■ 出題的特徴・キーワード
福岡県京都郡苅田町の図書館で、1990年竣工です。
zoomのチャットで、どれがどれやら、もう覚えられない・・・という発言ありましたw
わかる。
全部覚えなくていいと思いますwww
こちらは、朝霞市図書館本館からさらに遅れて1990年竣工です。
日野市中央図書館の「貸出し重視」の理念からどんどん変わってきて、「図書館で長時間過ごすこと」が重要視されてきてると。
畳スペースとか、屋外読書スペースとか、ほんと最高ですね~
もちろん、これまでの機能も充実していって視聴覚資料の拡大や、インターネットを始めとした高度情報化社会に対応していく流れは確実にあったと思います。
東京にある国会図書館の蔵書スペースが不足してきて、計画の問題で頻出!である国立国会図書館関西館の建設が検討され始めたのもこの頃(実際の竣工は2002年)。
国、都道府県、市町村の各図書館の役割分担が整えられたりとか、図書館もどんどん変わってってるんですよね。
5. 一級建築士試験計画科目における建築作品5つ目
お題:ぎふメディアコスモス
■ 出題的特徴・キーワード
伊東豊雄氏設計ですね!
フロアマップはこちら。
ついに、完全複合施設化の中の図書館として出題です。笑
複合施設としての図書館、という意味では、武蔵野プレイスの方がよかったと思うんですが。汗
図書館の基本的な機能は概ね変わらないものの、平面図!!!
各機能の領域がぼんやりとしてて、入り組んだ形で建物内に散らばっているのが、フロアマップからも見てとれるかと。
以上です。
日野市中央図書館からスタートして、図書館の遍歴を知る機会にもなって、しかも竣工年代順になってるしで、よい出題だなーと。
いや、受験する側からしたら、知らんがなだとは思いますが・・・汗
日野市、朝霞市、苅田町の図書館の平面図については、↓ コンパクト建築設計資料集成に載ってます。
お高いですけどね・・・
建築作品は、ほぼここから出題されてるのと(もちろん、出版された2005年以前の作品のみ)、製図でも使えるので、ぜひ。
後半の、海外都市計画事例編は、また別で。
■本日のトップ画像
ドンピシャ、日野市中央図書館です。
外から成人開架の方を眺めてる感じですね。
開架書架とガラスの大開口、そして吹き抜け、欅の木陰。
今となっては、こじんまりした建物ではありますが(延べ面積2,220㎡)、当初は延べ面積2,500㎡で計画して、市長に反対されて2,000㎡!と言われ、間をとったとのことです。
あと、開館当初から、鬼頭氏ご本人により耐震改修?と、一部増築してるようです。
いいお天気だったので、欅の木陰がめちゃくちゃ気持ちよかったです。湧き水スポットの水量も結構あって、きらきらしてました。
機会あったら、近代図書館・図書館建築の原点となった、この赤レンガのすてきな図書館を訪ねてみてください。