アメリカ縦断ぼっち旅 17日目 人生初のスウェットロッジ
シャスタ最終日
今日の深夜のアムトラックの予約も済んだ。
朝の散歩で山を見に行く。大きく深呼吸、名残惜しいが次に進もう。
美味しい朝食を、またしてもお腹いっぱい食べてしまった。スウェットロッジ前は控えめに、と言われていたのに。美味しくて止まらなかった。
しばらくしてスウェットロッジの支度にかかる。
初めてで全くわからないので、参加する方に質問しまくって心構えや服装を整える。
汗をたくさんかく、露出は少ない方が良い、下着もつけない方が良い…なるほど。
昨日の温泉からシャワーも何も浴びていない。気づけば足のスネだけが鱗のようになっている。
体の悪いところが反応が出る、と聞いてたけど、スネって何だろう…。汗がしみないことを願う。
そろそろだ、と聞いて宿の庭に出る。
テントのようなものが建てられ、その近くでは大きな炎で石を焼いている。
皆徐々にそこに集まる。
歌や太鼓が響く。
とても澄んだ、綺麗な歌声だ。
それぞれがタバコの草を左手でひとつまみ取り、額に当て、願い事を唱えてからその火に投げ入れる。
燃える炎を見ているだけなのに、
歌が始まったら涙が出てきた。
この旅に来る前、私は流産した。
炎を見て暖かさに触れていると、突然その時の悲しみが溢れてきて、涙が止まらなくなってしまった。
手術から半年も経ってるし、すっかり気持ちの整理がついていたと思っていたのに。
まだ後悔や悲しみが残っていたことに、自分で驚く。
準備が整ったところで、テントに向かう。
入る前にセージの煙で清めてもらう。
テントの中は相当な熱さになるので、慣れてない人は入り口に近い方が良いと言われ、迷わず入り口近くに座る。
熱々の石が入る。水を張ったバケツも来た。
メディスンマンが歌い出す。
扉が閉められて真っ暗になる。
そして参加者は目を瞑る。
焼けた石の上に水がかけられる。
スチームサウナ状態。
歌と共に掛け声が響く。
獣のようだ。まるで人ではない。
この中は今、人知を超えた空間だ。
これは、目を開けてはいけない。
人が見てはならないものだ。
時々みなで手拍子をする。
彼らが何を言っているかは分からなかったけれど、涙が止まらない。
そろそろ熱すぎるかなと思った頃合いに歌が終わり扉をあけ、外から石と水を追加する。
その間メディスンマンは横になり、じっとしている。それが、張り詰めた空気や緊張感を和らげている感じがして、なんだか愛しい。
そして、また入り口が閉められる。
ひとりの女性が激しく嗚咽している。
その頃には私の涙はすっかり止まっていた。
少しずつ心が軽やかになっている。
一呼吸ごとに、鼻から吸い込む熱気はまるで獣のように激しく、肺を、体の中を巡る。
獣が、私の中のいろんな感情を食い、焼き尽くしているような感覚だ。
目を瞑っているからこそ、常識では考えられないイメージが、世界が、暗闇に拡がる。
3〜4回繰り返しただろうか。
汗だくだし、涙と鼻水とでもうぐちゃぐちゃ。
ついに儀式は終わってしまった。
テントを出たあと、ネイティブアメリカン達とハグをし合う。
とても、暖かかった。
若い男性たちは庭のスプリンクラーを頭から浴びている。
いろんなものが抜け落ちた気分。
しばらく心と体がふわふわしている。
いろんな出会いがあってご縁が繋がって、偶然にも参加できたスウェットロッジ。
やっぱりこれに参加するために、導かれていたんだと思った。
自分の中の、ずっとモヤモヤしていた気持ちや、昔の辛かったこと、忘れたと思っていたけど塞いでいただけだった気持ち、いろんな感情が癒されて、救われた気持ちになる。
汗だくの体が冷え始めてきて、ふと現実に帰る。
シャワーを借り、すっきりしたところで、昨日の彼が行きたいところに行こう、と言ってくれた。
迷ったけれど、キャンプできなかった名残惜しさもあり、パンサーメドウズにした。
道中、車の中でいろんな話をした。
彼は、言葉を選んで控えめに自分のことを話し出す。
話を聞けば聞くほど何でもできるスーパーマンで、成功していて、とても素敵な人で、悩む必要など全く無いんじゃないかと私は思った。
けど、それ故のモヤモヤがあるそうで。
何事も高水準でできてしまうからこそ、突き抜けた感や「やったぜー!」感をあまり感じられないようなことかな、と、そんなふうに私は思った。
私はできないことの方が多くて、劣等感あるし、だからこそ何かが出来た時の喜びや達成感が大きいのかもしれなくて、それはそれで幸せなことなのかもしれない、と思ったり。
どんな成功者でも大富豪でも地位の高い人でも、皆んな同じ人間で、それぞれに葛藤があったりして、幸せや、満たされる状況は人それぞれで。
だから他人と自分を物差しで測って比べることは、なんというか、意味のないことなんだと、話しながら思った。
一週間ぶりのパンサーメドウはもう秋の雰囲気。
人も少なく、自分のペースでとてものんびりできた。
うん、これで思い残すことはない。
宿に帰って荷造りを終える。
夜にシャスタでクリスタルボウルの会があるよ、と誘って頂く。
これも知らない世界なので、参加することにした。初体験だらけだ。
まだ日が高い。
マクラウドの街を歩いてみる。
近くのカフェでガーデンウェディングしている。
幸せのおすそ分けをありがとう。
お土産やさんを覗く。
気づけば自分のお土産しか買っていない。
この町は緑に溢れて、素朴ながら美しい。
のんびりと町を味わって、夕飯を済まし、荷物を車に積み込む。
宿を出る前に、オーナーさんに会うことができた。
「あなたはとてもヘルシーなエネルギーね。」
と言ってもらえた。
肉体的に健康で丈夫で、60ℓザックを背負って3時間とか一人で歩くからかな?と思ったら、もっと深いところで私を見てくれていたようだ。
あなたなら大丈夫、そう暖かく応援してくれているような気がした。
この宿はリピーターが多くて、オーナーさんのことを母のように慕うお客さんが多い理由がわかった気がした。
最後にハグをしてもらう。
他のお客さんからも暖かい言葉やギフトを頂く。
困ったら連絡してね、と連絡先も頂く。
胸がいっぱいになる。
前に、旅先で良くしてもらうことが多いのは、自分が危なっかしいから助けなきゃ!と思われるのかなと、書いたけど。
オーナーさんが言うには、どうやらそうではないらしい。
ヘルシーなエネルギーというところが鍵らしいのだけど、スピリチュアルに詳しくない私には、まだよく分からなかった。
また遊びに来ます、と言って車に乗り込む。
今からシャスタでクリスタルボウルの演奏会だ。
クリスタルボウルやパワーストーンを販売しているショップの中に続々と人が入る。
会場には所狭しとさまざまな色形をしたボウルが置かれている。
貴重な鉱石でできているものもあり、どれも大変高価。
一人の女性が、それぞれのボウルの説明をしながら慣らしていく。
頭に響くもの、腹に響くもの、音色もさまざまだ。
…私には正直良さが分からなかったけど、これはハートに響くのよ、と手に乗せて鳴らしてもらったローズクォーツのは胸が響いたのがよくわかった。
皆と別れて、ダンスミュア駅まで送ってもらう。
送ってくれた彼は、夜中で待ち時間がまだ2時間あるから心配してくれたけど。
この田舎町で一番危ないのは熊だと確信していた私は、ケロっとしていた。
何かご縁があるような気がして、連絡先を交換する。
今までたくさんありがとう。
手を振って別れる。
さあ、次はどんな出会いが待っているのだろうか。