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科特隊基地をつくる【第27話】発着棟の鉄骨トラスの塗装考

【初期の発着棟は2色で塗り分けられていたのか】

発着棟のエレベーター昇降とハッチ開閉の連動はなんとかなったので、以前作っておいた鉄骨トラスを組み合わせて発着棟の外形を整えた。
8面ある鉄骨トラスのパネルが、どれもぴったり合わずに現物合わせというか、現物合わせられない状態でなかなか大変だったが、ようやく形になった。

鉄骨トラスの切り出しが正確ではなかったようで調整に手間取った。もう少し手を入れるつもり。

「ようやく塗装だ!」と意気込んだのだが、ここで新たな疑問が...。

鉄骨トラスの塗装は、初期状態では赤とグレーの2色で、ブルトン登場回(第17話)以降は赤一色になった説明されることが多い。
しかし本当に、初期の鉄骨トラスは2色で塗り分けられていたのだろうか?

例えば、ネロンガ登場回(第3話)のジェットビートルの発進シーンで、発着棟がズームアップされるのだが、注意深く見ると、確かに鉄骨トラスの横桁は一段ごとに赤と灰色の2色で塗り分けられているが、斜桁は茶色のようだ。縦桁も灰色の部分と茶色の部分があるように見える。

なぜ、こんなふうに塗り分けられているのか、ちょっと考えてみた。

もし赤・白2色の塗り分けなら、航空法で定められた航空障害標識と考えるのが自然だろう。ただし、塗り分けの義務があるのは60m以上の高い建物で、発着棟の高さはたぶん20m程度。そもそも隣接する傾斜棟や逆錐棟のほうが高いし、初期の傾斜棟に航空障害灯(と思われるアンテナ)があるのだから、発着棟を2色で塗り分ける必要はない。そもそも、航空障害標識は赤白の指定 *1 だから、航空法に従ったわけではないはずだ。

航空障害標識で塗り分けられたガントリークレーン。レベル 1/110 Jupiter-C(筆者制作。制作記事はこちら

ヒントになりそうなのが、ケロニア登場回(第31話)でのムラマツキャップの「この建物には、外部からのふいの攻撃に備えてあらゆる熱線、光線を阻止する特殊な合金が加えてある」というセリフだ。
発着棟の鉄骨トラスにもこの特殊合金が使われていて、その表面を保護して劣化を防ぐために、鉄骨トラスの部位ごとにそれぞれに特性に合わせた特殊塗料が塗ってあった、という設定はどうだろう(ちょっとムリかな)。

まぁ、塗り分けの理由は不明だが、2色ではなく、赤・灰・茶の3色には見えるのは確かなので、劇中の映像を参考に塗っていくことにしよう。

それから、もうひとつ疑問がある。鉄骨トラスの基部の構造だ。

初期の科特隊基地は、発着棟を周回スロープが取り巻いているため鉄骨トラスの基礎がどうなっているのか劇中の映像では確認できないが、模型の原型であるペーパークラフト *2 では、コンクリートの打ちっぱなしの地面から鉄骨トラスがそのまま立ち上がっている。
でも、基礎部分がないのはどうもしっくりこない。鉄骨トラスつながりでいえば、東京タワーはコンクリート製の巨大な基礎で支えられているし、八角形の平面プランつながりでいえば、法隆寺の夢殿は二重の基壇の上に建っているのだから。

注目したいのが、ゼットン登場回(第39話)だ。基地のレイアウトが大きく変わり、周回スロープもなくなっているため、二重のコンクリート製の基部がはっきりと映っている。
初期の発着棟はコンクリートの打ちっぱなしの上に建てられているのに対し、ゼットン登場回の発着棟は芝生の地面に建っている。基礎の構造が大きく変わったという可能性も考えられるが、模型では基部があったという設定でつくっていくことにしよう。


*1 航空法は2000年に改正され、昼間障害標識60m以上の建物だからといって必ずしも赤白で塗り分ける必要はなく、基準に従えば他の色を用いることもできるようになったようだ。
*2 中村宏治 著、円谷プロダクション 監修、『ウルトラマン超兵器大研究 「科学特捜隊基地〈初期型〉」超精密ペーパークラフト付き』、マイナビ、2013/9、48ページ


【第28話】 につづく
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