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一生。

ある夏の日
ボクは生まれた
明るい陽射し

人生を謳歌するため
みんなとは違う
そういう生き方選んだ

冒険というより
はみ出し者

昼下がり
汗びっしょりの
女学生たち
歩きながら
アイス食べてた

話しも弾んで
楽しそう

どんどん近づいて
すれ違う瞬間

誰ともなく
悲鳴が上がる

恐怖に慄く
大きな声
ぎゃああああああああああ


どうした?
どうしたの?

まわりにいた
男子学生も集まる

「あ、なんだぁ虫かぁ」

一番背の高い
カッコイイ男の子が
笑いながら
踏みつけた


痛い


内臓が飛び出し
苦しくなって
悶えた


「わ。汚ったねええ」

イケメンは女学生たちと
武勇伝語りながら去っていく


ボクは踏まれた身体を
捩りながらもがく

暑い地面に身体が干上がる
諦めたらあダメだ


自力で木陰まで
何とか辿り着く

最初に蟻が寄ってきて
ボクの内臓を眺める

垂れ流れる
体液の匂いに
蜘蛛がひらひら
舞い降りて
ボクのそばに
糸を垂らしてる

ダメだ
逃げなきゃ

もう目の前が
ぼやけて
よくわからない

苦しいよ
足も捥げて
どこかに失っていた

かあさん
とおさん

もう会えないな
ボクはここまでなのかな


喉が渇いて
動くこともできなくなって

カラスが近くで
羽ばたいた

あぁダメだ

気が付くと
黒いくちばしで
右へ左へ叩きつけられ

内臓が飛び散った
誰かたすけてください

痛いよ

遠くで蝉の鳴き声が聞こえる

ボクはどんどん
くちばしで叩かれる

もう何もわからない

楽しい一日だったな
生まれたとき
あの場所にいたら
よかったかな?

帰りたいな
空が青くて綺麗だったな
木々の緑に風が吹いて

素敵な葉づれの音だったな
ボクは誰かの食欲を満たして

今度はどこに生まれるのかな

今度こそは
生きたいな

今度こそは
後悔しない生き方しよう


楽しい
一生だったな
幸せだったな
生まれてこれて

また生まれたい
命あるものに




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伊藤ぱこ
読了ありがとうございます 世界の片隅にいるキミに届くよう ボクの想いが次から次へと伝播していくこと願う 昨年のサポートは書籍と寄付に使用しています 心から感謝いたします たくさんのサポートありがとうございました