【メンバーインタビュー③】まんまる薬局松岡社長
PA-C-MANプロジェクトによる社長インタビュー第3弾!
今回は、東京の板橋区・葛飾区・武蔵野市を拠点に、個人在宅に特化した薬局を4店舗展開する【株式会社hitotofrom】の松岡社長へインタビューさせていただきました。
本記事では、二人制で訪問する"ボランチ制"を導入した経緯や、チームに熱狂を生み出す松岡流のチームづくりについてお話を伺いました。
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株式会社hitotofrom 松岡光洋
鹿児島県出身。幼少期からサッカー選手を目指し、小中高大とサッカーに明け暮れる日々を過ごす。大学卒業後、佐賀県鳥栖市をホームとする「サガン鳥栖」に入団するも、怪我も重なり契約解除に。その後、様々な出会いがあり、一薬局の調剤事務を経て、2018年に株式会社hitotofromを設立。個人在宅に特化した「まんまる薬局」を都内で4店舗運営している。
▶︎株式会社hitotofrom公式HP:https://hitofro.com/store/
サッカー選手を目指していた過去。
仕事のはじまりは偶然の出会いから?
水)松岡社長は、元々調剤事務の仕事をされていたんですよね。
松)僕は元々、薬局で働きたいとか社長になりたいとか思っていたわけではなくて、サッカー選手を目指していたんです。それだけを考えて生きてきたので、怪我をしてサッカーができなくなったときは大袈裟じゃなく「人生終わった」と思いました。もうカーテンを開けて光を浴びるのすら嫌なくらい気持ちが落ちちゃって(笑)。
薬局で働きはじめたのは、ある調剤薬局の社長に誘われたことがきっかけです。当時勤めていたアルバイト先の常連さんで、「よかったらうちで働いてみないか」と声をかけていただいたんです。
「在宅医療こそ薬剤師がやりたい仕事」
調剤事務として働く中で、気づいたこと
水)薬局では何年くらい働いていたんですか?
松)23歳から30代前半まで、約8年くらい働いていましたね。でも心の中でサッカーを続けられなかったことをずっと引きずっていて。だからこそ、サッカーとはまったく関係のない仕事をしたかったんです。
水)そこからどんな経緯で今のお仕事に就かれたんですか?
松)働いている中で、一緒に働いている薬剤師の姿を見て気づいたことがありました。外来も在宅もやっている薬局だったんですが、薬剤師が話すのは在宅の患者さんのことばかり。勤務中はもちろん、休憩時間でも「あの人にはこうしたほうが良かったよね」と薬剤師同士で議論してて、純粋に在宅の仕事をしているときのほうが楽しそうに見えたんですね。その様子を見て、「在宅医療こそが薬剤師のやりたい仕事なんじゃない?」と思って。それなら在宅に特化した薬局をつくろうと、立ち上げたのがまんまる薬局でした。
水)薬剤師ではない松岡さんならではの気づきだったんですね。1店舗目の開局は2018年とのことですが経営は順調でしたか?
松)前の社長にも言われていたのである程度覚悟はしていたんですけど、在宅だけだとやっぱりうまくいかなくて…。ひどいときは会社の残高が50万円を切るほど絶望的な状況でした(笑)。
水)50万ですか…。そこからどのように持ち返したんですか?
松)どうしたら状況を打破できるかひたすら考えて、患者さんに直接アプローチできないなら地域へアプローチしようと思いつきました。具体的にいうと、薬剤師が直接居宅支援事業所に挨拶にまわり顔を売ることからはじめたんです。今では色んな薬局がやっていますが、当時は珍しかったんじゃないかな?
水)今も薬剤師が自ら?
松)今も薬剤師が定期的に挨拶に行っています。報告書も薬剤師が直接持っていきますし、営業活動というよりはもっと日常的な"挨拶"のようなイメージです。信頼関係を築くには、日常の中での接点づくりが大切なんですよね。
薬剤師が価値を発揮できる環境づくりを。
まんまる独自の「ボランチ制度」
水)まんまるといえば、在宅訪問を2人1組で行う「ボランチ制」が特徴的。この制度にも調剤事務だった松岡さんの考えが反映されているんですか?
松)調剤事務を8年やっていたので、患者さんが調剤事務に求めることはある程度理解しているつもりです。外来の場合は、患者さんに気持ちよく薬を受け取ってもらうためにも受入対応を怠らないこと。ファーストコンタクトでマイナスのイメージを与えると、その後の服薬指導にも影響が及びます。笑顔で迎える、処方箋を両手で受け取るなど、最初のアクションはすごく重要なんですよ。ボランチ制を取り入れたのは、どんな環境でも薬剤師がバリューを発揮できる環境をつくりたかったからなんです。
水)どんな環境でも薬剤師がバリューを発揮できる環境…というと?
松)まんまるは在宅に特化した薬局なので、当たり前ですが薬剤師が患者さんのご自宅に訪問するというスタイルがベースなんです。でも人間同士なので当然相性もありますし、おおらかな患者さんばかりではありません。水谷さんもガラの悪い患者さんの家に一人で行かないといけないとなるとビビるでしょう?
水)少しビビります。
松)在宅は患者さんにとってはホームだけど、薬剤師にとってはアウェイなんですよね。前職時代にそれを実感した出来事もあって…。女性の薬剤師が訪問先でひどく怒られたと大泣きして帰ってきたことがあったんです。道に迷って30分遅れて到着したら、患者さんの息子さんがすでにお怒りで。「薬持ってくるだけやのになんでこんなに遅いんや」「薬剤師なんか配達するだけやろ」と。僕は泣いて落ち込む様子を受付で見ていました。
後日、その患者さんを再訪問する機会があったんで、「僕もついていっていいですか?」と提案したんです。事務が一人減ると困るのはみんな知っていただけど、薬局長が「ぜひついていってくれ」と言ってくれて。二人で患者さんのお宅に訪問しました。
ついていくと言ったものの内心はヒヤヒヤしていたんですが、息子さんが僕にはすごく優しくて。女性薬剤師も「態度が全然違った」と話していて、こういったサポートというか、アウェイな場所に臨むならこちらも体制を整える必要があると感じたんです。一人だとリスクもあるし、薬剤師がいらないことで悩んで本来のバリューを発揮できないなんておかしい。調剤事務の一般的な仕事はもちろん、もう一歩先に踏み込んで、薬剤師を本質的にサポートすることが大切だと僕は思っています。
水)それがまわりまわって患者さんのためになるんですね。ボランチという職名はサッカーからきているんですか?
松)ボランチは後からつけた名前です。ポルトガル語でハンドルという意味で、サッカーだと攻めも守りもするポジション。ボランチは薬剤師のサポートはもちろん、患者さんと薬剤師を、そして他職種と薬剤師をつなげる大切な仕事です。
薬剤師だけどロジカルだけじゃないふたり。まんまる以外の2社の印象
水)PA-C-MANの話にうつります。PA-C-MANは松岡社長の他にくるーずの芳川社長、パナプラスの藤井社長と立ち上げたプロジェクトですが、お二人の印象はいかがですか?
松)芳川さんは勢いがすごくて常に元気。自分たちの色を出すことを大切にしていて、まんまるを立ち上げるときもくるーずは参考にしていました。起業すると薬剤師というラベルを剥がす方も多いと思うんですが、芳川さんはあえてラベルを貼って多方面に挑戦を続けている。信念を持って進み続けていて、こんな薬剤師いるんだって常に驚かされています。
水)くるーずさんは個性が溢れ出ていますよね。藤井社長はどうでしょう?
松)藤井さんは共通の知り合いあいがいて、経営者が集まる場ではじめてお会いしました。その場で藤井社長は参加者向けにプレゼンをしていたんですが、スライドもすごくおしゃれで!良い意味で薬剤師っぽくないなと思いました。あと、クールに見えてすごくアグレッシブだと思います。
ふたりの共通点は、論理も感情も併せもっているところですね。薬剤師の世界はロジカルな人が多いんですが、ふたりは論理と感情を行き来しながら物事を見ているなと思います。
水)松岡社長はどんなタイプなんですか?
松)僕は感情と実践タイプ。「先陣を切っていくぞ」みたいな本能型の武将のような人間です(笑)。
学生にはたくさんの経験を積んでほしい
水)PA-C-MANサミットは、将来を考えはじめた4〜5年生の薬学生を対象としたキャリアイベントです。参加したいと思っている学生さんにメッセージをお願いします。
松)学生の皆さんには、とにかく経験を積むことが大切だと伝えています。経験は見えづらいけど、時間がある今こそ多くの経験に時間を使って欲しい。前のめりに色んなことに挑戦する姿勢って大人の心も動かすんですよ。「この子は未来が明るいな」「この子は信頼できるな」と思える。
誰に何を言われてもいいから、恥ずかしがらずに自分のしたいことを口にして欲しいですね。学生のうちから信頼を得るための努力をしておくと、社会人になってからの成長スピードも早いと思うので。経験を積む場として、ぜひPA-C-MANサミットを活用してほしいと思います。
interview_パナプラス薬局 水谷
writing_くるーず薬局 山本
11月9日・10日
「PA-C-MANサミットin大阪」を初開催!
このたび、PA-C-MAN PROJECTのイベント第一弾「PA-C-MANサミットin大阪」の開催が決定しました!初回の舞台はくるーず薬局がある大阪府大阪市。公式サイトではプログラムの詳細を掲載しています。
昨日から参加申込もスタートしているので、
「PA-C-MAN PROJECTに興味がある」
「くるーずのことをもっと知りたい」
「大阪での暮らしを体験してみたい」
などなど、ご興味のある方はぜひご応募ください!