緑の絨毯が広がる古川太陽光発電所【パシフィコ動植物図鑑】
宮城県大崎市にある古川太陽光発電所は56.7MWの発電容量を備えた宮城県内最大の太陽光発電所です。2016年12月より運転を開始し、7年目を迎えています。これまで1万3千戸の家庭消費電力に相当する3.3億kWhのクリーンエネルギーを発電し、17万トン分の二酸化炭素排出削減を実現して参りました。
古川太陽光発電所は大崎市の人里離れた山の中にひっそりと在ったゴルフ場を改変して造られました。ゴルフ場の平坦な地形形状を活用し、太陽光パネルを配置しています。また、除草剤や農薬を使用せず、草刈機または手作業の除草によって年間を通して低茎~高茎の草地環境が維持されています。プレーヤーとコースキーパーが行き来したゴルフ場時代とは異なり、今では除草や異常検査などのメンテナンスの作業員のみが出入りするようになっているため、静かな環境が維持されています。
除草剤散布や人の出入りが無くなったファーム内には多数の動植物が戻ってきて新たに独特の生態系が形成されています。
当社では工事後の発電所内の自然環境の動態を調査するため定期的に専門家による調査を行っています。以後詳しく見ていきましょう。
1.植物類
ゴルフ場から太陽光発電所に変わって6年間の月日が経ち、人が立ち入らず、除草剤を使用しないため、あらゆる草花が繁茂しています。2021年に専門家によって行った自然環境調査によれば、場内で375種の植物種が確認されました。
その中には新たに造成によって造られた調整池エリアにて発見された重要種であるミクリも発見されました。工事によって新たに作られた湿潤な環境が好まれたようです。
太陽光パネル下の影の部分には草地環境には珍しくシダ類が繁茂しています。日陰かつ水分を含んだ土質が好まれているいようです。
パネルの間では日が差す分草の成長が早く、それだけより多くの伐採が必要になります。
2.哺乳類
古川太陽光発電所は周辺の森林と隣接しているため野生の動物が水を飲んだり餌を獲りにやってきます。ファーム内では特別天然記念物であるカモシカを含む11種の哺乳類が確認されました。
3.鳥類
太陽光発電所の中には太陽光パネル設置エリアと防災用の調整池、そして残置された元々の森林があります。合計30種の鳥類が確認され、それぞれの環境別に確認種の特徴が分かれる傾向がありました。
太陽光パネル設置エリアではコチドリが地面で営巣しており孵化が確認されました。その他にはキジ、モズ、ヒバリ、ハクセキレイなどが見られました。残置森林では、クロツグミ、キビタキ、ホトトギス、ヤマドリ、アオゲラ、サンショウクイ、ノスリ、ハチクマが確認されました。また調整池では水面を泳ぐカイツブリやカルガモが確認されました。
4.両生類・爬虫類
発電所内では新たに造られた調整池の水辺に多くの両生類が見られます。トウホクサンショウウオ、アカハライモリ、タゴガエル、ヤマアカガエル、トウキョウダルマガエル、ツチガエルなどの重要種をはじめとする両生類9種が確認されました。
またパネル設置エリアではヒガシニホントカゲ、アオダイショウやニホンマムシなど爬虫類4種が確認されました。
5.昆虫類
発電所内では実に362種の昆虫類が確認されました。残置森林では、森林性の昆虫類を中心とし、他の環境より多くの種数が確認されました。パネル設置範囲では、トノサマバッタ、キタテハ、ニホンミツバチなど、主として草地性の昆虫類が確認されました。調整池周辺では、オゼイトトンボ、クロイトトンボ、ハグロトンボ、ムカシヤンマなどのトンボ類の他、アメンボ、マツモムシ、イチモンジセセリなどの昆虫類が確認されました。
また9月には秋の風景を彩るミヤマアカネ(赤とんぼ)がを多数確認しています。
以上のように古川太陽光発電所では元ゴルフ場時代に使用されていたような農薬・除草剤の散布を止めたため、太陽光パネル設置エリアや調整池エリアにかけて多くの植物種が繁茂し新たな植生を形成しています。多様な植生に多様な虫が集まり、また新たに設置された調整池の水辺環境に動物などがやってきます。パネルの陰には草地環境では通常みられないシダ植物やコケなども確認され独特の生態系が形成されています。
古川太陽光発電所の運転開始後の自然環境調査についてはこちらをご覧下さい。
https://www.pacificoenergy.jp/biotope/assets/pdf/hurukawa_solar.pdf
パシフィコ・エナジーでは今後より多くの動植物種がソーラーファーム内にて見られるよう、環境の維持管理に努め、今後より一層多様な動植物と共生できるように努めていきたいと思います。
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