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川を下るとビッグな魚に変身!? 太陽光発電所に棲むアマゴの生態とは【パシフィコ動植物図鑑】

パシフィコ・エナジーは、地域の環境や生態系との共生を大事にしながら、全国各地で環境配慮型の太陽光発電所を開発・運営しています。

パシフィコ動植物図鑑では、そんな発電所のまわりに生息するさまざまな動植物をピックアップ。第3回目は、岐阜県郡上市の美並太陽光発電所に棲む準絶滅危惧種の魚「アマゴ」についてご紹介します。

自然豊かな発電所に生息する天然アマゴ

美並太陽光発電所内にある調整池には、環境省と岐阜県で準絶滅危惧種に指定されているアマゴが生息しています。アマゴはもともと渓流などの上流域に棲む川魚。ここに棲むアマゴたちは、おそらく発電所近くを流れる長良川や吉田川を下ってたどり着いたと考えられます。

アマゴは手のひらサイズほどの小ぶりな魚で、体の側面に「パーマーク」と呼ばれる大きな楕円形の青い斑点と、小さな赤い斑点があるのが特徴です。また、主食は水生の昆虫類で、美並太陽光発電所ではカワゲラやトビケラの仲間、トンボの幼虫のヤゴなどを食べているようです。

アマゴを漢字で書くと「雨子」「雨魚」「天魚」「甘子」「鯇」など。名前の由来は諸説ありますが、梅雨時になると釣れるようになるため「雨」がつく、という説が有力であると言われています。

また、アマゴは清らかで澄んだ水質と安定した水温(冬場は10℃以上、夏場は17℃以下が理想とされる)を好む“生息環境へのこだわり”が強い魚でもあります。

パシフィコ・エナジーの調整池は、建設時に水生生物に配慮した設計(池の水が年間を通じて枯れないよう水深を深くするなど)をしているため、常に湿地帯に囲まれた溜池のような状態。また、水温も5月中旬で14℃前後なので、アマゴにとって理想的な環境のようです。

川を下ると別の魚になる!?

小ぶりな体なので一見穏やかな性格に思えるアマゴですが、実は縄張り意識が強い魚。他のアマゴが自分の縄張り内に入ってくると、体当たりで追い払おうとするほどです。

そのため、特に体が小さいアマゴは居場所を追われたり、十分にエサが得られなくなったりしてしまい、より棲みやすい場所を求めて川を下る(降海型)ことがあります。もちろん、縄張り争いだけを理由に海へ出るわけではありませんが、こうして海を新たな住処に選んだアマゴは「サツキマス」と呼ばれるようになります。

川を下って海に向かったアマゴは、淡水から海水へ適応するため驚きの変化を遂げます。まずは海水に耐えられるよう体の中から塩分を排出する機能を発達させ、体の表面はパーマークが薄まって白銀色に変化(スモルト化)。さらにサイズも大きくなり、なかにはアマゴの倍程度にまで成長するものも。アマゴとサツキマスを比べると、まるで別の種類の魚かと思うほど姿が変わるのです。

サツキマスは、産卵期を迎えると卵を産むために川を上ります。産卵期に川を遡上する習性はサケでよく知られていますが、サツキマスも同様で、一生に一度、命懸けで卵を産み、その後はほとんどが力尽きて死んでしまいます。

一方、河川に留まった(サツキマスにならなかった)アマゴの産卵期は生涯のうちに複数回あり、いずれももともと棲んでいる川で過ごします。こうして産まれてから4〜5年ほど経つと、寿命を迎えてその一生を終えるようです。

美並太陽光発電所の調整池で撮影されたアマゴ

発電所の調整池の排水部分には、大雨が降ったときなどの水害対策用にダムが設けられていて、高低差によって下流へ流れ出る水量を大きく調節しています。そのため、基本的にダムから水があふれることはなく、アマゴがダムを越えて海へ行くこともありません。調整池には天敵も少ないので、美並太陽光発電所のアマゴはこの地で繁殖し、のびのびと過ごしているのでしょう。

恥ずかしがり屋なのか、職員たちの前にはなかなか姿を現してくれないアマゴですが、見かけたときはじっくり観察し、彼らの生態を追っていきたいと思います。


発電所内で確認できた動植物については、「ソーラーファームの動植物園」にまとめています。こちらもご覧ください。

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