豆すっとぎ(岩手県下閉伊郡)
原材料: うるち米(岩手県産)、大豆(青豆)(岩手県産)、砂糖、食塩
製造者: 荒川農産物加工組合
販売: 三陸山田がんばっぺ市場
http://www.yamada-michinoeki.com
「豆しとぎ」は主に東北地方で食されている郷土菓子だ。今回取り上げたのは岩手県下閉伊郡で食べられている「豆すっとぎ」。「すっとぎ」とは「しとぎ」がなまったもの。
そもそも「しとぎ」って一体なんなんだろう? しなやかでしっとりとした水気を含んだ、ちょっと色っぽくも聴こえる言葉。
「粢(しとぎ)」とは、水に浸して柔らかくした米をつぶし、粉にしてこねて丸めた食べ物のこと。餅の原型ともいわれ、古代から神饌(神前のお供え)として欠かせない存在だったそう。
かつては全国的に食べられていたが、この伝統食が今なお生き続けているのは、岩手など東北の北部と九州のごく一部だけだとか。熊本のある地域では、上棟式で屋根の上からする餅投げの餅を「しとぎ餅」と呼ぶ。また、餅投げそのもののことを「しとぎ」と呼ぶ地域もあるそう。なまって「ひとぎ」とも。
古い歴史を持つ「しとぎ」だが、シンプルな調理法だけに様々なバリエーションがあり、今回の「豆すっとぎ」は青大豆をつぶして米と砂糖と塩を練り込んでまとめたものだ。
早速いただいてみると、シンプルながらも老若男女にウケそうな味わい。食べ方によって食感がだいぶ変化するので、5種類の食べ方で試してみた。
1. そのままで——みずみずしい豆の風味と食感が最も楽しめる。
2. 蒸す——モチモチの食感に変化。台湾の飲茶で出てきそう。
3. オーブントースターで焼く——外側カリッと、内側むっちり。パンのような食感。
4. フライパンでバター焼き——バターのリッチなコクと外側のカリッと感。地中海沿岸地方の郷土菓子で似たものがありそうな、エキゾチックな美味しさ。
5. 半解凍の状態でバニラアイスとまぜる——豆の食感がいいアクセントに。以前ハーゲンダッツにずんだ餅フレーバーが期間限定であったが、豆すっとぎもアイスクリームとの相性は抜群。
いろいろな方法で試してみたが、私がいちばん好きなのは 3. オーブントースターで焼く、だ。ナッツのような豆のうまみと、パンやソフトクッキーのような食感が楽しめて外国人にも喜ばれるかも。
また、豆しとぎをアレンジした「黒豆しとぎバター」という商品も存在する。こちらは未体験だけれど美味しそう。
神聖なお供え物からはじまって今現在では多彩なアレンジで親しまれている「豆すっとぎ」は、これからさらにファンが増えそうな「のびしろ」を感じさせる郷土菓子だ。パンケーキ、タピオカに続くブームとなる日は来るのか来ないのか。