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術後の化学療法に専念できる幸せ。ここまで来れたことに感謝。

「You are done. healed nicely.(やったね。良くなった)」
「Thank you so much!!」

カナダのホームナースに通院すること1ヶ月と10日。
私の乳がん全摘術後からいうと、もうすぐ3ヶ月になるところでした。




ついにキズが塞がりました。


切開創に長いこと鎮座していたカサブタの下は穴だった――。それが完全に薄ピンク色の新生ヒフで覆われました。

シャワーのときに絆創膏で保護する必要もなく、直に触れられるようになったキズ跡は、術後の感覚鈍麻もなく、切開された上下が繋がっている一体感が新鮮です。

がん病巣を周辺組織も含め9cm切除してから繋ぎ合わたわけですが、胸が小さい私の場合、縫合に足りないくらいだったのかもしれません。それを3ヶ月かけて自分で再生してきたようでした。

切断端(マージン)での再発がないように、ギリギリを攻めて、大きくカットしてくれた外科医に感謝です。そのぶん私は、がんフリーの局所という安心感をもらいました。

本当にたくさんの人たちに支えられてきました。ホームナースの皆さんの尽力にとどまらず、ホームドクター、化学療法のドクターまで関わってくださり完治できたこと、私はキズ跡を見るたび一生、温かい気持ちになると思います。


次のステップ、化学療法に進める!! 


本来なら術後2ヶ月以内に始めるのが推奨ですので、遅ればせながら、ようやくです。

その反面、3ヶ月になるこの時期まで延ばせて、良かったとも思っています。ひと月前の私の体調は、脇の下のリンパ痛のせいで、転移に怯えてガタガタでした。

それでも運動を欠かさなかったおかげで下肢の筋肉も増えたし、主治医の「転移の可能性は低いよ」との断言もあったおかげか、今のほうが体調も気分も良好です。

私の場合、化学療法をしても再発リスクは5%しか下がりませんが、気持ちは不思議と前向きです。できる限り体内に潜んでいるかもしれない輩を叩いて滅し、過去に区切りをつけられたらいいと。

その後はホルモン療法を受けながら、「自分は遠隔転移しない」と暗示にかけて、家族とファームでより健康的に生活していくつもりです。歳を重ねることが楽しみ(私は閉経後ですから、歳をとればとるほど再発リスクは下がるし、もし再発しても、精一杯やったと後悔しない)。

化学療法を受ける期間は3ヶ月でも6ヶ月でも、その後のリスクは大して変わらないので、とうぜん3ヶ月の選択です。


私が始めているのはTC療法4クール。


3週間おきに4回、乳がん化学療法の中心的役割、タキソテール(T)(成分名:ドセタキセル)とリンパに効かせる抗がん剤、シクロフォスファミド(C)の点滴静注です。

私のように、ホルモン受容体陽性の乳がんにはドセタキセルがいいとの研究結果が一部にあるそうで、この薬を“希望の星”のように思ってしまいます。

ここで乳がん化学療法において有名な話。
ドセタキセルか、はたまた同じ系統のパクリタキセル(タキソール)のどちらを使用するかです。

むくみのドセタキセル、
しびれのパクリタキセル、

なんて言われていますが。

加えてドセタキセルには有熱性好中球減少症が出現しやすく、それが少ないパクリタキセルは12週連続投与という、回数と量を稼ぐ療法が向いています(私も6ヶ月かかるコースを勧められたときはパクリタキセルでした)。

3ヶ月のTC療法はドセタキセル一択で、選択肢はありませんが、もし選べたとしても、私はやっぱりドセタキセルで良かったです。

しかし、どちらも肺障害を起こす可能性があるという、肺気腫もちの私にとっては懸念材料がありますが、その頻度――、

ドセタキセル 0.1%
パクリタキセル 0.54%

僅かの差だったとしても、より低いほうが安心ですね。

また個人の見解ですが、私は化学療法って、白血球が下がるほうが効果があるような気がする……。

どうせやるなら、諸とも感。そして――、
私の白血球(好中球)は抗がん剤にやられ、尊い犠牲に。低迷を続ける2週間、軽く上がったり下がったりの微熱がありました。

元々なのですが、私は(と言っても乳がんになってから)白血球がナチュラルに少ないです(原因不明)。

そんな人間がTC療法をするので、
とうぜん白血球を上げる薬(注射)が必要。

日本ではその製剤として、乳がんの人はほぼジーラスタを使用しているようですね。持続型のため、1クールにつき1回の注射で済みます。ただ値段が高い。

私はカナダで無料の医療制度を受けていますので、支給してもらえる製剤は、薬価の安い、毎日注射するタイプのグラン注になります。

1日しか薬効がないので、抗がん剤投与3日目から10日目まで、1クールにつき8日間連続で注射しなければならない。

自己注射です。
私は日本でナースをしていて良かったとつくづく思うのは、針に対する抵抗が全くありません。

でもね、針の太さは25G(ゲージ)です。
一般的な採血針が22〜23Gで、大して変わらない太さで、注入量は痛みをじゅうぶん自覚できる0.5ml 。

皮下脂肪なんてほとんどなく、痩せてシワシワの皮フを、針の長さ分だけは確実に摘んで注射。普通の人ならお腹に摘めるはずが、私には張りがないので、唯一摘める太ももに。

ブスッと!!

インスリンなどの自己注射針は30〜34Gですし、1回の注入量も痛みを感じるほどではないかも……。

ノートに吐き出しましたので、もうグチりません。
他の疾患でグラン注をお使いの人は、もっとたくさん打たれて辛い思いをされているはずです。

だからあと3クール、残24本、自分で打ちます!!

それに私の場合、ジーラスタをお使いの人が表現している「居ても立ってもいられないほど脈打つ骨痛」の副作用をほとんど感じることなく、鎮痛剤を使用せずとも8日間を過ごせました。

抗がん剤投与14日目以降は、白血球が自然に回復してきます。今の私はその段階です。

上が使用前の薬剤充填済みのシリンジ。
下は使用後のもので、バネが伸びているのが見える。
薬剤を押し切れば針は瞬時に安全圏内に内蔵される。



急性期の副作用を振り返ってみて。


私の場合、抗がん剤治療は初回から外来でした。

そして、全摘手術の当日夜同様、救急外来に駆け込むことに。帰宅したのは午前2時で、付き添ってくれていた夫ともども疲労困憊。布団に倒れ込んだとたん爆睡でした。

今回きつかったのは、急激に進んだ浮腫みです(後に話した化学療法のドクターによると、浮腫み予防のステロイド薬だけど、量が多くても浮腫んでしまう。私には多いかもしれないけれど、減らすに減らせない大事な薬だと)。

しっかし、胸もお腹も顔も水びたしで圧迫されているような感覚があって、何より飲水するとゲップで苦しく、飲んだ量に比例しない乏しい排尿量だったのが心配。

抗がん剤投与後は飲水を多くして、早めに排出するべきが、飲めない苦しいで、出血性膀胱炎になりはしないかと本気で怖かったです。

救急で私を診てくれたドクターは、「バイタルサインは問題ない。のどの腫れもないから飲水できるように、ゲップを止めてお腹を動かす薬を出しましょう」と言って、2種類の内服薬とお尻に筋肉注射してくれました。

翌朝早く、尿意はなかったもののトイレへ行ってみたら、注射で弛緩しきった膀胱から多量の排尿があり問題解決。

その後は、逆にぺたんこになりすぎてゲッソリ。
眼窩が落ち込み、体重は2kg減って36kg……。

食べなきゃいかんと思いつつ、吐き気止めを飲んでも気分不快で少量しか食事ができない状態は5日間続きました。この間、口内炎はなくても口腔内の痛みがツラく、特に舌。舌苔が蔓延り、真っ白だったです。

次回に備えてドクターは、“マジック・マウス”という洗口液を処方してくれました。

自分なりの副作用対策。


私は医薬品を使う前に、まずはナチュラルなものでケアしていこうと思っていて、それで軽減できています。

舌苔にはハチミツの殺菌作用。
重曹水でうがい。
アロエジェルで歯磨き。
ココナッツオイルで唇を保護。ハンドクリーム代わりにもなり、その手で料理もできちゃいます。

鼻水があるときはワセリンの撥水性で鼻の中とヒフを保護します。

胸のキズ跡にはヒマシ油でマッサージ。

足の筋肉痛にはマグネシウムオイル(飲むサプリより、ヒフからのほうが吸収がいいそうです)。

頭皮はローズマリーオイルと椿油。
脱毛中ですが優しくマッサージすると、頭皮のチリチリ感が軽減します。

爪にはティーツリーオイルがいいとネットで見ましたが、副作用で敏感だった鼻には香りが強すぎでした。また、注射用アルコール綿の揮発臭も普段と比べて強烈に感じました。

これはタキサン系の抗がん剤がイチイという針葉樹を基にしているのが関係しているかも。溶剤としてアルコール添加なのも一因かもしれない。

しかし、アルコールフリー製剤より、私は入っていたほうがいいです。そのほうが安定した薬剤になると思うし、できるだけ一般的なもので治療したいと思うからです。

ついでにアルコールでがん細胞を1つでもやっつけられたら?? 呑兵衛ではないけれど、そんな気分ですよ。ウプウプ。

投与の翌日までお酒を飲んだように赤ら顔でフラッフラなのは、わかり易い副作用。物を取り落とすことも多々ありました。

だいたい最初の5日間の呑兵衛ヘベレケを乗り切れば、あとは食欲も戻り、笑っていられる副作用ばかりかな、私の場合。次回からはガスターも追加です。きっと気分不快も改善されると思います。


美味しく食べれるものと味覚の変化。


人によっては水が不味くなったり、スプーンのメタリック臭が気になってしまうのだとか。

私の味覚障害はそれほどでもなかったけれど、
ラズベリージュースはトマトの味。
チョコレートはハチミツの味。

塩味はボヤけ、苦味と酸味が強くなった。

消化のよいものと思って今は玄米でなく白米です。
体重を戻すのにモリモリ食べないと。

というわけで、

ご飯が進む第1位、梅干し!!
他の酸味はダメなのに何故か梅干しだけは舌も顔も酸っぱくならなかった。

ご飯が進む第2位、シーチキンマヨ!!
浮腫予防に塩分を控えているので、スライスオニオンをタップリと。

ご飯進む第3位、海苔!!
減塩すし飯を海苔で包む。

食欲が戻ってからは舌苔も消え、味覚も体重も元に戻りました。


運動に勝る薬なし。


抗がん剤治療中に限ったことではないですが、
筋肉があってこそ戦う余力があります。

パワースクワット
プランク
腕立て伏せ
180度開脚ストレッチ
ヨガ

などが習慣です。
がんになる以前の私は、ガーデンに入り浸りで畑仕事ばかりしていましたが、本気を出せば上記プラス畑も夢じゃない。できるできないではなく、要はやりたいかやりたくないか。
それで新しい自分になれます。

ひとつ紹介したいのは、チベット体操。
これはもう10年以上継続しています。


そういえば日本に一時帰国したとき母に、
「わかはそんなに背が高かったっけ?」
と言われました。

体操で私の背が伸びたのはでなくて、高齢の母が縮んで私は変わらない。姿勢も良いままでいられます。

ご興味ある方はぜひお試しください。
何千年ものチベットの歴史の中で大系づけられた『若返りのヨガ』とも言われています。

かの芸能人がなぜ若く見えるのか、この体操のおかげもあったり(もちろん他にも大変な努力されている賜物でしょうが)。

“継続は力なり”
使い古された言葉でしょうが、私は永遠に廃れることのないこの真意が好きでいます。


家族とカナダに感謝です。


私が治療に専念できるのも子どもたちが代わりに、家事や動物の世話をしてくれているからだし、
夫はいつでも私を病院へ送迎してくれます。

また、英語が堪能でない私に代わって電話も(カナダはわざわざ病院へ出向かなくても、電話で済むことがかなりある。お互い声だけで分かる関係なら双方の利)早口で聞き取れない対応もしてもらっています。

そして、キャンサークリニックでは、
ドセタキセル治療中にフローズン・グローブ(爪の変形や変色、指先のしびれを抑える効果があるとされる)を提供してくれます。

それだけでもじゅうぶん有り難いのに、
希望すればお昼にサンドイッチ、ビスケット、コーヒーやジュースも提供される。

脱毛対策には、メッシュのネットや寄付されてある帽子があったり、など。

至れり尽くせりに、ひたすら感謝するばかりだけど、今後は自分が再発や新出がんにならないために、ゆっくり考えていられる時間と余裕をもらったと思って……、

精一杯生きて、周りに恩を返していきたい。


長くなりましたが、以上が近況です。
読んでくださった皆さまも健康増進されますように、心より祈っています。


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