ヒヨコの気持ちがわかるのは自家繁殖で飼育しているから
私は毎年10〜15羽のヒヨコを孵卵器で取り上げ、飼育を始めて8年がたつ。自家産の有精卵を使うが、他所の有精卵やヒヨコを導入したこともあり、経験を積んできた。
そもそもすべての有精卵が孵化することはない。発育不全や出血、時間がかかりすぎれば失敗。ヒヨコが自力で生まれてきただけでも立派である。
卵の中でピーピー鳴いて、親兄弟を呼びながら懸命に殻を割る。数時間後には体も乾き、周りの兄弟と遊びだす。まずは最初の難関を描いたショートストーリーでヒヨコの気持ちを伝えたい。
そとの空気はおいしいね。
もっとほしくて何度も中から蹴ったら、
硬い殻がぱかっと割れた。
ボクには兄弟がたくさん。みんなでワクワク。
お日さまも、土も草も、みんな優しいんだって。卵だったころの記憶で知っているんだ。
だけど、黒い袋が見えてきて、
命はその日のうちにおわりになった。
また卵からやり直すよ。
本物の自然にふれるまで……。
優しい手を持ったひとがいるのも知っている。
受けつがれてきた記憶があったかいから、
ボクは次も飛べる鳥よりニワトリがいいんだよ。
うちのヒヨコが袋詰めされたとしたら?
命の灯火を消されてもなお、たくさん産卵するニワトリはたくましく、いつでも復活できる希望がある。
有精卵には両親の記憶があると思う。自然養鶏を続けて自家産と他所産のヒヨコを比べるうちに芽生えた感覚だ。
エネルギッシュなヒヨコたちは、哺乳類の第1日目にはないような弾ける生が溢れている。それほどまでに成熟して生まれたきた彼らは、自立心が旺盛で、ファームの一員になることを願っている。
しかし、大半のオスのヒヨコがたどるのはこちら↓
実態は世間でも知られるところだ。
足が伸びて可愛いようだが、思考を放棄している。恐怖を感じたときの「死んだフリ」はヒヨコが見せる自己防衛本能だ。
世界的にはガスを使用し、粉砕処理時のヒヨコの痛みを軽減させている。
日本はゴミ袋に入れて積み重ね、窒息または圧死。一番低コストだ。しかし、粉砕以上に苦痛を長引かせる行為であるのは言うまでもない。
この件に関してようやく。
アニマルウエルフェア(動物福祉)に対して後進国の日本でも。
世界の先進国は、オスを殺処分しなくて済む代替法を何年も前から施行しているが、いまだに日本の対策は進んでいない。
代替法:以下の①、②を参照。
①:孵化前に卵の中で鑑別する技術
開発中だが運用開始
7日目以前の診断について。
実用化されているそうだが、遺伝子改変という操作が入り、それすら痛みを伴う技術であるといわれている。
何日だろうが痛みをゼロにはできない。温められて孵化段階に入った卵は、すでに動物ということになる。
だからこそ私は、孵卵器の中で成長している命に向けて、母鶏ように話しかけている。生まれてくれば、私が親だと刷り込みも試みる。
②:卵肉兼用の鶏種の導入
アニマルウエルフェアの観点からは
プラス面が大きい
現行は兼用種より、卵用・肉用それぞれに改変された鶏種を用いる。
卵用は休むことなく産卵してしまう。体に負担、病気に弱く、早死だ。
肉用は成長スピードが早く、足腰、心臓に負担。立てなくなるケース続出。
まとめとして、
①は、オスと判定された卵がロスになる。
②は、オスの鑑定・処分のコストがない。
以下はオスのヒヨコを利用するための取り組み↓↓
https://www.j-chicken.jp/anshin/about3.html純国産鶏・卵肉兼用種「岡崎おうはん」の開発
http://akita.lin.gr.jp/repoto/tiku/35/35.html比内地鶏雄ひなの特徴と活用法について(雄を淘汰せずに肉が硬いのを改善。それまでの肉用はメスばかりだった)
『ケージフリー宣言』について。こちらもようやく世界的な動きへの同調がみえてきたが。
今後はもっと開示がほしい。その卵は、①ですか。②のですか。それとも生まれたオスを処分した産卵鶏のですか。
農耕民族の日本人は、工業的な家畜しか知らないことが多く「無関心・非情」はそこからきていると思う。
世界的には牧畜民をルーツにもつことが多く「屠殺の覚悟」を理解した上での(近隣アジア諸国も同調)アニマルウエルフェアなのだ。
それを知らずに卵肉を頂き、ヒヨコを袋詰めしていると世界の人々から後ろ指をさされることになる。
ここで明言するが、私は家で産出できる卵肉以外、タンパク源として購入するのは豆類にしている。できるだけ環境に配慮したい気持ちが強い。
それでも鶏ふんは家庭菜園へ循環できて、農業とセットの昔ながらの生き方において、小さな命は欠かせない存在だ。
私ひとりも小さな存在だが、ヒヨコのメッセージを知っている以上届けていきたい。1羽でも多くの助かる命があるように。ヒヨコの夢は私の夢だ。
その機会をくださり感謝します。
最後までありがとうございました。
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