MILGRAM ボイスドラマ 【相対零度】
1. 書き起こし
ユノ「ふっふーん、ふふ、ふーん♪お、来たかな?えへっ!」
(扉が開く音)
エス「囚人番号二番ユノ、尋問を始め......ん?どこに行った?」
ユノ「うわあっ!!」
エス「何をしている」
ユノ「あっれー?看守さんリアクションうっすいなー、もっと驚いてよー!」
エス「さっさと座れ。尋問を始める」
ユノ「はぁーい...」
エス「ミルグラムは、お前たち囚人の罪を明らかにし、適切な判断を下すために存在している。そのために、いくつか話をしよう」
ユノ「オッケー!話そ話そ?」
エス「まず、」
ユノ「まず自己紹介とかしとく?樫木優乃十六歳、高校生、九月二日生まれの乙女座のO型!」
エス「ストップユノ」
ユノ「なになに?」
エス「質問はこちらからする」
ユノ「どうぞどうぞ〜」
エス「(咳払い)囚人としてミルグラムに囚われて数日というところか。率直にどうだ。監獄生活は」
ユノ「んー意外と楽しいよ?家族はどうしてるかなーって心配はあるけど、不思議体験って感じで」
エス「楽しい......か」
ユノ「そうだね。他の囚人の人たちもみんな面白いし、まだいろいろ探り合いって空気もいいね♪そういう時期の人間観察って、やっぱり楽しいよね♪」
エス「ユノ」
ユノ「あいよ?」
エス「緊張感がなさすぎる。尋問だと言っているだろう」
ユノ「あー、看守さんたら、ムード大切にするタイプだ!」
エス「最低限は。お前の罪を赦すか、赦さないか。判断するための貴重な場だからな」
ユノ「緊張感がない理由は三つありまーす♪ふふーん、聞きたい?」
エス「それを解決すれば、真剣に取り組むんだな?」
ユノ「んーまあ、そうなるかな?」
エス「話してみろ」
ユノ「三千円になりまーす!」
エス「いいから話せ」
ユノ「けちー......。まあいいや!じゃあ一つ目!看守さんの見た目が全然怖くなくて、むしろカワイイから!!」
エス「はぁ?」
ユノ「おかしいでしょ。看守なのに。あたしと同じくらいの歳じゃない?むしろちょっと下くらい?」
エス「知らん」
ユノ「ほらほら無理でしょー?そんな可愛い顔で緊張感とか持てなんて」
エス「はぁ?」
ユノ「あっはは♪眉間に皺寄せても無駄だって!」
エス「大変不服で不愉快だ。それに反論もあるぞ」
ユノ「うんうん、聞きましょう?」
エス「僕が屈強な大男だったとして、暴力をもって支配しようとしたところで、お前の態度が変わるとは思えないな」
ユノ「ああ、確かに。そうかも」
エス「だろう?それは、お前自身の気質の問題だ。よって、僕の見た目は関係ない。全く関係ない」
ユノ「めちゃくちゃ気にしてんじゃーん。まあいいや、じゃあ第一問クリアってことで」
エス「いつの間にクイズになった......?」
ユノ「あたしの緊張感がない理由二つ目!先に尋問から帰ってきたハルカが、ニッコニッコしてたから!」
エス「はぁ......それは僕のせいじゃない」
ユノ「おかげでよっぽど楽しいことが待ってるんだと思って、期待してたんだけどなぁ?」
エス「お前が帰る時は、絶対に暗い顔で帰れよ」
ユノ「ねえねえ、ハルカとなに話してたの?あの子をあんなにニコニコさせるなんて、すごい手腕じゃない?」
エス「僕は尋問での会話の内容を漏らすことはしない。だが、そうだなあ、僕が何をしたか教えてやろう。思いっきりビンタをお見舞いしてやった」
ユノ「うわ〜お!それでニコニコで帰ってきたのか......。そりゃハルカが変態さんだ!第二問もクリアかな?」
エス「なんだか気づかないうちに、お前のペースに巻き込まれている気がする」
ユノ「三つ目。看守さんに人を赦す赦さないなんて、決めれっこないと思っているから」
エス「聞きづてならないな。僕の能力を疑問視しているということか?」
ユノ「あー違う違う。看守さんがどうこうって訳じゃないよ?」
エス「詳しく聞かせてもらおうか」
ユノ「まあ、システムを聞いた時から、ずっと思ってたんだよ。ここ看守さんが有罪無罪決めるんでしょ?」
エス「そうだな」
ユノ「看守さんの好き嫌いでしかないでしょ?それ。あんまり詳しくないけどさ、日本って法治国家ってヤツでしょ?法律以外で良いとか悪いとか決めたらおかしくなっちゃうでしょう」
エス「ん?」
ユノ「例えばニュースとかさ?不倫とか不適切発言とか不謹慎とかで騒いでるでしょ?同調した人たちも叩き始めるでしょ?馬鹿だなーって思わない?法律以外で人が人を罰するなんて、キリがないよ」
エス「一般論になるが、法律も人が決めたものだ。全ての人間が納得する妥当性を得られるものではないだろう」
ユノ「それ。自分が納得したいからって無関係の他人に干渉してくる人は嫌いなんだよね。それってまず、んー、ただ自分が気持ちよくなりたいだけじゃん?その人たちは結局何もしてくれないよ」
エス「ユノ」
ユノ「私がどんなに寒い思いしてても、なーんもあっためてくれない人たちだよ.
......へへーん、話逸れちゃった!ええと、何が言いたいかというとね?」
エス「結局、僕次第だと」
ユノ「そ。結局もう好みじゃん?まあ別に良いと思うんだけど。潔くて。でも看守さんがどう思うかなんて、私にはどうしようもない。だから、取り繕う意味がない。普段通り楽しく過ごしているってわけ」
エス「はぁ...。なかなか曲者だな、お前も」
ユノ「そう?普通じゃない?」
エス「良いだろう。お前がお前らしくいるように、僕も看守らしくやらせてもらう。......ユノ、お前自身は自分の罪についてどう考えているんだ」
ユノ「え?」
エス「お前のその感性をもってすれば、なぜ自分がここに入れられたかは分かっているんだろう」
ユノ「まあ、ヒトゴロシ呼ばわりされそうなことは、一件ほど?」
エス「よろしい。では、お前はお前の罪をどう感じる。赦されるべきものか、赦されざるものか」
ユノ「うーん......。さあ?わかんない。考えるのめんどくさいかなあ」
エス「考えろ」
ユノ「うーん、ぶっちゃけ、看守さんが赦さないなら赦さないでいいよ」
エス「赦されたいとは思わないのか」
ユノ「必死で謝ってまでは別に良いかな。自分のしたいことをした結果だから」
エス「罪の意識はないのか」
ユノ「どうかな......。それも考えるのやめちゃった」
エス「適当だな」
ユノ「世の中が真面目すぎるだけだよ」
エス「ユノ、お前はふざけているように見えて、頭のいい人間だ」
ユノ「そりゃどうも?かい被りだけどね」
エス「だが、それ故か諦観している。自分にも、人間にも、社会にも。全てを悟って冷めた顔をしているな」
ユノ「へーえ。何?お説教?精神論系のヤツ?一番嫌いだよ」
エス「ふふっ。ヘラヘラと急遽な言葉を吐いているお前より、今のイラついたお前の方がずっと好ましい」
ユノ「えっ?」
エス「冷めたままでいい。誤魔化さなくていい。僕の前ではな」
(鐘の音)
ユノ「ぁ......、部屋が変わっていく!?」
エス「尋問はこれにて終了。ここからは、お前の記憶から生み出される心象を覗かせてもらう」
ユノ「歌で引き出すって言ってたヤツ?」
エス「そうだ。お前の冷めた心も、テキトーな言葉も、なぜそう至ったかも、全て僕が突き止め、受け止めてやる」
ユノ「看守さん......」
エス「隠し事は不可能。故に、何も取り繕う必要はない。お前はお前のままでいればいい。ありのままのお前を、僕が身勝手に判断してやる。それが、ミルグラムだからな」
ユノ「何?そのめちゃくちゃな理論。でも、そうだなあ......。想像してみるとそれは、ちょっとだけ、あったかいな」
エス「囚人番号二番、ユノ。さあ、お前の罪を歌え」
2. 考察
まず気になったのが彼女の自己紹介ですね。さらっと16歳と言っているのですが、彼女の実年齢は18ですね。字幕がないのでなんとも言えませんが、多分16と言っていたはずです。16にしておいた方がパパ活に有利だったのでしょうか(第二審時点で彼女自身がパパ活をしていたことを暴露しています)。ムード気にするタイプだ!という発言もムードが大切なアレを彷彿とさせます。このボイスドラマでは彼女自身の罪を思い起こさせる要素がたくさん散りばめられているように感じられますね。また、彼女の本当は冷めているという性格についてもよく描写されていました。今回はエスの包容力のせいでギャルゲーのようになっていましたが(笑)
エスについては自分の華奢な体格であるとか、少年らしい幼めの顔を気にしていることがよくわかりましたね!私もエスくんはとっても可愛らしいと思います!そういうところが大好きです!
というところで、今回もありがとうございました。