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ぬいぐるみを落として2時間に1本のバスを途中下車した

「たゃ」と呼んでここ5年ほど大事にしているぬいぐるみがいる。そこら中に連れまわっているせいで、たまにヒヤリとすることがあって、ついに先日落とした。

しかも、遠出をした先の、バスが2時間に1本しかこない町で落とした。そのバスを待っているときに、ポケットにないな~と気づきつつ、思っていたところに入れていないことは日常茶飯事なので、まあバスに乗りながら探そう…と決めてバスに乗り込んで、カバンにもポケットにもやっぱりなかったのだ。

そんなこんなで、意を決してバスを降りた。

ちなみに、その時あった最後のたゃの記憶はこれだ。

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これ。そう。

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川て!!!

吹けば飛ぶようなワタの塊がずっと居られる場所じゃない。流されるわ飛ばされるわトンビにさらわれるわ、何でもありスポットだ。

橋を渡りながら自分がさっきまでいたあたりに目をこらしてもいなさそう。しかもたゃは石と似すぎているから、居たとしても遠目だと全然わからない。

河原に降りて、自分がいたポイントを正確に割り出そうと写真に写りこんでいる石と足元の石を一生懸命見比べてみたけれど難易度が高すぎた。し、やっぱりいない。

……終わったな。


いったん落ち着いて腹ごしらえをして、荷物がくそ重かったので貴重品以外河原に全部おいてひとまず心当たりを歩き回ることにしたら。


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いた!!!

その後3分で見つかった。道のうえにちっちゃいちっちゃいぬいぐるみがコロ……と落ちていて、なんとも言えない気持ちだった。こんなもの、私以外拾わないよ。

そうして次のバスまで1時間半くらい暇になったので結局ずっと河原でチルっていたよ。

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今回、落とした、と気づいた瞬間、実はあまり取り乱さなかった。バスも少ないし、人と会う予定もあったし、そういう要因のせいもあるけれど、「ぬいぐるみとの別れってこんなものかもな」とも感じていた。美しい土地だし、悪くないかもしれないとすら。でもなんだか、やっぱり5年も一緒にいたせいなのか、結局、何となく落ち着かなくて、ま〜迎えにいってやりますか!と、偉そうに探しにいくことにした。

実はたゃを本気で探し回ったことは初めてではない。5年前にも落としたか?!と焦ってそこら中を探しまわったことがある。お店にも落とし物届けをして、(こういうぬいぐるみで…と写真を見せたら「かわいい、女の子のぬいぐるみね」と言われた)一緒にご飯を食べた知り合いにも連絡して…

結局ズボンのポケットの奥のほうにぎちぎちになっていた、という何のこともない場所にあったわけだけど、見つかるまでに1週間ほどかかって、当時の私の取り乱しっぷりときたら見ていられないほどだった。そのころはあまりよくない会社に居て、毎日泣きながら働いているときで、マイカーの見える場所にたゃを乗せて毎日連れていた。

前回のこの騒動は、その実とんでもなくたゃに依存していて、とてつもなく救われていたことに気づくきっかけの出来事だった。なくすまではこれほどまでとは全然思っていなかったのに、アホみたいなんだけど、この子がいないなら生きていられないくらいの気持ちだった。

それに比べて、遠出した先という絶望的な状況なのに、なんだか今回はずっと落ち着いていられた。今は平穏な精神状態で毎日を暮らせている証拠だと思う。ぬいぐるみ離れの時期だなあとすら感じるけれど、まあ長い間つきあってくれた友達だから、捨て置くにはやっぱり惜しかったです。

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帰り道のかばんの中のたゃ。すごい顔をしている。なんて大人びているんだ。今回悪いことをしたね、やっぱり見つけられてよかったな。お互い成長したと思う。

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