『サステナベーション 多様性時代における企業の羅針盤』/藤原遠を要約してみた。
◉はじめに
【サステナベーション】...サステナリビティ(持続可能)とイノベーション(改革、変化)を組み合わせた造語
【SDGs(Sustainable Development Goals)】
→2015年に世界各国が達成すべき「持続可能な開発目標」として17項目を掲げた。
人間が関わっている社会、環境、経済の領域で、短期的でなく、長く永続的に続けることを目的とする取り組み。
・なぜSDGsなのか
人間が環境保護や人権を考慮せず利益追求を続けると、世界(地球)が持たないため。(人口増加による食糧問題、環境悪化、資源の枯渇、気候変動、教育・医療格差など)
・これを実現するためには、IT分野でのさらなるイノベーション(改革)が必要になる。
・サステナベーションによって、持続可能な社会、環境、経済とともに、誰もがその恩恵を受けることが出来るという共生社会が実現出来る。
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◉サステナベーションとトラスト(信用)が広げる共生社会
・サステナベーションが金融の世界から大きく広がっていく。
→サステナブル金融が企業のSDGsの取り組みをバックアップしていく。
・グリーンファイナンス...空気、水、土の汚染を除去したり、温室効果ガスを削減する「地球の環境に良い効果を与える投資への資金提供」
・サステナリビティを担保に資金提供(金融機関)、サステナリビティを担保に資金調達(企業、事業主)
・中国アリババグループのアプリ「アントフォレスト」の取り組み例
https://jp.alibabanews.com/alipayusers_ant_forest/
・アプリ内に環境口座があり、キャッシュレス決済など、制定されている「環境にやさしい行動」に該当するとポイントが貯まる。
・一定のポイントが貯まると中国砂漠地帯に木を植えることが出来る。
・植えた木をアプリ内で見ることができ、木が育つ様子を確認出来る。
・木を植える作業は現地の農家が行っており、アプリで制定されている「環境にやさしい行動」をすればするほど、現地農家に還元される(仕事が増えるなど)仕組みとなっている。(2018年で40万人の雇用を生み出している)
・金融×テクノロジーで経済、情報などの格差を無くすことが出来る。
・従来金融の仕組みであると、融資を受ける事が出来ず、事業や生活を営む事が非常に難しいことをイノベーションで解決する。
・このことを日本ではGMSという企業が取り組んでいる。
・GMS
https://www.global-mobility-service.com/
クルマを所持する事が収入面と融資面で困難な人を対象にサービスを提供する企業。
具体的には、制定された規定通りに仕事をすることにより、クルマを所持しながらローン返済が出来るサービスを提供している企業。
・フィリピンやカンボジアでは人口の80%以上がローン審査が通らない状況である。
・クルマがあれば生産性の高い仕事ができるが、金融のベースが整っていない&ローン審査が通らない状況である=クルマを所持できない。
・クルマにIOTを搭載し、運転、使用状況を管理する。
・制定された使用法を守り、毎月のクルマの使用料金をクルマのローン返済に当てるシステムを採用。(支払いが滞納するとクルマが使用出来ないように操作出来る)
・ローン審査が通らない人がクルマを所持することにより生産性の高い仕事が実現する→本人の収入アップ。
・新しいクルマによって排気ガスや騒音も少なくなり、環境にとってプラスになる。
・クルマ販売会社にとっては、今までアプローチ出来なかった層=ローン審査が通らない層にも販売販路の拡大。
・ローン会社にとっては、貸し倒れリスクの激減(ローン審査しても15%貸し倒れだったが、GMSのこのシステムでは1%以内に収まっている。)
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◉サステナベーションが示す「プラットフォーマー時代の先」の未来
・今まで人類によって生み出されたイノベーションは「楽観」と「悲観」を繰り返して発達した。
・科学...開発当初は便利になり、新しい価値や仕事を生み出し、人類を豊かにしてきた。
・反面、石油危機、チェルノブイリ原発事故やスペースシャトル打上事故など「科学技術への悲観」も生み出した。
・その後のイノベーションよって生まれたITではインターネットによって膨大な情報を簡単に手に入れる事が出来たり、それにより新しい価値が生み出されたり便利になる(楽観)
・一方、例えばamazonによる小売店の破壊(悲観)を持たらされた事実もあった。
・持続可能な社会の形成には、ITの利便性とサステナリビティの両方が必要になる。
・今後の企業は、本業での事業がサステナリビティに寄与する事が求められる。
・さらにはサステナリビティを重視しない企業は社会的な存在意義を問われる未来が到来する。
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◉サステナベーションの萌芽(ほうが)と時代のうねり
・例)イギリス エバーレッジャー
→宝飾、アート作品、高級品 など換金性の高い資産も来歴をブロックチェーンで管理している。
https://www.neweconomy.jp/posts/84024/amp
・ブラッドダイヤモンド...ダイヤモンドの採掘は紛争地域(ギニアやリベリアなど貧困地域)が多い
→採掘された地域にダイヤモンドによって得られた利益が還元されていなく、また現地住民が低賃金で労働を強いられていることなどの搾取が問題となっている。
・ダイヤモンドの採掘から取引履歴をブロックチェーンで管理し、顧客・企業・採掘産地へ適正な還元を実現させる。→貧困を無くす、平和と公正を全ての人に...サステナリビティの実現。
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◉サステナベーションをどのように実践するか
・既存事業で利益を出している大手企業は何が出来るか?
・日本企業は多くの価値を生み出して来た
→戦後日本のイノベーション100選...内視鏡、インスタントラーメン、マンガ・アニメ、新幹線...など
・過去の減価償却された技術でなく、別の角度から再活用している技術でサステナリビティを実現している例も出てきている。
・JVCケンウッド
https://www.jvckenwood.com/jp.html
→ビクター(AV機器)とケンウッド(通信、音響、カーナビ)が統合した企業。
・高度な映像処理技術を駆使した「ドラレコ」を開発した。
・車の外部と内部を観察・録画する事で、j未然に事故を防いだり、ドライバーの運転の質の向上を実現させた。
・海外タクシーや配送、デリバリーサービスの向上、事故や乗客による犯罪行為があった際の迅速な対応、未然の抑制に繋がった
→住み続けられるまちづくり、平和と公正を全ての人に...サステナリビティ実現。
・デンソー
https://www.denso-wave.com/ja/technology/vol1.html
→自動車部品会社で、バーコードより多くの情報が読み取れるQRコードを1994年に開発。
・中国でのQRコード決済に大きく貢献した。
・中国ではICチップの決済技術がコスト的に困難であり、QRコードが中国の支払い形態を大きく変えた→金融インフラの安定...サステナリビティの実現。
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◉サステナベーションで日本企業は復活できる
【三方よし】
→近江商人が掲げた考えで、売り手、買い手、世間の三方よしで商売が成り立つという考え。
・これが日本企業の基本的な理念となっている
・この考え自体がサステナリビティの考えであり、日本はサステナリビティの考えがすでに根付いている。
・一方世界はリーマンショック以降、ようやく「三方よし」=「サステナリビティ」の考えが芽生えた...まだ10年ほど。
・かつては製品に高品質な技術を取り入れ、コスト高になり、中国・韓国メーカーとの価格競争に劣勢に出てしまう事があった。
・しかし、今までの技術をサステナベーションという視点で焼き直す事で新たな価値を創造し、共生社会の貢献を実現出来る力がある。
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