拝啓僕へ〜男性諸君に注ぐ。好きな人に触れると言うこと〜
拝啓僕へ
今後数年後か、もしくは数ヶ月後に妻と大喧嘩したならまず最初にこれを見て欲しい。
子供の写真や妻との思い出、感情をコントロールする自己啓発本なんかよりも先に。
これこそが君の全てだ。
そしてこれを読んでる男性諸君に注ぐ。
どうか僕と同じ過ちは犯さないように。
初めての大喧嘩
事の発端は僕の不用意な発言だった。
現在妻は、妊娠9週目過ぎに入りつわりがひどい。
長男の時よりもだいぶひどいらしく食べても気持ち悪い。食べなくても気持ち悪い。常に体はだるいし頭も痛い。
ずっと二日酔いの状態だと思ってと言われたことがある。
そんな妻が久しぶりに料理を作ってくれた。
ピラフだ。
だが僕のピラフのイメージは炒飯に近い。
だからてっきりフライパンで作るのだと思っていた。
予想とは逆に炊飯器で作ってあった。
つい言葉が出たのだ。
「ピラフ…?びちゃびちゃやん」
炊き立てと言うこともあり、炒飯をイメージしていたと言うこともあり、予想とは違うものが出た時の素直な感想だったんだ。
(いいか、予想とは違くても不用意に発言するな)
そこから始まった。
「なんなん?何でそんなこと言うん?久しぶりに体調良かったから作ったんやけど」
あ、終わった。
そう思いながらも追撃の言葉がつい出て行く。
「いやピラフって炒飯みたいなやつかなと思ったから率直に言っただけやん。その程度で文句言ってくるのだるすぎ」
(いいか、火に油を注ぐな。燃えるぞ。まじで)
ここからどんどんお互いヒートアップしていく。
「もういいわ、用無し」
妻がぼそっと言った言葉を僕は聞き逃さなかった。
その時ほんとに何かがキレた。
この用無し発言が僕の全てを否定された様な気がして何とも虚しい感じに襲われて。
気づけば妻と殴り合いの喧嘩に発展したのだ。
(いいか、絶対に手は出すな。絶対にだ。)
そして忘れちゃならないのはその場には3歳の子供もいた事だ。
(いいか、どんな喧嘩であれ子供の前では絶対にするな。父とは違う。いい父になれ。)
結局作ってくれたピラフは食べたものの食べてる途中、用無し発言が頭から離れずに、僕はボロボロ泣きながら完食した。全く喉を通らなかった。
その日の夜、家族皆で寝室に行ったけど、妻は寝れないと言って別の部屋に移動した。
賃貸で部屋の引き戸もとっぱらったレイアウトにしてたので妻の嗚咽や泣き声が今でも耳から離れない。
次の日から妻は帰ってこなくなった。
(いいか、これはもうドンマイとしか言えない。)
これを書いているのは大喧嘩して4日目になるが未だに妻も子供も家に帰ってきていない。
ラインを入れても未読無視。
電話をしても応答なし。
返信が来たと思ったら声も聞きたくない。
そんな風に言われる。
(いいか、しつこく連絡を入れるな。焦らず冷静に問題に向き合うんだ。)
そんなこんなで妻子の家出は今も続いている。
僕は自分がやった事を反省して、認めて、謝罪した。けれどそんなものは全て後付けでしかないのだ。
(いいか、喧嘩はどちらも悪い。しかし圧倒的に悪いのは僕だ)
好きな人に触れると言う事
もしこれを見てる貴方が、もしくは僕もだが、
男性全般に言えるのは
僕たちは弱い。
俺が家を守ってるんだ。
腕力があるんだ。
俺が稼いでるんだ。
26歳で70万も稼いでる俺がすごいんだ。
だからどうした!
そんな事は重要じゃない。
(いいか、大事なものは何だ?金か?それとも人か?)
男性は所詮、女性がいないと輝かない。
好きな人が隣にいないとだめなんだ。
想像してみて欲しい。
今貴方たちが住んでる家に自分1人しかいない時の事を。
地獄だよ。
おはようやおやすみもなく、ありがとうやごめんもない。寂しさ紛れにテレビをつけ、自炊した味のしない料理を1人で静かに食べる。
少なくとも僕はとても悲しい。
好きで付き合って一緒にいたくて子供も授かってつい数日前まで当たり前の様にあった家族が今は別々になっている。
離婚とまでは言われてない。
けれど言われてもおかしくない。
とにかく今は会いたい。
会って直接謝った後、子供を抱きしめたい。
ドラマみたいな気の利いたセリフは思いつかないけど、笑顔でおかえりと言う事は決めている。
そしてハグをしたいんだ。
貴女が好きでたまらないから。