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特許適格性の問題は放置した方が良い?

2022年1月6日付で、米国特許商標庁(USPTO)が新しいパイロットプログラムを行うとの通知を出しました。
詳細は連邦政府の通知(Federal Register)で説明されていますが、要約すると以下のようなプログラムとなっています。

【名称】
Deferred Subject Matter Eligibility Response (DSMER) Pilot Program
通称「DSMERパイロットプログラム」となるようです。

【概要】
最終処分(Final Disposal)または他の拒絶理由が全て解消されるまで、特許適格性(Subject Matter Eligibility)に関する拒絶理由(§101)への応答を保留できる、という制度になります。
なお、最終処分(Final Disposition)とは、最後の拒絶理由通知(Final Office Action)、許可通知、出願放棄申請、継続審査請求(RCE)、審判請求を意味します。このプログラムで直線関係するのは最後の拒絶理由通知、(暫定的な)許可通知、継続審査請求、審判請求の4つになると思いますが、これらの手続がされるまでは特許適格性に関する拒絶理由への応答は後回しにしてもよいようです。

昨今話題となっている特許適格性に関する拒絶理由は、他の拒絶理由を解消する中で自然に解消されるものもあるので、とりあえず保留しておき、他の拒絶理由の審査に集中した方が効率が良いのでは、という意見から生まれた試験的制度とのことです。

【時期】
暫定的なものですが、2022年2月1日~2022年7月30日までとなっています。
ただし、状況に応じて短縮・延長どちらの可能性もあるとのことです。
なお、プログラムに対するコメントは3月7日まで受け付けるとのことです。

【対象となる出願】
パイロットプログラムに参加する条件は以下の通りです。
(A) 出願が、プログラムに参加する審査官に割り当てられたものであること
 
なお、すべての技術センターのPrimary Examinerはプログラムに参加できるようですが、参加は必須ではないそうなので、実際にどの程度の審査官が本パイロットプログラムに参加するのか、現状ではわかっておりません。
(B) 出願が、以下の手続的要件を具備すること
 ①正規の特許出願である(仮特許出願でない)。
  ※PCTの国内移行出願も含む
  ※継続性の出願(継続・一部継続・分割出願)も不可
  ※国内優先、パリ優先権主張出願は可
 ②特殊な出願でない
  例えば、他国の特許庁と協同で調査をするCollaborative Search Pilot ProgramやCOVID優先審査パイロットプログラムといったプログラムに参加している出願は対象外となるようです。
(3) クレームが、特許適格性に関する以下の要件を具備すること。
 ・特許適格性の拒絶理由(§101)を受けており、かつ、他の拒絶理由(§102, 103, 112等)を有すること
  👈他の拒絶理由がなければ保留する意味がないので当たり前ですね。

【参加条件】
A.招待制
"Invitation Only
"ということなので、審査官から打診のない限りプログラムを利用することはできないようです。なお、招待は第1回目の拒絶理由通知(First Office Action)にその旨が記載されるそうです。
B.参加表明
Invitationを受け取った出願人は、本パイロットプログラムに参加するか否かの選択権があります。
参加を希望する出願人は、所定の様式(PTO/SB/456)に必要事項を記入し、署名した上で、第1回目の拒絶理由通知への応答と併せて参加を申請します。サイン書類が提出されない場合はパイロットプログラムは適用されません。
なお、途中でパイロットプログラムの適用を辞めるための手続はないそうですが、出願人が自発的に特許適格性の拒絶に対して応答を行うことは構わないとのことです。

【その他】
特許適格性に関する拒絶理由が複数ある場合(例えば、Step 1で特許適格性なしとされたものと、Step 2Bで特許適格性なしとされたものがある場合)で、本パイロットプログラムへの招待を受け取った出願人は、
特許適格性の拒絶理由に対してはパイロットプログラムへの参加を希望し、その他の拒絶理由についてのみ応答、
特許適格性の拒絶理由の一部のみについてパイロットプログラムへの参加を希望し、その他の拒絶理由については応答
すべての拒絶理由に応答(パイロットプログラムに参加しない)
という選択肢があるとのことです。

以上、ご参考になれば幸いです。

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