[速報] 最高裁判決 Amgen v. Sanofi
米国連邦最高裁判所において実施可能要件について審理されていたAmgen事件ですが、2023年5月18日に判決が下されました。
結論は、満場一致でCAFCの判決結果を支持する(本件特許は実施可能要件を満たしておらず無効)というものです。判決文はこちら。
また、本件に関する概要は下記の記事をご参照ください。
所感
私の個人的な肌感覚ですが、結論としては予想通りだったように思います。
ただ、おそらくですが、この分野(ライフサイエンス)の方たちは、本件の個別的な結論よりも、最高裁から何らかの具体的な指標が出ることを期待していたように思います。本特許が実施可能要件を満たさないとするのは良いとして、では具体的に何を記載すれば本要件を満たすのか?という疑問に対する一つの回答ですね。
残念ながら、この点について最高裁は何も明言していないように感じます。というよりは、昔から示されていたルール以上のことは言っておらず、より踏み込んだルール作りなどはしていないように思われます。そういう意味では、せっかく最高裁で受理された案件だったのに、何だか肩透かしをくらったような印象もあります。
Take Away
本事件を今後の実務にどう活かすのか、という点ですが、おそらくこの分野の出願人や実務者としてできるのは、
① 実施例を充実させる
② 権利範囲を限定する
という程度しかないのかなぁ、と感じます。
即ち、本件では権利範囲全てが実施可能であることを示すだけの十分な開示(実施例)がない、ということで権利が無効になっていますので、①開示する実施例をもっと増やして対応するのか、②具体的に開示している実施例の範囲まで権利範囲を狭める、という対応を採らざるを得ないように感じます。
ただ、本件特許も400ページを超える膨大な明細書を用意しているにもかかわらず不十分、とされているので、特に本件特許のような発明については②が現実的な対応になってしまうのかも知れません。
それで発明の保護として十分なのか、特許制度の在り方そのものに対しても批判が出そうな気がします。。。