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東京芸術祭ファームスクール×有楽町アートアーバニズム YAU「ファーストライン」レポート

ユース世代の出会いと交流プログラム「ファーストライン」
東京芸術祭が取り組む人材育成事業「東京芸術祭ファームスクール」では2024年度、まちがアートとともにイノベーティブな原動力を生み出すためのパイロットプログラム「有楽町アートアーバニズム YAU」と連携し、ユースプログラム「ファーストライン」を開催しました。

参加者たちのバックグラウンド
同プログラムは、パフォーミング・アーツを主としたアートマネジメントに興味のある10〜20代の方を対象とし、8月から9月の約2ヶ月にわたり、多様なアーティスト・アートマネージャーとの対話、創作現場や作品を見る機会などを通じて、東京芸術祭やYAUに集まる様々なプロフェッショナルの考えに触れる機会を提供するものです。
公募によって選ばれた今回の参加者は、学生や社会人まで16名。舞台芸術に関するキャリアももちろん違い、現場で制作者として活動している人、アーティストや研究者として舞台芸術に関わることを志す人、あるいは、将来やりたいことをこれから学ぶ中で考えていこうとしている人もいます。

参加者が体験したプログラム
2024年度のプログラムは、以下のような構成です。
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・8月1日(木)キックオフ、山﨑健太さんによるレクチャー、交流会 @YAU STUDIO
・8月8日(木)MUGAI(YAU STUDIO Y-base レジデント・アーティスト)の稽古場見学 @YAU STUDIO
・8月9日(金)小倉由佳子さんによるレクチャー、MUGAIの稽古場見学 @YAU STUDIO
・8月16日(金)深井厚志さんによるレクチャー @オンライン
・8月23日(金)荒井洋文さんによるレクチャー @YAU STUDIO
・8月26日(月)山﨑健太さんによるレクチャー @YAU STUDIO
・8月27日(火) 東京芸術祭参加団体(円盤に乗る派)の稽古場見学 @東京芸術劇場
・8月29日(木)田村かのこさんによるレクチャー @YAU STUDIO
・9月3日(火)東京芸術祭参加団体(チェルフィッチュ)の稽古場見学 @急な坂スタジオ
・9月上旬〜下旬 稽古場レポートの執筆
・9月中旬〜下旬 東京芸術祭 2024 上演プログラムの鑑賞(木ノ下歌舞伎、円盤に乗る派、コンドルズ、チェルフィッチュ)
・9月16日(月)山﨑健太さんによる稽古場レポートの中間フィードバック @YAU STUDIO
・9月21日(土)近藤良平さん、石渕聡さん(コンドルズ)とのスクールトークサロン @東京芸術劇場
・9月22日(日・祝)木ノ下裕一さん(木ノ下歌舞伎)とのスクールトークサロン @東京芸術劇場
・9月30日(月)山﨑健太さんによる稽古場レポートの最終フィードバック、各々のアートマネジメントと関わる未来を考えるワーク、交流会 @YAU STUDIO
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参加者たちは、多様なアーティスト、アートマネージャーとの対話や、創作現場や作品を見る機会を通じて、東京芸術祭やYAUに集まる様々なプロフェッショナルの考えに触れていきました。

レクチャーでは、第一線で芸術活動に関わりながら、同時に様々な領域に活動範囲を広げたり、芸術文化の環境の更新に取り組んでいるアートマネージャーたちが登壇。参加者たちは、アートマネジメントが対象として捉えうる範囲の広さと、理念を具体化していくための実践を知って、これからのアートマネージャーの仕事のあり方について、考えを深めていきました。

荒井洋文さんによるレクチャー

またクリエイション現場の見学では、演出家との対話から、そのアーティストがこれから具現化しようとしている作品のイメージを想像するとともに、稽古の様子(作品内容の稽古に限らず、ワークなど)を見学し、時には一緒に身体を動かすことで、カンパニーが作品創作のために行なっている多様な手法に触れることができました。

チェルフィッチュの稽古場見学

稽古場見学とともに、参加者が取り組んだのが稽古場レポートの作成です。アートマネージャーにとって、アーティストの活動を言語化することは非常に重要なスキルです。稽古場見学で得られた限られた断片的な情報から、そのアーティストの実践を言葉にすることを、参加者は試みました。参加者が書いたレポートを批評家の山﨑健太さんが読み、フィードバックをすることで、内容をさらにブラッシュアップしていきます。そうして完成した稽古場レポートは、アーティストのもとに届けられました。

山﨑健太さんによるレクチャー

このほかにも、東京芸術祭の演目鑑賞をし、鑑賞後に作品を起点に話し合う「スクールトークサロン」などのプログラムへの参加を経ながら、参加者は知見を深めていきます。ファーストラインのプログラム以外にも、YAUや東京芸術祭でのトークなどに積極的に参加しており、プログラムを渡り歩く様子が印象的でした。

※スクールトークサロンの様子はこちらの記事にて紹介しております。

東京芸術祭 2024 上演プログラム鑑賞(木ノ下歌舞伎)

ファーストラインが大事にしているのが「出会いと交流」。毎回プログラムごとに、講師なども交えて交流会を開き、参加者同士で語り合う中で、お互いの活動や興味を知っていきます。

交流会の様子

そして迎えた最終日。プログラムの内容を振り返りつつ、各々のアートマネジメントと関わる未来を考えるワークを開催。プログラムを通じて参加者それぞれが出会ってきたことをシェアしてもらいながら、これから実践したい行動を紹介してもらいました。

アートマネジメントと関わる未来を考えるワーク

ファーストラインの「次」に向かって
終了後に参加者からは、
「ウォーミングアップやワークショップのような取り組みが俳優や作り手にとってどのような影響を与えるものなのかもっと知りたいと思いました」
「皆さんのお仕事へのプロフェッショナルな態度をみて、かっこいい!!ああいうふうになりたい!と憧れました」
「初日のぼやっとした解決したい方向や考えが、いろんなレクチャーを経て、最終回で具体的にどうすればいいかを考えるところまでたどり着きました」
「大学以外に、演劇に関心のある同世代がこんなにいるんだと驚き、希望を感じました」
「既に舞台芸術の世界で働いている人も、舞台芸術の世界で働くことに関心のある学生も、それぞれ似たような経験や悩みがあり、分かり合えた。本プログラム外でも会って話す未来がありそうです」
など、多くの声が寄せられました。

10〜20代というかけがえのない時期に、学校等の所属を超えて同世代の参加メンバーと共に2ヶ月のプログラムを経験することにより、その人ならではの志向するものやキャリアデザインについて考え、ファーストキャリアを歩み出すきっかけとなったのではないでしょうか。

(藤原)