走馬灯
君の手が、僕の首に手をかける。
視界がぼやける。トクトクと心臓の音が鼓膜の奥に小さく響いている。
首を絞めて、
そう頼んだのは何回目だろうか。
このまま永遠に眠ってしまいたい。一瞬でも誰かが僕を射抜くように見つめてくれる。そんな幸せなことなんてない。
苦しい。そう感じて目をぎゅっと瞑る。
やがて、首にかけられていた手のひらの力がふと、緩んでいく。
毎日を削っては渡して、削っては渡してを繰り返している。
削られた部分がヒリヒリと痛い。
今日も死ねなかった。
いや、今日も生きてしまっている。
古傷は永遠に完治することなんてない。
私にとって自分自身を犠牲にすることが自分を守る一番の方法なのかもしれない。
そんな風に毎日を手作りして、それがたとえ継ぎ接ぎであまりにも脆かったにしても、これは私の物語だって言えたらどんなに幸せなことだろう。
午前4時44分、窓を開ける。
絵の具のバケツに広がる、綺麗な水色の色水に白と黒を混ぜた、そんなような空が続く。
微かにオリオン座が滲む。
この星たちもきっともう少ししたら消えてしまうのだろうか、
確かにずっと存在しているはずなのに太陽が登ってしまったら、元々そこには何もなかったかのように一日が始まってしまう。
深夜から早朝にかけては特に息がしやすい。
日中、ごちゃごちゃとしていて考えられなかったことをその時だけは誰にも邪魔されずに私だけが私を抱きしめることが出来る。
走馬灯のように僕の叫びが、苦痛が、物語が頭の中心から外にかけて溢れて止まらなくなる。
どうしようもなくなって、さっきまでしやすかった息が上手く吸えなくなる。
溢れ出たものを我慢することなく思い切り出してみる。
そうすると、長く息を吸えるようになる。
目を閉じる。頭の中も心なしかぼうっとして、十分に溢れ出て空っぽになったのか、さっきまで鮮明だった考えが嘘のように靄がかっている。
そうやって毎日騙し騙しで生きている。
勘違いすることはきっと幸せな事だから。
今日も
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