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ダンジョン・ワールドをソロプレイ 準備編



このプレイログについて

このプレイログは、「ダンジョン・ワールド」を「ソロ・ダンジョン・ワールド」を使ってソロプレイを行ったセッションの記録になります。

一部にルールの意図的な改変や省略、単純な誤解があります。

ダンジョン・ワールドとは?

ダンジョン・ワールド」は、詳細に設定されたシナリオを進行したりデータ的にダンジョンを攻略するというよりは、参加者の会話とアイデアで物語がオンタイムで進行する、「対話型」特化のTRPGのひとつです。
剣と魔法の空想世界を舞台に、キャラクターたちは様々な困難や課題を「ムーブ」で切り開き、それによって自分たちの物語を形作っていきます。参加者全員が紡ぎ手であり、語り手であり、そして自分たちの物語の熱狂的なファンになれます。
「ダンジョン・ワールド」は歴史が長く、ファン活動が盛んなゲームです。プレイブック(クラスの追加データのようなもの)を中心として様々なファンメイドのデータが公開されています。

日本語版は現在無料公開されています。
ダンジョン・ワールド:日本語版

ソロ・ダンジョン・ワールドとは?

Solo Dungeon World」は、Parts Per Million制作の同人サプリです。24ページの簡単な小冊子で、ソロプレイで「ダンジョン・ワールド」を遊ぶ方法が提案されています。
一人で「ダンジョン・ワールド」を遊びたいなら、このサプリを買うべきか?という質問には……私は自信をもって「はい」とは(とても)言えません。なんというか、自己責任でお願いします。

キャラクター作成

プレイヤーキャラクターは通常の「ダンジョン・ワールド」のルールに従って作成します。

クラスはファイター、種族は人間を選択します。巨大な槌を手に戦う青年戦士です。

彼の名前は「ホーク」、ただでさえ危難に満ちたこの大陸で、より強大な困難を求めてさすらう武芸者です。彼は戦いの中で磨かれていく強さを欲しているためにより強い敵を求めぶつかっていきますが、その姿は傍目にはただの狂人として映るでしょう。
武器は古めかしい、金属製の槌です。この槌はバカでかく、凶悪な重量(「フックととげとげ」相当)で打撃力を強めています。これに殴られた敵は風船のように吹き飛び、物は粉々に壊れてしまうでしょう。

彼はトロールに制圧された故郷「メイアの村」から逃げ出してきた、ただ一人の避難民です。故郷と故郷の人々がどうなっているかは、誰も知りません。トロールは凶悪で強力、きわめて危険な魔物であり、その勢力下に近づけば、常人ならまず命はないでしょう。
ホークは本来朗らかで親切な力持ちの青年ですが、自分の務めのために心を閉ざし、冷たく振舞っています。しかし、かつて多くの大人たちがその命と引き換えに村から逃がしてくれた自分と重ね合わせてしまうところがあり、危険にさらされている子供を見ると一も二もなく助けてしまいます。

キャラクター紹介

フロントの用意

ダンジョン・ワールドの冒険は、とにかく目の前の危機に対処することから突然始まります。プレイヤーキャラクターは差し迫った状況に放り込まれ、その解決をゆだねられます。
「ソロ・ダンジョン・ワールド」においてキャラクターが直面する「危難」の詳細は、ダイスを振ることで決めることができます。この表を利用して、キャラクターが解決すべき「フロント」の性質を決めてみましょう。

危難表:4…Usurpation(簒奪、不法侵入、横領)

ホークが武芸を磨く旅のさなかで宿を求めた小さな国ウフラルで、王権の剥奪を目的とした内戦が勃発しました。王族たちは次々に殺され、亡国となりつつあるウフラルの希望である幼い王子、エルディが逃がされました。
王権の剥奪を目論む敵の一派は、王子を血眼で探しています。彼を殺してしまえば、王族の血脈は息の根を止められたも同然だからです。
ただの旅人であるホークと、ウフラルの王族であるエルディの運命は、本来なら交わらないはずでしたが……

最初のアドベンチャーフロントが完成しました。このフロントに「ウフラル第三王子エルディの危機」という名をつけることにしましょう。
さらに、このフロントを構成する「危難」について詳細を決めていきます。

オープンテーブル:1-9…fanatic(熱狂、狂信)
オープンテーブル:6-5…faction(一派、党派)

王子を追い詰めているのは、狂信者の一味です。
彼らは本来なら王族を守るべき影の者でした。しかし、知らず知らずのうちに反逆者たちの精神汚染の魔法で狂わされ、今では聖なる王族の血肉を貪り自分たちをさらに高めようと欲する悪鬼と化しています。
危難の名前は「影の一党」、「野望を抱く組織/カバラ」であり、その欲求は「欲求:権力の座にあるものを取り込み、勢力を広げる」ことです。
「影の一党」がもたらす「差し迫った破滅」は、「王子の殺害と嗜食」です。それに至る過程である「不吉な兆し」の一つは、「悍ましい儀式から逃げ出す王子を追いかける」です。ほかの「不吉な兆し」は、セッションの中でランダムに決めたり、状況に応じて決めていくことになるでしょう。

オープンテーブル:1-12…intoxicating(酩酊、熱狂、意気揚々、有頂天)
オープンテーブル:2-7…volcano(火山、激情、憤激)

現在、この国西方のヴェイスウィック山脈では火山の神ウォフレーが宴を開催しています。数々の強大な神格が険山の峰に降り立ち、神々の美酒に酔ってどんちゃん騒ぎを繰り広げています。ただの人の身にとって、ヴェイスウィック山脈は今や絶えず爆発が起きている火薬庫の百倍は危険な場所です。
このために西方に逃げることはできないと反逆者は踏んでいて、東の港や数少ない道をがっちりと固め、監視しています。
危難の名前は「ヴェイスウィック山脈の神々の宴」、タイプは「呪われた場所/力を秘めた地」です。その欲求は「享楽と騒乱に何もかもを飲み込む」ことです。この危難は「西方に立ち入ることができず、ほぼ確実に捕まる東の道へ行かなければならなくなる」、あるいは「神々に接触したPCたちを弄んで理不尽でひどい神罰を与えてしまう」という「差し迫った破滅」を含んでいます。不吉な兆しの一つは、「ヴェイスウィック山脈に立ち入ることをNPCから強く止められる」という形でもたらされます。

冒険の開始

「ソロ・ダンジョン・ワールド」において、冒険は質問とダイスロール、オープンテーブルを使用して進行していきます。また、「ダンジョン・ワールド」で使用するムーブ、GMムーブも使用することになります。

ダンジョン・ワールドでは場面ごとに冒険を分けるルールは存在しませんが、こうして記録に残す便宜上、物語における場面ごとに区切りをつけてプレイすることにします。

場面1:それは肉である

「助けてください!」
疲弊しきった小さな肺を精一杯振り絞って叫び、一人の子供が俺の視界に飛び込んできた。
子供はほとんど裸で、おそらくは穀物が入っていた袋らしい古びた粗末な麻布を体に巻き付けているようだ。真っ白な肌には赤黒い塗料で呪術的な文様が描かれている。輝くプラチナブロンドに、夢を見るような琥珀色の瞳。恐怖と疲弊で、その美貌は見る影もないようだ。

旅の途中、小国ウフラルで運悪く立ち会ってしまった政変を逃れ、きなくさい王都から抜け出した旅の途中。夕暮れ近く、周囲は静かで、街道の両脇に広がる森の奥にはすでに気の早い夜が訪れていて見通しが効かない。

「狼にでも追いかけられたか?」

間違いなく、そうではないだろう。子供を追い回している何かが、この森の奥からもうすぐやってくるということだ。
俺は肩に担いだ槌を下ろし、挑むように口角を歪めて辺りを見回す。

質問:俺は、短刀を持って走ってくる「影の一党」に先制攻撃ができるだろうか?
ダイスロール:4/いいえ。「影の一党」は恐るべき速やかさで森を抜けだし、あなたの後ろに回り込んで、まずは子供を捕まえようとする。

夕闇そのものを住まいとしているかのように、襲撃者の行動はごく自然で、そして速やかだった。
3人の、小柄で細身の影。暗い色に染められたツナギのような服を着ていて、顔の前には薄布を一枚垂らしているため、男か女かさえはっきりとしない。分かるのは、その体に纏う凍えるような殺意だけだ。
黒く塗られた短刀が、子供めがけて振り下ろされる。俺はとっさに飛び出して、それを自分の肩に受けた。

ダメージダイス:3/影の一党Aから1点のダメージ
HP:
25→24

鎧の表面を擦って刃が滑り、大した傷にはならなかったようだ。
俺は子供を背にかばい、愛用の槌を両手に構えた。
「こいつらは、山賊か何かか?」
「いいえ! 彼らは……彼らは……」
子供はひどい疲弊と興奮でまともにしゃべれず、激しく咳き込んだ。俺は対して気にもせず、ただ三人の黒衣の敵を眺めて狙うように目を細めた。
「どんな理由だか知らねえが……子供を裸にして追い回すような連中に、一分の理もあるとは思えねえな」
不意打ちが有効に働かなかったことで、敵は体勢を整え俺を正面から叩き潰すことに決めたようだ。短刀を構え直し、俺を取り囲むように散開して、ぶつぶつと唱える。

「それは我らの肉である」
「それは我らの聖餐である」
「それは我らの祝福である」

なるほど。子供の体に描かれていた模様は、そういうわけか。
嫌悪が胃の底をじりじりと冷やしている。俺は槌を軽々と振り回し、切りかかろうとしていた黒衣の敵の一人を全力で殴りつけた。

ムーブ:《ハックアンドスラッシュ》
ダイスロール:6+2/ダメージを与えるも、反撃されてしまう。
ダメージダイス:4+1/影の一党Aに5点のダメージ
ダメージダイス:1/影の一党Aから0点のダメージ

槌で殴りつけられた黒衣の敵は、悲鳴を上げて吹き飛び、森の木立の中に頭から突っ込んだ。かなり戦闘慣れした敵のようだが……連携して攻撃をするつもりでも、これだけ引き離してしまえばかなり手間取るはずだ。

「危ない!」

子供が悲鳴を上げる。回り込むようにして俺の視界を外した連中が、死角からナイフを突き立てて来ようとしている。このままでは連携に優れた暗殺者二人に囲まれ、かなり不利な戦いを強いられてしまうだろう。

ムーブ:《危機打開/STR》
ダイスロール:7+2/成功するが、ヘマをするか、躊躇するか、たじろいでしまう。

俺はその刃をかわすため、爆発的なダッシュを掛け、あえてその懐に飛び込んだ。それは奇襲としてはなかなかいい線を行っていたかもしれないが……

(しまった)

黒衣の敵は刃を握り直し、俺を抱きしめるように腕を回して振り下ろしてくる。
肌がこすれるような距離だ。長柄の槌を使う俺にとって、この間合いは死地でしかない。

GMムーブ:《影の一党:短刀による攻撃》
ダイスロール:5/攻撃は失敗する。

とっさの判断がうまくいった。そいつの顎に伸び上がるような頭突きを叩き込んで、俺は距離を取った。

ムーブ:《ハックアンドスラッシュ》
ダイスロール:12+2/ダメージを与え、反撃をよける。反撃に身をさらす代わりに、ダメージに+1d6することを選択してもよい。
ダメージダイス:8+1/影の一党Aに9点のダメージ

茂みから立ち上がって俺の後ろに忍び寄ろうとしていた敵に、振り向きざまの捻りをつけて槌を叩き込む。その胴体が大きくひしゃげ、そいつはきりもみ回転しながら吹き飛んで動かなくなった。

「死んだか」

俺は薄く笑って、残り二人の敵を見回す。

「子供を肉と呼ぶような邪悪な連中なんて、何人叩き潰してやっても構わないな」

黒衣の敵は黙して死線をかわし、そして恐るべき速さで駆け出した。森の暗闇のに飛び込んでしまうとその姿はすぐに夕闇に紛れ、追いかけることはできなくなった。
俺は槌を肩に担ぎ、子供を振り向いた。

「怖がらせちまったな」

肩をすくめる。笑ってやれればよかったんだが、今のこの子供の姿を見るとどうしても顔つきが険しくなってしまう。
肉。肉だって? 聖餐だって?
悪趣味な儀式の中で殺し、胃の中に納めるために、こんな子供をさらってきたっていうのか? 服を引きはがし、紋様を描き、闇の奥の何かに祈っていたのか?
胸の奥に黒い靄が広がるようだ。ひどく不愉快で、抑えられない怒りが湧き上がっている。

「あ、あの……」

子供の瞳が俺を見上げる。少し不思議な気分だ。子供はまるで俺に怯えていないようだった。

質問:子供は俺にどんな話をするだろうか?
オープンテーブル:1-18…torch/たいまつ、光、燃えるような恋心
オープンテーブル:3-18…possession/持ち物、所有権、財産

「光の血筋……ぼくたちは、そう呼ばれています。それが、こうして襲われた理由です」
「光の血筋……」

聞き覚えのある名前だ。そう、それはまさしくこの王国で燃え尽きつつあるたいまつの名前ではなかったか。ウフラルの気高き光の血筋。いと高き高貴なる王族に連なる者たち。
まいったな、と、俺は頭を掻いた。

「王子様を助けることになるとはね」
「助けていただき、感謝しています」

子供はぺこりと頭を下げた。

「旅の戦士とお見受けします。危険なお願いをすることになりますが、どうか助けてはいただけないでしょうか?」
「大人びた口調で話すもんだなあ」

場違いな感心をしてしまうが、子供は澄んだ瞳で俺を見つめるばかりで呆れる様子もない。じっと答えを待たれている、そんな感覚で居心地が悪かった。

「まずは、話を聞かせてもらいたいところだが……襲われたばっかりのところで棒立ちになって話すようなことでもなさそうだな」

俺はしゃがみこんで、子供の体に巻き付けられていたぼろ布に手をかけた。ぐっぐっ、と引き上げて改めてその体に巻き付け直し、ベルト替わりに冒険道具の中のザイルを腰に巻かせる。
こんな身なりの子供を前に、よく王子様だなんて信じたもんだ。我ながら少しおかしくて、俺は笑いをこぼした。

「ぼくの格好、変ですか?」
「変か変じゃないかで言えば、変だよ」
「……そんな気はしてましたけど、これしかなかったんです」

恥ずかしがるように目を伏せる子供の頭を軽くぽんぽん、と撫でて目配せを送り、俺は歩き出した。

次回へ

今回はフロントの作成を行い、「ソロ・ダンジョン・ワールド」のプレイ感覚を掴むために危難の1つに対処する場面をプレイしました。

次回からは今回作成したフロントを活用し、冒険の続きを綴っていきたいと思います。

ダンジョン・ワールドをソロプレイ 本編1

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