エンジェルトランペット
R02.10.31
魔物に魅入られ魂を奪われかけた。
最悪な1日だった。
トルネード、全てを奪って逃げて行く。
握り締めれば簡単に潰れてしまう心臓、ガラスよりも脆い心、潮が引くように消えていく慈しみ。
もっと強くなりたい。
何があっても傷付かないように。
もっと鈍感になりたい。
誰かの恨み辛み苦しみをぶつけられても涙しないように。
もっと優しくなりたい。
ただ、震えた肩を抱き締めるだけの余裕が欲しい。頭を撫でる勇気も、差し出された手を素直に繋ぐ勇気もなく、綺麗な涙を掬う事すら出来ず、出しかけた手を宙に投げ出し何もなかったことにするなんて...ヒトとヒトの狭間で生きる人間の癖に愚かで生意気だ。
「私のために泣かないで。
なんで、君が泣くんだよ。」
困ったように笑う横顔を私は一生忘れないだろう。
エンジェルトランペット
不思議な香りを撒き散らしヒトを惑わす恐ろしい植物。
儚げに項垂れる可憐な君には毒がある。
出先で偶然目にしたソレには、確かに魔物が潜んでいた。これは全て君が見せた幻であって欲しい。そう願いながら、深い溜息と共に意識を手放したのだった。