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勤続期間での分類は大事です?[給与時系列データ④1年勤続者]

国税庁「民間給与実態統計調査・長期時系列データ」を順々に見ていくシリーズ。第4弾は「勤続期間」ごとの給与関連データです。

国税庁は年間の所得に基づく所得税額の決定に強い関心があるため、「年」という区切りを大切にしています。実際、以下の項目でデータが分類されています。

  • 1年勤続者

  • 1年未満勤続者

逆に、データを観察する側のわたしたちはこの分類がなされたデータかどうかを意識する必要があります。

また新たに「性別」による分類がでてきます。性別と給与には相関があるでしょうか?あるとすれば、どんな風に…?


分類

この記事で意識しておきたい分類の組み合わせは、「勤続期間」と「性別」の掛け合わせで4通り。

  • 給与所得者 - 男 - 1年勤続者

  • 給与所得者 - 女 - 1年勤続者

  • 給与所得者 - 男 - 1年未満勤続者

  • 給与所得者 - 女 - 1年未満勤続者

これらについて、「給与所得者数」、「給与総額」、「平均給与」、「平均給料・手当」、「平均賞与」を見ていきます。

元データにはさらに「税額」がありますが、このシリーズでは無視します。

性別・勤続期間別の給与所得者数

日本人の働き方をイメージすると、1年という期間の間に職を転々とするよりは、長い間ひとつの会社で働き続けている姿が想像できます。

データ上はどうなっているでしょうか?直近で6,000万人の給与所得者数を分類すると…

実際、多くの人が「1年勤続者」に該当します。男女とも。それでも、ざっとあわせて1,000万人が1年未満勤続者です。新規就職者、転職者、新卒者などでしょうか。

1年勤続者は圧倒的に男性が多いですが、近年の1年未満勤続者は一貫して女性の方が多いです。理由はわかりません。

2000年を前にして男性の1年勤続者はしばらく減少しました。この理由はまた別の記事で見ることになるかと。さらなる分析には分類項目として年齢階層が必要ですから。

性別・勤続期間別の給与総額

次いで、給与総額を見ていきます。給与総額とは、支払われた給与を全員分集めた金額で、単位は「兆円」規模になります。

先ほど見た「給与所得者数」とは明らかに様子が違っています。男性の1年勤続者がもっとも給与を受け取っています。

1年未満勤続者は給与総額でみると少額に貼りついています。

全体でみて、女性よりも男性の方が給与をもらっている傾向がありますね。

ただ、バブル崩壊、リーマン・ショックといった経済事象が給与に及ぼす影響は1年勤続者の男性に集中しているようにも見えます。

性別・勤続期間別の平均給与

ここまで見てきた2つの統計データを使って、平均給与が計算できます。単純に、給与総額を給与所得者数で割ってやれば平均給与になりますね。

ここでは、古いデータもある「男女計」を灰色で表示してみました。

「平均給与」というキーワードで調べた場合にまっさきに出てくるのは、一般的には濃い灰色の「男女計、1年勤続者の平均給与」でしょう。

ただ、平均についてよく言われるように、平均額をもらっている人がたくさんいるわけではありません。

平均より多くもらっている男性が比較的多く、平均より少ない女性が比較的多い。結果的に、平均給与が400万円台になっている。ざっくりとそんな感じです。

性別・勤続期間別の平均給料・手当

国税庁の統計では「給与」を細分する項目として「給料・手当」と「賞与」が設定されています。

まずは「平均給料・手当」の推移を見てみましょう。

「給料・手当」は「給与」のグラフとそっくりですね。給与の大半は「給料・手当」であるようです。

性別・勤続期間別の平均賞与

次いで、平均賞与(=平均ボーナス額)の推移。

ちょっとエグみのあるグラフになりました。

「男性は平均で120万円もボーナスもらっとったんかーい!」というバブリーなピークが記録されています。2023年でも全然その水準に戻せていません。

「平均給料・手当」とくらべると、女性でも全体の傾向に追随するというか、しっかりと経済動向の影響を受けているように見えます。

1年未満勤続者はあまりボーナスをもらえていませんが、それでもバブル期は…。

おわりに

ここまで、性別と勤続期間による分類で給与データを見てきました。

多くの場合に平均給与は「男女計、1年勤続者」の金額で示されますが、性別でまとめるのはかなりの情報を失うことになります。

一方、年収を語るにあたり「1年未満勤続者」を対象から除くのは合理性がありますね。

次は賞与割合の推移

次の記事では給与における賞与割合の変遷について調べます。賞与が給与全体を左右するような気がしたからです。


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