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【コラム2回目】小川彌生著「きみはペット」は現代向き?癒しのゆくえ

こんにちは。

前回に引き続き、漫画作品に関して書いていこうと思います。

2回目の記事のテーマは小川彌生先生の「きみはペット」という漫画作品についてです。

この作品は2000年に連載開始し、2003年には小雪・松本潤の配役で初ドラマ化、その後2011年韓国での実写映画化、2017年に日本での再ドラマ化。
メディア化が多かったためタイトルを知っている方も多いと思います。今年は原作の配信も始まっているので配信で読んだ方もいらっしゃるのではないでしょうか?

そんな私も、今年配信で読み返してみて、改めて良い作品だなあと思った人間です。なので、熱のあるうちに思いをしたためたいと思いました。

多くの人に読んでいただきたいのでネタバレは控えさせていただきますが、抜かせない大事なポイントは書いていきます。ですがなるべくソフトに書いていきますので心配ないかと思います。


私がこの作品を知ったのは小学生の頃。ドラマを見て興味を持ちました。記憶がややうろ覚えですが、クラスメイトに漫画を何冊か貸してもらったことがあり、1巻表紙の刺激の強さにびっくりしました。それからは自分でも少しずつ漫画を集め、親子で楽しんで読んでいました。

まずこの作品ですが、主人公「スミレ」は東大出身の高学歴、そして高身長、モデル顔負けの美貌の持ち主。大手新聞社で働くキャリアウーマン…ですが、恋愛がうまくいかない、行きたい部署で仕事ができない、など自分の持っているカードをうまく活かせない29歳。
ある日仕事が終わりマンションに帰ると、マンション前に古い段ボールが。恐る恐る中を見てみると人間の男の子…。弱っている様子だったため家に連れ帰り食事を用意。
1話はそんな導入から始まり、行くところのない彼に彼女は

と囁きます。モモも快く承諾し、奇妙な共同生活が始まるのです。


私は配信で読み返し、感想コメントも拝読したのですが、スミレのこの行動について不純だと言う意見もありました。私は当時小学生だったため、恋愛ごとはわからなかったし、男女がたどる順番も線引きも何も分からずこの作品に触れました。
なので、連載当時私も20歳を過ぎた大人なら、同じ感想を持ったのかなと感じます。でも、感じなかったかもしれません。なぜでしょう?
確かにスミレのやっていることは若い男性との共同生活なわけですから何かあっても不思議じゃないわけです。
ですが本人同士の中では一線も越えず、ただの飼い主とペット(ヒト科)として生活します。ごはんはもちろんヒトが食べるものを2人で食べます。お風呂はスミレが目を隠しながら犬猫のように全身洗浄。
文字にすると「どんな内容?」と思われるかもしれませんが、小川先生の漫画の特徴であるコミカルな描写が多いため、読者もそのまま受け止めてしまう説得力のあるシーンが多いです。
なので受け入れてしまったのかもしれません。
作中でも、この関係をどうしたらいいか戸惑う2人の描写もありました。
本人たちも、奇妙だというのは自覚しながら生活していたんですね。

スミレは非常に努力家で、仕事もできる女性。胃痛を抱えながらも仕事を淡々とこなす真面目な性格です。その性格ゆえに、社内では孤立していましたが彼氏の存在があったため周りにはなんでも持っている高嶺の花といったイメージで見られていました。
ですがスミレの場合、安心できる存在は本当は彼氏ではなくペットのモモでした。モモには素を見せられる。何か嫌なことがあればモモの髪を撫で、昔飼っていた犬に思いを馳せながら癒しをもらう。
彼氏の前では本音も言えず、タバコも吸えない。
泣きたい時には彼氏の前で泣ければいいのに、モモにしか涙すら見せられない弱い女性。
そんな彼女の内面を知っているのはモモだけ。
彼女の周りには彼女のことをイメージだけで貶したり、想像だけで判断して敬遠したりする人がたくさんいましたが、モモだけはスミレのことを受容し、イメージだけで判断しない懐の深さがありました。
それはモモも才能だけで判断されてプレッシャーを受け続け孤独な日々を送ってきた経験から作られた性格なのでしょう。

2人は違うスペックの存在と思いきや根の部分では一緒で、スミレだけが一方的に支えてもらっていたわけではなく実は支え合っていたわけです。

スミレは、全容を知っている読者にとっては二股をしている女性のように映ってしまうかもしれませんが、彼氏とうまくいっていなくてモモで代用しているのではなく、彼氏に対しての憧れが強すぎて極度に嫌われることを恐れてしまい、モモにしか心を開けなかった。

彼氏とスミレは高学歴で同じ大手新聞社で働いているのですから、時間をかければスミレの緊張もほぐれたかもしれません。
ですがその前にモモの存在の大きさを自覚できるほど大きくなってしまい、スミレは困惑してしまいます。

スミレは29歳。結婚を考える歳です。
この歳なら近しい人は結婚していくし、彼氏がいれば結婚の話が出てくるのが自然な年頃です。
いくら結婚が全てではないという言葉が普及していても、昔から染みこんだ「当たり前」は消えないでしょう。「おひとりさま」という言葉は現代では普及しているので一人行動をしている人もよく見かけるようになりましたし、それを見たとしても誰も批難しません。
ですがスミレは女性。女性は男性と違って結婚と同時に妊娠のことも考えなくてはなりません。
そんなデリケートな年頃で仕事も恋愛もしている時、何かに癒されたいと思うのは自然なことだと思います。

それはこの漫画のようにヒト科のペットを飼おう。という突飛なことではなく、自分を癒す時間を作って自分を労ってあげること。
モモといる時のような、ほっとできる時間が現代にも増えたらいい。
現代は複雑になっていますから、気疲れも多いことでしょう。昔常識だったことも今は古くなってしまい、相手に通じないこともある。
そんな中、一人で立ち向かうには厳しい。
そんなに強い人間ばかりじゃないはずです。
自分の人生に迷った時、自分をゆっくり休ませてあげられるような人間に私もなりたい。
そしてモモのように、他人を受容できる優しさも持ち合わせていたい。

生活に疲れてしまった人にほど、読んでほしい1作です。


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