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音楽日誌2024年12月2日〜12月6日

12月2日月曜日2024年最後の月の最初の平日はおだやかな晴れ

Spiritualized
Music for William Eggleston's Stranded In Canton
Fat Possum Records

ニュー・カラーなる写真史の潮流を代表する写真家のひとり、ウィリアム・エグルストンが1973年にソニーのビデオカメラ「ポータパック」で生地メンフィスと、ニューオリンズを記録したドキュメント『Stranded In Canton』にJスペースマン(ジェイソン・ピアース)とジョン・コクソン、スピリチュアライズドのふたりが音をつけたライブ盤。録音は2015年なので10年ごしのリリースとなる。#music_journal〈25〉
おそらくビデオの元の音源も活かしたライブなのでよくある無声映画+劇判の図式とはことなるが、それがかえってサイケデリックなサウンドとマッチしているというか、ある時期の米国南部の匂い立つかのごとき空気感を連想してやまない。#music_journal〈25〉
それにしてもロバート・フランクの昔から、スティーヴン・ショアやエグルストンにラリー・クラーク、映画になったユージン・スミスしかり、写真と映像とを問わず、イメージが音に備給するものの大きさを、本作もまたあらわすかのよう。#music_journal〈25〉

12月3日火曜日きのうよりひきつづきのおだやかな晴れ

Mercury Rev
Born Horses
Bella Union

2019年の前作『Bobbie Gentry’s The Delta Sweete Revisited』は客演こみでボビー・ジェントリーの1968年作をまるまるカバーしたアルバムだったのでオリジナルとしては2015年の『The Light in You』以来の通算8作目。#music_journal〈26〉
いつもながらの夢見がちな内容だが、結成35年を迎え、サウンドはバンド然としたものから作家集団的な職人ポップへ。ストリングスやホーンをふくめ、スタジオワークの粋を集め、スケールも大きいが、なんか昔からいまひとつ入れ込めないのは相性のせいなのかしらん。ボビー・ジェントリーもファーストのほうが好きだし。#music_journal〈26〉

12月4日水曜日一昨日からひきつづきのおだかやな晴れ

Jim O'rourke
Steamroom63
Steamroom

のちにタヒチ80のプロデュースを手がけるパスカル・ドージエが運営した仏のカセットレーベルS.Jオーガニゼーションに提供した音源で、ザッと調べたていどだが、リリースにはいたっていない模様。#music_journal〈27〉
録音は87〜88年というから作者の公式ディスコグラフィに照らすと最初期にあたる、その中身はAMMのキース・ロウの代名詞、テーブルトップギター(テーブルに寝かせたギターの弦を弓で擦ったり、爪弾いたり、ボディを叩いたりして音を引き出す演奏方法)のソロだというが、音量や音色や展開のたくみな構成はやりっぱなしの即興とも思えない。いまだ十代でこれはさすが。#music_journal〈27〉

11月28日木曜日一昨昨日からひきつづきのおだやかな晴れ

Jim O'rourke
Steamroom64
Steamroom

こちらも同時期のテーブルトップ・ギターによる録音で、場所はシカゴのギャラリー「Holsum Roc」や「Links Hall」や「Exit」などクラブらしいが、正確にははわからないとのこと。#music_journal〈28〉
曲名の「Somewhere」はその意味で、鉄の弦と木のボディでできたギターという構造物の事物性をピックアップ(マイク)と増幅器(アンプ)をとおしてたしかめるような「Somewhere 01」と、潮位が満ちるような音響でその事物性を覆い尽くそうとするかのような「Somewhere 02」の2曲入り。#music_journal〈28〉

12月6日金曜日四日前からひきつづきのおだやかな晴れ

Jim O'rourke
Steamroom65
Steamroom

2013年に逝去されたAUBEこと中嶋昭文さんのレーベルG.R.O.S.S.のため、1989年に制作するも、出来映えに満足せずオクラに入ったのではないかと作者自身がコメントをつけた未発表音源。中嶋さんには雑誌編集部に在籍時に自作解説的な企画でご執筆いただいたこともあり、なによりAUBEは現在のアンビエントの方法を、30年前にさきがけていた存在として積極的な再評価をおこなうべきだとつよく思う。#music_journal〈29〉
ここでのオルークは後半までほとんど調性を離れることなく、それがやや穏当との判断につながったのかもしれないが、鋭角的に反射するギターのアルペジオにはAUBEを彷彿するクリスタルな質感がやどるかのようで聞き応えあり。#music_journal〈29〉


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