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音楽日誌_2024年10月28日〜11月1日

10月28日月曜日雨がちのくもり

Ensemble Klang
Maya Verlaak - Vanishing Point
Ensemble Klang Records

ハイナー・ゲッベルス、デイヴィッド・ラング、トム・ジョンソンら現代作曲家とのコラボレートを積極的におしすすめるオランダはハーグのアンサンブルの最新委嘱作で、作曲を担ったのは1990年生まれのベルギーの俊英マヤ・ヴェルラーク。#music_journal〈11〉
ふたり対になってガムテープでたがいをぐるぐる巻きにしてそこから逃れる過程を演奏にみたてた「Tape Piece」が私にとってのマヤの代表作だったが、開かれた方法と演奏者たちの深い作品理解が新たな魅力をひきだしている。#music_journal〈11〉
エレクトリックギターとピアノが液晶モニタに映る円形のコード譜を指示にしたがって演奏する「Roulette」、シンバルの音が消失点(Vanishing Point)に到達するときに電子音が鳴るシステムと、みずからの打楽器演奏とで共演する表題曲。#music_journal〈11〉
アンサンブルのメンバー6人が空間内に散らばり、それぞれの聞こえもふまえて構想した楽曲が、微妙な綻びもふくめ一回性としての差異化するコンセプトの31分におよぶ「Conditions」。説明だけだと観念的だが、チェンバーロック的な風合いは想像以上にポップ。#music_journal〈11〉

10月29日火曜日くもりのち雨

Snakeskin
They Kept Our Photographs
Mais Um Discos

レバノン人プロデューサー、ファディ・タバルと、ベイルートを拠点とするロックバンド、ポストカードのヴォーカル、ジュリア・サブラによるデュオの2作目は長年録りためた楽曲で編んだ前作『Snakeskin』に較べるとよりディープかつダイナミック。#music_journal〈12〉
みずから例証するヴァージニア・アストレイ×坂本龍一、ジュリー・クルーズ×アンジェロ・バダラメンティの喩えもしっくりくる、いくぶんダークなドリームポップだが、タブラとオートチューンをかけあわせたかと思えば、アンビエント風からバンドサウンドまで——#music_journal〈12〉
細部までつくりこんだトラックと多彩なアレンジメントは中毒性が高い。イスラエルのガザ侵攻が深く影響したという歌詞は戦火が自国におよぶつつあるいま、切実さ抜きに耳を傾けることは難しいか。多彩なアイデアと厳かな佇まいが相俟った秀作。#music_journal〈12〉

10月30日水曜日雨のちくもりのち晴れ

Raphael Rogiński
Plays John Coltrane And Langston Hughes African Mystic Music
Unsound

英「The Wire」誌もとりあげるワルシャワ拠点のユダヤ系ギタリストによる2015年のアルバムに新録4曲を加えたリイシュー。コルトレーンナンバーのギター独奏に、自作曲バックのハーレム・ルネッサンスのアイコン、ラングストン・ヒューズの詩の朗読が2曲——#music_journal〈13〉
演奏はなかなかにソローハンドで響きはエソテリック。「Blue Train」のような超有名曲も一聴してそれとわからないほど解体しているが、それがまた作者の真意を穿つかのよう。新録はその発展形。掉尾を飾る「The Promise」の解釈がすばらしい。#music_journal〈13〉

10月31日木曜日くもりがちの晴れ

Gong Gong Gong 工工工 & Mong Ton
Mongkok Duel 旺​角​龍​虎​鬥
Rose Mansion Analog

北京のギター&ベースデュオ、工工工(ゴンゴンゴン)と、台湾の目隠し兄弟デュオ、モン・トンの合体ユニットは、両者の音楽性を調合し薬味を利かせたようなソフトサイケデリック。ワンテーマ土台の反復と実験で呪術性と中毒性を高める手法はクルアンビンとファウストを足して2で割った感じともいえるかも。#music_journal〈14〉

11月1日金曜日くもりのち雨

MC5
Heavy Lifting
Ear Music

2024年2月2日に逝去したウェイン・クレイマーが死の2年前にとりかかっていた録音をMC5名義でとりまとめた没後作。オークランドのSSWブラッド・ブルックスとクレイマーとの共作が大半だが、クレイマーの3月後に他界したドラムのマシンガン・トンプソンも2曲に参加しておりMC5の看板に偽りはないが、往時ほどの灰汁のつよさもない。ただしファンキー度高め。制作はアリス・クーパーからピンク・フロイドまで、ドラマチックな音づくりが得意なボブ・エズリンが、ガンズのスラッシュ、レイジのトム・モレロ、アリス・イン・チェインズのウィリアム・デュヴァール、リヴィング・カラーのヴァーノン・リード、ドン・ウォズら、多士済々を手堅くとりまとめている。ジョン・シンクレアも世を去った年のにぎやかな葬送の趣き。#music_journal〈15〉


I hope we could be good friends.