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音楽日誌_2024年11月18日〜11月22日

11月18日月曜日くもりお休みをいただいた先週のおだやかさが一転、底冷えのする寒さ

CS + KREME
The Butterfly Drinks The Tears Of The Tortoise
The Trilogy Tapes

一風かわったプロデューサーと多楽器奏者によるメルボルンのデュオで、本作は3作目。3作すべてウィル・バンクヘッドのTTTからなのは好事家にとってのお墨つき。基調はローファイな折衷感で、前作ではブリジット・セント・ジョンを呼び込んだエソテリック・フォーク路線が耳を惹いたが、本作はアシッド感すえおきで日野浩志郎とのKAKUHANを組む中川裕貴のチェロもフィーチャー──したからというわけでもなかろうが、方法論や歌唱法にアーサー・ラッセルを想起する場面も。#music_journal〈20〉

11月19日火曜日晴れきのうよりさらに気温下がる

頭士奈生樹
IV
World Of Echo

アーサー・ラッセルのアルバムタイトルを掲げた英国レーベルから、非常階段のオリジナルメンバーにしてハレルヤズや、高山謙一とのイディオット・オクロックなどで燐光のような存在感を放ってきたギタリストが、渚にての柴山伸二のオルグ・レコードから2018年にリリースしたソロの再発。#music_journal〈21〉
内観と自己問答のはてに閾値を超えた内声があふれ出たかのような音と歌。いつ途切れるともしれない夢幻的なギターソロがこの人でしかなしえないモノローグを空間に記していく。渚にてのおふたりのリズムセクションも味わい深い。サイケデリック京都楽派の扇の要。#music_journal〈21〉

11月20日水曜日雨もっと気温下がる

Sussan Deyhim & Richard Horowitz
The Invisible Road: Original Recordings, 1985-1990
Freedom To Spend

今年4月、モロッコのマラケシュで没した米国人作曲家ホロウィッツと、イラン生まれの作曲家でボーカリストのデイヒム、公私にわたるパートナーである両者の80年代後半の集成。#music_journal〈22〉
時代背景としてはちょうどホロウィッツがベルトルッチの『シェルタリング・スカイ』(1990年)のサントラに教授ともに参加したころの作品群で、アラブ〜北アフリカを淵源とするエスノポップと、ローリー・アンダーソンあたりを想起する才気走った前衛ポップのハイブリッドはきわめてユニーク──なのに伝統の裏打ちする真正性を感じさせるのがまたユニーク。#music_journal〈22〉

11月21日木曜日くもり時々雨のち雨あがる

Laurie Anderson
Amelia
Non Such

上の文中にもあるローリー・アダンソーンの最新作。題名の「Amelia」とは19世紀末の米国に生まれ、太平洋戦争開戦前の南太平洋で消息を絶った女性飛行アメリア・イアハートのこと。#music_journal〈23〉
主題となるのは彼女の最後のフライト。赤道上世界一周飛行のさなか、足どりが途絶えるという結末へ収斂する物語を、アンダーソンと、客演のアノーニがさまざまな声と言葉で立体化していく。チェコのブルノ・オーケストラとの共演だが、音を塗り込めるというよりは声を補うかのごときは、歌劇、というよりも昭和のころ胸踊らせたラジオドラマの趣き。#music_journal〈23〉

11月22日金曜日晴れあたたかい

Jean-François Pauvros, Alain Mahé
Papillon De Mer
Innacor Records

「Papillon De Mer」とは英語で「Sea Butterflies」すなわち「海の蝶」を意味し、どうやらクリオネのことらしい表題を掲げた仏オルタナティヴ界の重鎮ギタリスト、ポーヴロスの新作。連名のアラン・マエはギター、ヴォーカル、ピアノ以外の物音や管楽器などを担当。#music_journal〈24〉
かわいらしいタイトルとはウラハラに渋めの実験作で、ブルージーからフリーキーまで、ポーヴロスの多種多様な抽出の中身を検分するがごとし。ジャック・ベロカルらとのカタログや、ジャン゠ノエル・コニャールらとのトリブラク(Tribraque)など、バンド編成でことさらに存在感を発揮するひとだけに、ますます旺盛な活動を祈念してやまない。#music_journal〈24〉

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