見出し画像

アジアナンプレ選手権2023参戦記

はじめに

 2023年1月26日~30日に、韓国・済州島で第5回アジアナンプレ選手権(ASC)2023が開催されました。ナンプレとそのバリエーションを解く速さを競う大会です。個人戦、団体戦のそれぞれについて、U10, U15, Generalの部門があります。感染症の影響でオンサイトでは3年ぶりの開催でした。
 日本からはGeneralの4人(A氏、E氏、M氏、筆者)が参加しました。筆者は2018年の第2回大会以来、2度目のGeneral参加となりました。今のところ予選はないので、各国の参加人数の上限に達しない限りは誰でも参加できます。ちなみに参加費は自腹で、今回は500ドルでした。

 なぜこの記事を書いているかというと、今大会は大変印象深かったのですが、時が経つと過去の出来事を紙芝居の絵程度の粒度でしか思い出せなくなってしまうので、記憶が新しいうちに記しておこうという次第です。

 また、もう一つの目的になりますが、アジアナンプレ選手権に興味があり、大会の雰囲気を知りたいという方にとって、この記事が一助になれば幸いです。

出国~チェックイン

 筆者は首都圏在住なので、海外遠征の際には羽田空港や成田空港を使っていますが、この数年で羽田・成田発の済州国際空港への直行便が激減してしまったようです。直行便がないので、早起きして羽田ー関空ー済州のルートで行くことにしました。他の日本チームのみなさんも関空から済州に向かうというルートは同じだったらしく(というか選択肢がない)、関空発の飛行機で全員合流しました。
 行きの飛行機では難関数独5を解いていました。あとカックロ本。

 およそ2時間後…。

HELLO JEJU!

 到着。この時点でまだ昼食を取っていなかったため、韓国のコンビニ、CUでダブルハンバーグ弁当を買いました。後にそのあまりの辛さに苦しめられることになるとは、知る由もなかった…。
 韓国のキャプテン(大会を主催しているKorea Creative Puzzle Associationの偉い人)と運営スタッフが出迎えてくださり、大会が行われるJeju Halla Universityまで車で移動。所要時間十数分。移動中に、「宿泊場所の学生寮はあんまりよくないから寝に帰るだけにした方がいいよ」と言われて一抹の不安を覚える。まあでも防寒具も持ってきたし最低限の寝具さえあれば問題ないだろー。フラグです。

 大学に着くとまず会場を視察。会場は前日に見ておきたかったので、ありがたい配慮でした。

横断幕を見ると、身が引き締まりますね
競技が行われる部屋(のGeneralの島)

 明らかに席の数が少ない。自分が参加した5年前の大会ではGeneralだけで40人くらいいた気がするが、今年は12席分しかない。他の部門も似たような感じで、全部門の参加人数の合計は50人でした。
 話を聞いてみると、Generalは我々のほか、韓国3人、インド2人、中国1人、台湾1人だけとのこと。団体戦に必要な人数は4人。自国でチーム組めるの日本だけなんかい。団体戦は結局JPN-A、インド・中国・台湾のASIA-A、韓国の3人+U15の助っ人1人のKOR-Aチームの三つ巴の戦いとなりました。
 まだまだ渡航が厳しい国も多そうだし、寂しいけど仕方ないのかなあ。

 次にチェックイン。男女で建物が分かれていました。学生寮だもんね。後に、異性側の寮には出入りできないため、チームの作戦会議等を宿で行えないことが発覚するのであった。
 チームメンバーと別れて部屋へ。中国の選手と相部屋ということをさっき聞いたが、部屋にはまだ誰もいなかった。

2段ベッド×2と勉強机×2の質素な部屋

 部屋にトイレやシャワーがない。それはまあいい。
 トイレを見てみましょうね。トイレットペーパーがどこにもない。アメニティグッズを持ってきてとは言われていたが、そのレベルかー。
 シャワーは6台あるけど仕切りがない。一般的な温泉から温泉を引いた感じ。なんとなく気まずい。
 これらの情報、せめて先に知っておきたかったぜ…。
 脳の一定のリソースを生活環境に割かないとやっていけないな、と覚悟したのであった。

 夜に大会会場でregistration。名簿にチェックするだけの簡単な手続き。後に参加賞も受け取った。夕飯はどうするんだろうと思った矢先、唐突に宅配ピザが出てきた。そういえば何ヶ月か前に貰ったポスターに初日の夕飯はfast foodって書いてあったな。

ピザパーティー開幕。

ピザパーティーの様子

 チームメンバーで「もし日本でASCを開くならどこを会場にするか」など話しながらピザをもぐもぐしていた。開ける日が来るといいですね。
 個人的には、ここで同部屋の中国の選手と初めて会って話せたのでよかった。

 夜は散策&日用品の買い出し。大会会場の周りは、学生の街ということもありそこそこ栄えていた。

※合法的なしゃぶしゃぶのお店です
大きいトルハルバン

競技1日目:個人戦

 朝食。電圧が足りず全然焼けていない食パンと、それとは対照的なアツアツのオムレツを食べて出陣。
 大会会場に入ると指定された席に案内された。

U10の島に通される筆者

 Generalの席が空いているにもかかわらず、何故かU10の島に。不備ではないらしい。隣のU10の子が1人になっちゃうからかな。キャプテンが隣の子に「このお姉さんが隣に座るから仲良くしてね」っぽいことを韓国語で言っていた。
 しばし、周囲の子供たちとお菓子の交換を楽しみました。時にお菓子は言葉よりも雄弁である。

 競技開始!

一番右の島がGeneralです

 午前の3ラウンドはClassic以外はあんまり点を取れなかった。難易度が高かったという話もある。難問耐性がないなあ。

 昼食。肉が出てきた。韓国料理っぽくないのは韓国の参加者が多くて食べ飽きているからか。でも美味しかったです。

 昼休み。この日に限らず、宿が快適ではないので朝から晩まで大会会場で過ごすことになる。チームメンバーのA氏はお昼寝に最適なソファを見つけたようです。

 午後の3ラウンドはまあまあ立て直して終了。Samuraiラウンドでもう一盤面解きたかった…。

 夕食。肉が出てきた。ここで運営からお知らせがあり、採点を運営スタッフと1対1で1ラウンドずつ行うことになったので、夕飯後も大会会場にいることに。さながら面接である。

 採点待ちの時間があまりにも暇なのと、アジアナンプレ選手権に興味がある人とお話ができたらいいなということで、Twitterのスペースを2時間くらい開いていた。来てくださった方、ありがとうございました。

 採点は22:30頃に終了。運営スタッフさん、遅くまでお疲れさまでした。

いつの間にか雪が降っていたらしい

競技2日目:団体戦

 積雪の朝。修羅の宿も3日目となると慣れてきて、また、何故かこの日になってトイレの個室にトイレットペーパーが出現していたので、相対的にQOLが高くなった。

寒そうなトルハルバン

 団体戦。以下の3ラウンドでした。
 ・2分ずつ問題を解いて次のメンバーにパスするラウンド
 ・連動している8盤面を解くラウンド
 ・ルールを類推しながら解くラウンド

 2ラウンド目はフィニッシュした。大健闘。
 各ラウンド終了後にライバルのアジアチームがこちらの様子を聞きにきた。1, 3が互角で2は向こうがフィニッシュしていなかったので、団体戦は勝ったなーと確信。フラグです。

ジグソーパズルイベント

 ここからはナンプレ選手権本編とは全く関係のないイベント。
 同じ日の午後。団体戦を戦ったメンバーで300ピースのジグソーパズルを組み立てようという企画です。題材はグスタフ・クリムトの「接吻」。制限時間は2時間。最も早くパズルを完成させたチームに100ドルが与えられるという、パズル大会では珍しい賞金付きイベントでした。

背景の領域が難しそう

 他のチームのジグソーパズル力が未知数だったので周りの様子を気にしながら取り組んでいたが、時折聞こえる実況によると日本チームがダントツらしい。ところが…。
 ピースが見つからない…だと…?

ピースが3つ欠けている

 ピースが3つ見つからない。
 机の下や各々のバッグの中を確認しましたが見つかりませんでした(帰国後も見つかっていません)。
 その間、自分のチームのピースを寄付してくれる子供たちや一緒にピースを探してくれる子供たちが現れ、「あったけぇ…」という気持ちになった。
 結局、運営の恩情で優勝扱いにしてもらいました。感謝です。あまりにも熱い友情を目の当たりにしたので100ドルを返上しようかとも思ったけれど、言い方を考えているうちに表彰式が行われ、賞金を獲得してしまった。

観光

 オンサイト大会の醍醐味であるところの観光。5年前は騎馬ショーを見てショッピングモールに行った記憶がある。
 今年はまず済州民俗村博物館を見学しました。見どころが多すぎて昼食の時間に遅れてしまった。すみません。そして、ここに来て初めての韓国料理っぽい昼食に大歓喜した。

博物館入口
伝統的な家屋
豊穣の神に祈りを捧げていると思われる人
茅葺屋根のセブンイレブン
館内で飼われているうさぎさん

 退館後、バス車内での子供たちのカラオケ大会を経て…。

多分童謡

 サービスエリアに寄ったりもして…。

真ん中から開きそうなみかんカー
ゴーカート施設の説明

 突如始まるゴーカートラウンドのインストラクション映像。
 観光の日にゴーカート体験をすることは事前に知らされていたが、その詳細がここで明かされる。舞台は9.81PARK
 イメージは滑り台で、標高の比較的高い場所からブレーキとハンドルだけで下のゴールを目指し、スタートからゴールまでのタイムを競うというもの。各レーンでは1台の車しか出走しないため、衝突の心配はほぼない。ゴールに着いたら、車が自動操縦モードに切り替わり、スタート地点に戻っていく。車にはカメラが付いていて、走行中のドライバーの様子を撮影して後で動画を送ってくれる。想像以上にハイテクである。1つの車に2人が乗るペア戦。チャンスは2回。両手のうち片手でもハンドルから離れたら失格。
 以上の説明を受けつつ、施設へと向かった。

ゴーカート施設に鎮座しているトロフィー達

 さては、ここでナンプレ選手権の表彰式を行う予定だな?

 ゴーカートラウンド開始。

ゴーカート乗り場

 結構待ち時間が長く、ペアのU10の子とじゃんけんや写真撮影をしながら過ごした。
 1走終了時点でトップに立ったのはチームメンバーのM氏ペア。Sudokuのみならずゴーカートの冠までも手に入れようというのか…!
 自分は1走目でブレーキを踏んで11位だったので、2走目こそはノーブレーキで優勝タイムを出してやるぞと覚悟を決めて疾走。あとで車載カメラの映像を見た。顔に出すぎ。
 2走目で全体の最速タイムを出せたらしいので満足。それはそれとして、結局何らかの別基準によってM氏ペアが優勝した。おめでとうございます。

表彰式

 予想通り、ゴーカート施設で表彰式が行われた。
 団体→個人、U08→U10→U12→U15→O50→Generalの順番で発表されるので緊張している時間が長い。
 ついに団体戦の表彰。優勝を確信していたけれど2位でした。インストラクションには書いていなかったが、どうやら個人戦と団体戦の合計スコアだったらしい。それなら仕方ないね。
 続いて個人戦の表彰。個人的には3位入賞が狙えるかどうかというところだったが、銅メダルは同部屋の選手が獲得。自分は5位でした。また、個人優勝は下馬評通りM氏でした。E氏もO50の部で準優勝。入賞されたみなさんおめでとうございます!
 その後運営スタッフに成績表を一瞬見せてもらった。Samurai一盤面分ともう一問だったな…。歴史にたらればはないんだよ。
 表彰式後はバスで大会会場に帰還。実質最終日なので、済州島出身の子供たちはそのまま帰ったらしい。

 部屋に帰り、表彰式でいただいたものをパシャリ。
 こうしてASC2023は幕を閉じた。

自身の初トロフィー&初メダルはASC2023の団体準優勝になりました

チェックアウト~帰国

 最終日、爽やかな朝です。

7:30@寮の前

 やることはもう何もなくて、あとは空港に行くだけ…と思っていた。
 朝に中国・台湾組が出発するのを見送って暫くぼーっとしていたところ、運営スタッフから「12時に寮の前に集合してください。フライトまで時間があるので海に行きましょう」との連絡が。例によって唐突すぎる。 

 キャプテン+運営スタッフ2人+日本チーム4人のぶらり旅。我々はまず観光スポットの竜頭岩に向かった。出発当初、カーナビの目的地がレストラン「竜頭岩」になっていたらしい。なんなら昼食をまだ食べていなかったのでそれでもよかった。

竜頭岩
E氏「これはどんなパズルですか?」
キャプテン「その謎が解けたとき、扉が開かれるであろう」
運営スタッフ「扉は日本につながっています」
海も空もきれい

 竜頭岩のあたりは岩がゴロゴロしているので(それはそう)、より海っぽい砂浜に行くことに。再度車で移動。しばし散策を楽しんだ。

東屋越しに見える海が良い
そういや大会でAntiknight出題されたなあ
赤い馬の足元から見える漢拏山。今度来たら登りたい

 このあたりでタイムアップ。キャプテンが買ってきてくださった栄養ドリンクで乾杯した後に空港に向かった。
 空港入口でキャプテンとお別れ。大変お世話になりました。車に乗っていた運営スタッフ2人も飛行機で帰るらしく、一緒に空港入りした。運営スタッフを労うための海でもあったのね。粋なことをするじゃねえか…。

 済州国際空港、国際便がなさすぎて食事処が大体閉まっていた。小さいサンドイッチ屋さんが1店だけ開いていて命拾いした。
 A氏「結局韓国料理あんまり食べなかったなあ」
 M氏「俺、明日の昼ごはん韓国料理にします」
 飛行機に乗り、座って目を閉じて開けたら着陸間際でした。疲れすぎ。

 関空からの帰り方がバラバラだったので、日本チームは関空で解散。
 自分は行きと同じく、関空から飛行機で東京に戻ってきたのでした。
 お疲れさまでした。

関空のフードコートで食べた帰国メシ

おわりに

 今大会は参加者や運営が少なく、小規模ゆえの運営との距離の近さや参加者間の交流の多さが特徴的だったと思います。筆者は偶然にも海外の選手と同部屋になり刺激を受けました。宿はせめて競技に集中できる程度の快適さであってほしかったが…。何にせよ、少人数で大会を運営してくださったキャプテン率いる運営スタッフのみなさんに感謝です。いややっぱりそれを差し引いても宿はもう少し何とかなっただろうと思う。

 また、今回自分は選手と引率スタッフを兼任しており、「競技大会の競技じゃない部分」に触れることが多くて大変勉強になりました。引率スタッフのみなさんはいつも選手が競技に集中できる環境を作ってくださっているんだなということがわかり、感謝の念がより大きくなりました。
 正直なところ選手を100%やりつつ引率スタッフを100%やるのは自分の頭のリソース的に難しいと感じましたが、また機会があればうまく折り合いをつけてやっていきたいなと思います。

 最後に、来年もアジアナンプレ選手権がアジアのどこかで開催されると思うので、もし面白そうと思った方は行ってみましょう!

いいなと思ったら応援しよう!