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成功する経営戦略 5つのポイント
ある程度大きな山に登る際には、登山計画書を作成しなければなりません。計画も準備もなしで登山すると遭難するリスクが高まりますし、救助する側もどこに行けばいいのかすぐにわかりません。単に「山に登りたい」という思いだけでは登山はできないのです。
会社経営でも社長や担当者の思いや勘だけで事業を進めると、道に迷いあえなく「遭難=失敗」という結果に陥ってしまいます。
今回は、会社経営で遭難しないための計画である「経営戦略」を立てる際のポイントについて解説いたします。
経営理念と経営戦略の関係
経営戦略の具体的な説明に入る前に、会社の経営理念(ミッション、ビジョン、ウェイ、社是、社訓など)と経営戦略の関係からみていきます。
経営理念とは、「そもそも、その会社は何のために存在し、何をやりたいのか」を言葉にしたものです。細かく言うと、会社の使命や存在価値はミッション、会社が実現したいことはビジョンと定義することができます。
具体的な例があった方がわかりやすいので、たとえばKDDI株式会社は経営理念を以下のように掲げています(同社のHPより引用)。
「KDDIグループは、全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、お客さまの期待を超える感動をお届けすることにより、豊かなコミュニケーション社会の発展に貢献します。」
同社のミッションは「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、お客さまの期待を超える感動をお届けすること」、そしてビジョンは「豊かなコミュニケーション社会の発展」と読むことができます。
ミッションやビジョンについては、別の稿で詳しく説明いたしますので、今回は概要に留めておきます。
さて、経営理念と経営戦略の関係ですが、経営戦略は「経営理念を実現するための計画や運用方法」という位置付けになります。
たとえば、登山の例では、「富士山に登りたい」という思いが経営理念とすると、そのための準備や登山計画書作りが経営戦略に当たります。
KDDI株式会社の例では、上記の経営理念を達成するために中期経営計画を策定し、現行計画においては7つの戦略を打ち出しています(①5G時代に向けたイノベーションの創出、②通信とライフデザインの融合、③グローバル事業のさらなる拡大、④ビッグデータの活用、⑤金融事業の拡大、⑥グループとしての成長、⑦サステナビリティ。同社HPより引用)。
1.経営理念と整合させる
それでは、具体的なポイントの説明に入ります。まず1つ目は、その経営戦略は「会社のミッションやビジョンと整合しているか」ということです。経営戦略は、上記の通りミッションやビジョンという「会社がやりたいこと」を実現するための計画書として位置付けられるものなので、ミッションやビジョンと整合していなければ会社は方向性を失ってしまいます。
2.事業環境の調査・分析
2つ目は、会社や事業を取り巻く様々な環境を調査・分析することです。
孫子の兵法として有名な「彼を知り己を知れば百戦殆(あやう)からず」は、企業経営においても欠かすことはできません。
環境には外部環境と内部環境の2つがあります。
外部環境とは、たとえば広くは世界経済・日本経済・業界全体の動向から、自社の属する商圏・ターゲットとする顧客やライバルの動向、あるいはITやネットの新技術など、政治・経済・社会・テクノロジーなどの自社を取り巻く全ての環境のことです。孫子の「彼を知り」に当たります。
内部環境とは、自社の経営資源(ヒト、モノ、カネ、技術力など)のことです。自社の強み・弱みなどの特性を理解することは、孫子の「己を知れば」に通じます。
3.顧客はどこの誰か=参入する事業領域
3つ目は、ポイント②で行った事業環境の調査・分析を元に、自社が参入する事業領域を検討し決定することです。
事業とは、顧客がいて、かつ多数のライバルがいる中でわざわざ自社の商品・サービスを購入してもらってはじめて成立します。
そこで、広い市場の中のどの場所で、誰に向かって事業を展開していくかを見極めることは極めて重要です。俗に言う、魚のいないところに釣り糸を垂らしても、魚は釣れません。
たとえば、飲食店経営の場合は、料理の種類、価格帯、商圏、立地、客層、ライバル店などの様々な切り口によって、市場を細かく分類できます(これをセグメンテーションと言います)。その中で、最も自社が有利に展開できそうな市場を選択する(これをターゲティングと言います)ことになります。
最近のコロナ禍のように事業環境が大きく変化した場合は、この事業領域の選択をやり直す必要も出てきます。
4.顧客は何にお金を支払うのか=顧客提供価値
4つ目は、これだけ多くの商品・サービスが市場に溢れている中で、なぜあなたの会社から購入したのかを考えることです。つまり、顧客はあなたの商品・サービスのどんなところに「お金を払う価値がある」と評価したのでしょうか。ライバル企業の商品・サービスと比べて、どんな差別化要因があったのでしょうか。
この「顧客提供価値」があれば、事業領域においてライバルと有利な戦いができる自社の「立ち位置=ポジショニング」が固まります。
但し、ポジショニングは一旦確立したとしてもずっと維持できるものではなく、事業環境が変化すれば自社の優位性もあっという間に崩れます。史上有名な事例は、写真フィルム市場におけるコダック社と富士フイルムの明暗です。顧客はデジタルカメラの普及により写真フィルムに価値を感じなくなり(=お金を支払うことがなくなり)、写真フィルム以外の価値を生み出せなかったコダック社は破綻し、写真フィルム以外の価値を生み出すことができた富士フイルムは生き残ったのです。
またコロナ禍の話になりますが、三密回避などの「Withコロナ時代の新しい生活様式」が定着すると、コダック社のように顧客提供価値があると思っていた商品・サービスが突然蒸発するリスクがあります。
事業を持続的に行うためには、自社の顧客提供価値が市場や顧客のニーズとずれていないかを常にウォッチしておく必要があります。
5.価値を生み出す持続的な仕組み
5つ目は、ポイント④で説明した顧客提供価値を持続的に生み出していける仕組みを、自社内、そして関係取引先との間で構築することです。
具体的には自社の経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報、技術力など)を有効活用し、仕入れ先や販売先など関係する取引先を巻き込んで、自社の商品・サービスを確実に顧客の元に届ける仕組みを作ることです。
コロナ禍の影響により、ポイント③(事業領域)やポイント④(顧客提供価値)を見直す必要が生じた場合には、この「価値を生み出す持続的な仕組み」も当然見直しが必要になってきます。
一般社団法人日本パートナーCFO協会 編集部
この記事を書いたのは、
森本哲哉さん(協会認定パートナーCFO/中小企業診断士)
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